オショロコマの森ブログ5

渓流の宝石オショロコマを軸に北海道の渓流魚たちと自然を美麗画像で紹介します、

北海道のカワマス(ブルックトラウト)の現状と今後の課題 その1

2012-11-15 00:41:46 | カワマス
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北海道のブラウントラウトについては実に多くの記事をみかけるが、北海道の河川に自然繁殖しているカワマス(ブルックトラウト、パーレットマス)Salvelinus fontinalis に関する記述はほとんどみかけない。その理由は極めて個体数が少なく情報がないからだ。空知川のある支流、および道東のある特定の自然環境がみられるごく限られた水域にしか棲息しない。最近では減少の一途で、いまやイトウよりもはるかに幻の魚と言って良いだろう。ただ北海道のカワマスの現状についてはほとんど把握されていないと思われる。 本種の20cm前後の個体はあまりに美しく、正に渓流の宝石と賞賛される。道東の美しい渓流でこの美麗なトラウトに初めて会ったときは感激のあまり、声もなかった。1902年、当時のイギリス人貿易商の大富豪トーマス・グラバーが中心になりアメリカ東部原産のものがコロラド州から奥日光の湯川などに移植され、やがて自然繁殖するようになり現在にいたった。移植はそう簡単ではなかったようでグラバーは私財をはたいて計画を推し進め、実際の移植活動はパーレットがおこなった。それで現地ではカワマスをパーレットマスと呼んでいた。当時の湯川にはカワマスと競合する魚属がいなかったせいか、カワマスは結局定着し100年を経過した今は、一見きわめて健全な生態系を作っているかに見える。現在、上高地や津南町の龍ヶ窪の池(湧水池)もカワマス自然繁殖で有名で、いずれもとても大切に保護されている。これら以外は雲仙をはじめ全国各地に広く移植が試みられたが総じてうまく行かなかったようだ。北海道では大正末期にN川源流域の水温10度C前後の湧水池に移植され、現在でもその子孫の少数が純系のまま生き残っている。同時期に千歳川上流や空知川上流域、および斜里川 にも移植されたが、これらはほとんど絶えた。かってカワマス養殖が行われていた空知川支流の一部(アメマスとの雑交あり)と道東の一部の水系にわずかな命脈を保っているに過ぎない。北海道に80年以上にわたり自然繁殖している個体群は、多くの意味合いで極めて貴重である。間違ってもヒットラーみたいな単純な発想に基づいて駆除・皆殺しなどしてはいけないし、また現実的に、それは不可能だ。日本における真の生態系多様性とはこのような現状をも含めた発想であるべきで、比較的古い生態系のみに頑固に固執するあまり最も大切な現在を見失ってはいけない。生態系とは本来きわめて流動的なもので過去はもちろん今現在も未来も動き続ける。またこのカワマスを現在土着の魚属がいる他の内水面に移植・放流するのは常識的に考えても行うべきでないが、湯川、上高地、龍ヶ窪の池のような環境は今後北海道に存在しても良いと思う。2004年から北海道ではカワマス・ブラウントラウトの放流は法律で単純一律に禁止されたが、ブラウンとは異なりカワマスの現状把握がなされていないことは明白で、熟慮の末の法律とは到底言い難い。ブラックバス騒ぎのドタバタ劇の落とし子に過ぎない。この北海道独自の法律は将来、状況によっては再検討を要する時期がくるかも知れない。


一般論としては魚食性が強く、産卵時期が重なる場合は土着のトラウトと自然雑交をする傾向のあるカワマスは現在、在来の魚類のいる川へは放流すべきでないだろう。 一方、本州の湯の湖、湯川は本種が移植されてから100年が経過した。毎年カワマス観察会には多数の青少年が参加するほか、年間4000人を越える釣り人がカワマスに会うために湯川を訪れるという。湯川は現在自然繁殖するカワマスの川として環境保全に力を入れていることで有名だがここには本来、土着のイワナ属の魚はいなかった。 北海道には砂防ダムの際限ない建設で、美しい渓流だが魚属の絶えたいわゆる死の川は実にたくさんある。そのような死の川に、将来、法律の再検討など条件が整えば、この美しいカワマスのみを自然繁殖させることはきっと意味があると思う。今後、北海道においては河川湖沼の使い分けと管理が早急の課題であり、それがうまく機能すれば外来魚にかかわる諸問題も必ずや解決できるだろう。

