3月の前半まで残暑が続いたクイーンズダウンだった。
残暑と言っても、拷問のような酷暑が続くのではない。秋の訪れを告げる朝晩の冷え込みがなく、真夏の爽やかな暑さが心地よく続く、とってもとっても素敵な毎日だったのだ。元来、降水量が少ない土地柄なんだけど、2月の初めから6週間もの間に一滴の雨も降らなかったのは珍しく、この時期にクイーンズタウンを訪れた観光客は、来る日も明くる日も雲一つない晴天
に恵まれとてもラッキーだった。
そんな時は外遊びが最高に楽しい。紫外線が日本よりも5倍から7倍も強いので、日焼けには注意しなくてはならないのだけど、ニュージーランドでは日本のように極端に反応する人々はごくごく少数派。トレッキングでも、日に焼けるからと真夏の暑い盛りに長袖・長ズボンスタイルで歩くのは、日本からのハイカーぐらいのもの。日焼け止めをたっぷり塗って、半袖・短パンで外遊びを快適に楽しむ、というのがニュージーランド流で、ねむりねこ
も、陽射しと風を全身に感じられるこのスタイルがだーい好きだ。
植物はお日さま
からエネルギーをもらって生きているように、人間だって肌に日を浴びないと免疫力が低下してしまう。ホワイトニングブームだとか巷ではいうけど、真夏に白い肌ってどう考えても不自然な感じが…… わざわざ真っ黒に焼くこともないと思うけど、要はその季節に合った自然な姿がいちばん美しいと思う。
暑い時は水遊びが楽しい。それも大自然の中でできたらこの上ない……というワケで、ジャブジャブと川の中を歩きながら鉱山の歴史を巡るウォークを、2月下旬のある日に楽しんで来た。
場所はクイーンズタウンの郊外、
スキッパーズ。ゴールドラッシュ時代には、最大で1000人以上の鉱夫とその家族が暮らしていたが、現在は当時の面影を残す廃墟や史跡が寂しく残るのみである。スキッパーズのタウンシップ(もちろんゴーストタウンだけど)へは、スキッパーズ峡谷を車で抜けなくてはならないのだが、道路は舗装されておらず、道幅が狭くてカーブが多く、道の反対側は崖っぷち、という悪条件なのでレンタカーは保険の対象外地域である。スキッパーズ・ロードの詳細は
この動画を。
タウンシップには、復元された小学校、農家、そして墓地があり、ここから
複数のウォーキング・トラックが出発する。
この日に訪れたのは、ダイナモ小屋へと通じる片道3時間程度の「
ダイナモ・ハット・トラック(Dynamo Hut Track)」。歩き始めると、すぐにかつてホテルだった建物の廃墟がある。
20分も歩くと徒渉。ジャブジャブと音を立てて足首ぐらいの深さの川を歩くのは、童心に帰れてとっても楽しい
このトラックの約半分は川の中を歩くので、暑い日には超気持ちいいのだ。
少し歩くと小さな小屋があって、
内部には、金鉱の掘削機に使う電力を供給していた発電機の遺跡が安置されていた。
透き通った水の中を歩く、歩く
澄み切っていて美しい水なのだが、上流にある支流の一つのマードック川(Murcdock Creek) から今も鉱毒が滲み出ているので、本流の冷たい水を手にすくってゴクゴクっとできないのが残念。
行く手に、水力発電に使われていたダムが見えて来た。
近づいてみるとこんな感じ。まだしっかりと構造を保っている。
途中はずっとこんな感じで、山や丘に囲まれた渓谷をの~んびりと歩く
頭上には真っ青な夏空が広がり、すっごくいい気分
本道からダイナモ・ハット・トラックへと別れる分岐点の標識が見えて来た。
分岐路からは谷が少し狭くなり、丈の高い茂みや少しだけど木々の姿も現れてきた。
ダイナモ・ハットへは緩やかな傾斜の丘を登って行く。
行く手にハットの姿が。終点は近い。
終点のハットに到着
ふうっ、暑かったけど楽しかった~
こじんまりとした小屋の内部は、きちんと整頓されており、古いながらも居心地が良く、典型的な"Good Old Kiwi Hut (昔ながらのニュージーランドの山小屋) "という感じだ。それもそのはず、小屋に備え付けてあるビジター・ブックを見ると、訪問・滞在者の大多数はハット・エチケット(hut etiquette, 山小屋でのマナー)を心得た、地元の人かニュージーランドに住む山好き達ばかりだった。
小屋の裏には「ニュージーランドで初めて建造された水力発電」の遺跡が残っていた。この「初めて」というのがややクセもので、
たちはこれ以外にもニュージーランド初の発電所というのをいくつか見て来ている……
人間の欲とは計り知れないもので、ヘリコプターも大型トラックもなかった時代に、よくこれだけ大掛かりなものをこんな山奥に造ったものだと思う。よその金鉱である程度お金を貯めて、ここで一攫千金を夢見た金鉱夫たちが資金と労力を提供し合ったのだろう。で、元はどれだけ取れたのかしら…… 錆びにまみれて朽ちかけた重器具を前に、当時への思いを巡らせる
だった。
来た道をブラブラ戻りながら、周囲の植物にも目をやってみる。
途中にはルピナスの群生地があった。もう花盛りはとうに過ぎていて、所どころ花が残っているだけだったけど、満開の時にはどんなにか美しいことだろう…… 次は花のきれいな初夏に訪れてみたいんだけど、これだけ徒渉だらけの場所は、天候が安定して気温が高い時期でないとちょっと厳しい。初夏は天気が変わりやすく、肌寒いことが少なくないので、実現するにはタイミングがポイントになりそう。
フワ~ッと爽やかな香りが一面に漂っていたので、よく見るとなんとミントの大群生地
もちろん、この国の固有種ではないので、この辺に住んでいた鉱夫が植えたのだろう。山奥にいきなり現れた香り高いハーブ。この荒涼とした場所に確かに人が暮らしていたのね。
感慨深い気持ちにちょっぴり浸りながらの帰り道。日も段々と西に傾き、さっきまでは心地よかった足下の清流が、少し冷たく感じられるようになった。
歩き終えて車に戻ると、夏の陽射しをたっぷり浴びて、水遊びと山遊びをした後の心地よい疲労感が体を覆っていた。こんな楽しいことが手軽に出来ちゃう
から、15年住んでてもクイーンズタウンでの暮らしは変わることなくサイコーなのだ