このタイトルを見て「あれ、
ベン・ロモンドの間違いじゃ?」と思った方、わりと普通の反応です
でも、こういう素晴らしい山もあるのよね、リマーカブルズ連峰(The Remarkables)のすぐ近くに…… ベン・クレーシャン山(Ben Cruachan, 1895m)へのトラックはDoC発行の日帰りウォークのパンフレットには載っていないが、地形図(Queenstown and Cromwell Terralink 1:50,000)にはしっかり刻まれている。
(↑この一文を読んで、頭の中がはてなマークだらけになった方、ここはかなりローカルな山の話をブログなので、悪しからずご容赦のほどを
一応、どなたにも楽しんでいただけるよう、それなりに配慮はしてるつもりですが。)
持病の
メニエール病が活動期に入り、耳の平衡機能がまともに働かなかなくなってしまったねむりねこ
には、オフ・トラック・トランピング(off track tramping, 登山道がついてない山でのトレッキング)はムリ。かといって、クイーンズタウン・ヒル(Queenstown Hill)など、日帰りウォークのパンフレットに載っているトラックは、とうの昔に歩きつくしていて、今更わざわざ行く気になれないし、
「ああ、どこかよさげなところないかなぁ」
と地形図を眺めてたら、
「おおっ、これだぁっ!!」
と見つけたのがこの
だった。
クイーンズタウンからギブストン・バレー(Gibbston Valley)方面に車で走り、コール・ピット・ロード(Coal Pit Road)を入り、さらにその先の4WD道路を登りきったところにある、コール・ピット峠(Coal Pit Saddle)が始点。
峠からは、単に古い牧場道をたどって、稜線伝いにベン・クレーシャンの頂上まで歩いて行くだけ。藪こぎもルートファインディングもないなので、技術的には難しくない。距離にして往復20km程度、標高差も800m程度と緩やかなので体力的にも全くOK。
この手合いなら、軽いめまいの発作に襲われたとしても、まぁ何とかなるかな…… というか、多少のことを押してでも行きたい気持ちが強いのだ
万一、途中で具合が悪くなったら引き返しゃあいい、家の中でウジウジしてるよりよっぽどましだ。きれいな山の景色を見たら、いい気分転換になって、病気も楽になるかもしれないしね。
でもさすがに一人で行くのはちょっと心配だったので、非番の日が重なった猫かぶりに話したら、
「それ、いいね。俺も実は狙ってたんだ」
と大いに乗り気
愛車のRAV4を駆っていそいそと出発。峠へ登る4WD道路は所々浸食がひどく、4WD車としては車高が高くないRAV4で、うまく乗り越えられるか少し心配……
安全のため、峠の手前1kmあたりに車を置いて歩き始めた。ここでもう標高1000m近く、すでになかなかの眺めじゃないの。
あたりは、歴史保護地区(Historic Reserve)に指定されており、かつては炭鉱があったところ。去りし日を偲ばせる器具を見つけた。
緩やかなアップダウンがある、眺めの良い稜線歩きはとても気持ち良い。ああ、思い切って来て良かったなぁ(←今のところは)
これが目的地のベン・クレーシャン。山というより大きな丘といった感じ。
途中にカッコイイ岩があった。このあたりから、風が結構強くなる。風速50km/h近くあるだろうか。
頂上に到達。これまで登った山に比べて、頂上部分が広く開けている。
風の来ないところを選んで腰を下ろし、まずは昼食。そして風景写真をパチリ。まずは、リマーカブルズ連峰の最高峰シングルコーン(2307m)とダブルコーン(2319m)。いつもは遠く見上げている岳々をこんなアップで見られるなんて、ちょっと感激。
赤ワインのピノ・ノワール種のふるさと、ギブストン・バレー。ここのピノはたいへんに高品質。国際ワインコンテストでも上位入賞してて、高いけどとても美味しい(写真をクリックすると拡大)。連なる山々の向こう、ワナカ湖(Lake Wanaka)も写真に入れたハズなんだけど、うまく映らなかった。
クイーンズタウンからカードローナ谷(Cardrona Valley)経由でワナカへ抜ける道路、クラウン・レンジ道路(Crown Range Road)が通る、クラウン台地(Crown Terrace)。普段は車で通るだけなので、上から眺めたのは初めてのこと。
ヘイズ湖(Lake Hayes)のあるあたりの盆地。
遠くにグレノーキー最高峰のアーンズロー山(Mt Earnslaw)と
国立公園の名前にもなってるアスパイアリング山(Mt Aspiring)が見えた。
また、フィヨルドランド最高峰のトゥトコ山(Mt Tutoko)も見えたんだけど、写真撮影に失敗…… ちと悔いが残る。
来た道を戻り、帰りがけに本道から外れたところにある稜線の最高峰2008m峰に登ってみたくなった。
「でもさ、この峰へはトラックがなくて、ガレ場や岩場を歩かなくちゃいけないよ。目まいがするのに大丈夫?」
心配する猫かぶり。確かに理屈だけど、すぐそこに見えている山に登らない手はないよね。自分の病気のことはすっかり棚に上げて、
「そんなに長い距離じゃないし、傾斜も大したことないから、登ってみたい」
と強気の発言の
だったが、ガレ場を少し歩いただけで後悔した。
つい最近、
1548峰や
ホームヒルを歩いた時と比べると、全く信じられないほど足元が不安定で、何度か転びそうになる。ところどころ、猫かぶりに支えてもらう羽目になったけど、あきらめなかった。頂上に近づくにつれ、足場が悪く、風がかなり強くなった。この時点で、かなりフラフラになっていた
は、登頂をあきらめ頂上すぐ下の岩場で休憩することにした。
2008m峰の頂上に立った猫かぶり曰く、標高はこちらの峰の方が高いけど、間近にさらに高い峰々が迫っていいるので、眺めはベン・クレーシャン山の方がずっと良かったとのこと。頂点に立てなかった悔しさが和らいだ。
それから、元のトラックに戻ったのだけど、平衡機能がまともに働かない体では、緩やかなガレ場の斜面を下りるのがかなりの難業だった。ある程度、予測してたこととは言え、いやぁ、まいった、まいった。
「
は、世界一頑張り屋のメニエール病患者だね」
とは、猫かぶりの弁。頑張り屋かどうかはちょいと怪しいけど、好奇心と負けん気は人一倍強いかもね……
あとは稜線をなだらかに下るだけだから、超楽勝、と思いきや……
たぶん、地形的なものだと思うけど、風が来た時より格段に強くなってる。谷からごうごうと吹き上げる風が、体感で時速70~80kmぐらいだろうか。場所によっては、おそらく時速120~130kmもの突風が吹きすさび、渡渉する時みたいに、二人で支え合いながら歩かないことには吹っ飛ばされそうになった。これは全くの予想外。そんな訳で、帰り道は写真撮影をするどころの騒ぎじゃなかった。
何はともあれ、無事に駐車場まで帰りついてひと安心。色んな意味で、山あり谷ありの、充実した日帰りウォークだった