川の管理はもはや治水・治山 ?????? 最優先やサケ・マスの孵化放流事業最優先のみでおこなわれるあまり、ごく目先の巨大な営利・利権に群がりたいがために、頭が剛直化していてはいけない。そんな時代は去ってほしものだが、この後におよんでもなおサンルダムや平取ダムの建設達成に血道をあげるあさましい勢力が幅をきかせている現状は、いかに今現在の彼らの利権・生活がかかっているとはいえ、さみしい限りである。いつになったら目が覚めるのだろうか ?  将来、ダム建設で失われた貴重な生態系を回復しようとする機運がおこった場合、ダム建設費500億円と同額をを投じても、もはやそれを取り戻すのは不可能であろうことは明白だというのに。そろそろ我が国においては自然破壊という言葉の意味を、冷静にかみしめてもよい時期なのではあるまいか。ダムによる自然大破壊は川に棲む生き物のみにとどまらず、じつに広大な範囲に悪影響をあたえることを知るべきである。もう死の川を増やしてはいけない。


在来魚の保護や、外来魚や移植魚の取り扱いについてはもっともっと柔軟に広い視野で英知をしぼるべきだとおもう。これは予算や人材不足、その他の理由で現在の行政( 行政といえば聞こえがよいが、たまたまそれを担当することになる数少ない超多忙の道職員のある特定の個人の方を指す )には能力的にも到底無理な相談だ。まいどおなじみの権威のあるとされる方の意見を聞いてそれでおしまいというのではなく、最終的には北海道の湖沼渓流の遊魚指導を中心に取り扱うおおらかなNPO法人などの設立が強く望まれる。

人間には無い物ねだりの特性があり、北海道のアメマスを初めてみた外国や本州の釣り人はきっと美しいトラウトだとおおいにうらやましがるに違いない。北海道のアメマスは世界に誇れる立派なトラウトだと思う。しかし残念ながらニジマスやブラウンのような強烈なファイトはアメマスには無い。最近では大物アメマスは少ないのでなおさらだ。それでも近年、阿寒湖のネイティブのアメマス釣りは本州のアングラーの間では無い物ねだりもあって人気が高い。しかし、おそらくすぐあきられると思う。北海道 N川水系のカワマスは、最近ではあまりに個体数が少なすぎて、釣り人の憧れは強いのだが実際には釣りのターゲットとはされない。釣れるかどうかはまったく運次第。

 2005年5月28日。N川水系上流域でカワマスとアメマスの関係を調べた。この日、ここでは合計8匹のカワマスと9匹のアメマスを確認した。この日この水域ではオショロコマ、ニジマス、ヤマベは見られなかった。心配していたカワマスとアメマスの交雑個体と思われるものはなく、この日確認したアメマスの肉眼的観察ではごく普通のアメマスばかりであった(遺伝子解析をしなければ断定はできないが)。ここではカワマスとアメマスの産卵時期の重なりが無いためと思う。きっとアメマスの産卵時期が遅いのであろう。N川水系にはこのほかに保護水面があり残念ながらそこでの調査は出来ないでいる。この場所のカワマスは移植後80年という長期間にわたり独自の生態系をつくりあげ、恐らくこの水系での繁殖力は意外と旺盛ではないために長年、取り立てた問題を起こしていないのだと思う。このN川水系の美しい自然繁殖カワマスは釣り人たちの憧れの的である。一般の釣り人が釣ろうとしても滅多に釣れる魚ではない。

純系のカワマスは美しく、まさに渓流の宝石と呼んでもよさそうである。この北海道に唯一残った純系カワマス棲息環境は、今となってはとても貴重なものだと思う。純系カワマスの種苗としては世界的に見ても貴重と思う。

















純系カワマス棲息水域のアメマス。空知川水系とはことなりカワマスとアメマスとの雑交個体はこの水域では肉眼的観察上認められない。








本州では湯川・湯の湖、上高地、龍ヶ窪の池などごく限られた水域でカワマスが自然繁殖しているが、大切に保護管理され、カワマス観察会も盛んに行われている。上高地は在来のイワナとの交雑が起こっているにもかかわらず、全面禁漁にするなど実に手厚い保護を受けている。同じ外来魚でも見ようによっては醜悪で、旺盛な繁殖力がありもっぱら悪党扱いされるブラックバスやブルーギル、カムルチーなどと比べ美しいカワマスは超別格の扱いだ。おそらく決定的な悪さ??をしていないこの美しいトラウトに対する潜在的な好感と憧れがそうさせているのではないかと私は思う。なお、上高地の梓川の永久禁漁保護水域ではイワナ、カワマス、ブラウントラウト、および交雑腫がいまやそれなりの生態系をなして共存している。しかし、古来のNative のイワナは既に消えたとも考えられている。この状況が長く続いた場合100年後、200年後、さらに500年後これら個体群を見た人たちは何というだろうか。 生態系とは未来永劫変わらない事などありえず、本来流動的なものであると思う。宇宙人? からみれば、おごり高ぶっている人間は地球上の生態系に異常に強く関与する最も悪質の生物の一種に過ぎない。そういった意味では、宇宙人による地球侵略があった場合、真っ先に駆除されるのは人間かな ???。

今後、最近の北海道のカワマスの現状とオショロコマとの交雑の実態などを多数の画像とともに漸次紹介してゆきたいと思います。



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