ガレヌス(Galen)の体液論は有名であり、今更記述する必要も無いかも知れない。四種類の体液がそれぞれ特異的な感情と結びついており、体内での各種の体液の動態が、結果として人間行動を決定すると言う理論である。換言すれば、古典的な内分泌心理学と言う事になる。これは精神医学・心理学等の教科書では、精神医学史・心理学史の片隅に葬られた理論として片付けられている。しかし現代日本でもガレヌスと同じ思考パターン . . . 本文を読む
「男はつらいよの寅さん」「釣りバカ日誌の浜ちゃん」、植木等の無責任男など、日本では長らく「ダメ男」が愛され続けてきた。彼らが愛され続けてきた昭和と言う時代にあって「高度経済成長」やら「省エネルギー」という効率重視の社会に見えるが、実は昭和の人間は同時にダメ男たちも飼いならす余裕があったのだ。後世の歴史家に書かれてしまう前に、本ブログに書いておこう。
“寅さん”の愛称で親しまれる映画「男はつらいよ . . . 本文を読む
引きこもりの子供を治したのが「便利屋」と聞くと本当か?と疑ってしまうのが世の常では無かろうか。カウンセリングや臨床心理学のコースを履修していた訳でも精神科医でもない・・・正真正銘の便利屋のおじさんが完治させたと言う引きこもり。一体彼にはどんな技があったのだろうか?
「便利屋」こと左近氏は、もともとは新宿辺りをウロツキ、喧嘩を売るやくざまがいの青少年時代を過ごしたと言う。ところが凄んでも怯まない宣 . . . 本文を読む
祖父が亡くなって執り行なわれた田舎の葬式では、白飯と漬物と甘く醤油辛い濃い味付けの煮物が出てきた。これらは悲しみで喉を詰まらせながらでも食べられる柔らかさと、田舎にしては比較的やさしい味付けだった。そして一緒に出てきたのが謎の汁物だったが、これが精神生理学で言う「ジェームス=ランゲ説」を反映しているとは知る由も無かった。
じつは「胡椒がいっぱいの胡椒辛い汁物」が出てきたのだ。従兄弟が早速、割烹着 . . . 本文を読む
歴史学は何をする学問かしばらく不思議だった。過去の事実を積み重ねるだけならば、なぜ学問的アプローチが必要なのか。それならばアーカイブの構築に専念するほうが余程の貢献になるはずだ、こう思ってさえいた。しかしある時ある本の記述によってこの積年の疑問が氷解した。そしてそれは実感となって蘇って来たのはつい最近の事だ。
歴史学とは歴史的事実を探求する学問との事である。ある事象が、それが社会現象であれ、科学 . . . 本文を読む
巷のTVで精神世界の話題が流行っている。細木何某先生と江原何某先生はその筆頭である。一方は陽明学を主体とした占い師であるし、もう一方は神道の流れを汲んだ霊能者である。前者は、著名な陽明学者で日本の歴代首相のご意見番であった安岡正篤師に師事していたらしい。断定的で歯切れの良いものの言い方と、社会常識を徹底して喝破するのが売りのようである。占いによって諸問題の根源と解決法を提示していく。後者は、物腰柔 . . . 本文を読む
余り訳さない方が面白いと思うのが、この精神科医に関するジョークである。フリーダイアルなどを利用して電話をすると出てくる自動応答メッセージの精神科版だと思えば判るでしょうか。症状にあわせて押すボタン、押す回数や、はたまた押さないでと言うものまで、自動応答による対応はじつに多種多様なのです。
"Psychiatrist Phone"
Hello. Welcome to the Psychiatri . . . 本文を読む
「神経症は君だけじゃない!」と言うある意味では"皮肉な"広告がある。そりゃそうだろう。"神経症は僕や私だけじゃないんだ!"と言う気付きのある方々ならば、最初から"神経症"になど成りはしない。"俺だけが・私だけが"と言う想いの強い人間が、その想いをさらに間違って自己増殖させていけば、簡単に"神経症"になれるだろう。だからある意味では皮肉なのだ。当たり前のことを書いているからである。好意的に受け取れば . . . 本文を読む
アメリカに居る気持ちでこの記事を書いてみたい。有名人の言動が一般市民の医療観に影響を及ぼす事がある。特に相手がハリウッド有名人ならなおさらだ。日本的にはイケメン俳優とでも言うのだろうか、トム・クルーズはRitalinを始めとする薬物に否定的であるどころか、生物学的精神医学全般に対して一種の嫌悪感と偏見すら持っているようである。少しトム・クルーズの「MY脳Ritalin・レポート」(マイノリティー・ . . . 本文を読む
精神科医の中井久夫先生の本にあった話だったと思う。精神障害の患者を目の前にして、相手の振る舞い・感じ方に察しがついたとしても、それに対して断定的な表現をしては成らない・・・とあったように思う。例えば(相手はこう思っているに違いない。)などと、相手の心情に対して医師が確信を持って予想がつく場合でも、「あなたはこう思っているに違いない。」などと言わない事が肝要だというのである。医師の予想が当っていた場 . . . 本文を読む
精神医学の授業で脳波学を講ずる。基礎及び臨床脳波という事で、脳波の生理学的基礎と脳波計測時の留意点などを述べた。一通り教えた直後に、台風警報で学校は緊急閉校に。学生は皆下校と相成った。帰り際、街中を通る際に気になった看板があった。「印相・手相観ます。」ここで考え事を始めた。印相も手相も一種のパターン認識である。特定のパターンに特定の人格やら人生の傾向とがもしも対応しているのだとすれば、印相やら人相 . . . 本文を読む
僕はいま精神医学総論を学生に教えている。総論というのは、膨大な知識も要するために教えるのが難しいがしかしとても面白い領域で、個人的にはあらゆる学問において一番好きな部分だ。各論で実用的な事柄を学習するのは勿論好きだが、それよりも俯瞰図を見てから細部を攻略するというのが性に合っている。内容は以下の通りである。世界でここだけでしか教えない精神医学総論だ。僕が学生だったら聴きたいような内容を敢えてピック . . . 本文を読む
心の病とは厄介なものだ。羅患する本人がもがき苦しむという厄介さもあるだろうし、それに職業上付き合わざるを得ない精神科医の持つ厄介さもある。また周囲でそれをサポートする人間も別の厄介さを抱え込んでいることと思う。厄介さと称したが、それは良い悪いと言って簡単に片付けられる問題でもない。そこから学ぶこともあるだろうし、遠ざけたいという想いもある。現実とは常にこの両者が相互に包含関係を成していると思う。さ . . . 本文を読む