わが国は山あり谷あり、そして何本もの川が流れる複雑な地形のため、市街地を除けば道路は曲がりくねり、起伏も激しい。何キロも続く直線道路はほとんどないといっていい。だが北海道だけは本州などと異なり、どことなく大陸的で広々としている。北海道の、果てしもなく続く直線の道路に、ド肝を抜かれた人は少なくないはずだ。
国道一二号は、札幌市と旭川市を結ぶ全長一四五kmの幹線道路だが、そのルート上に日本一長い直線道路がある。滝川市と美唄(びばい)市の間約二九kmが、見事なまでの直線なのである。本州で直線が一〇km以上も続く道路はまず見当たらないが、北海道では決して珍しいことではないのだ。
どうして北海道には、こんなにも直線道路が多いのか。地形的に恵まれていたともいえるが、明治時代までほとんど未開地だったため、道路も計画的に建設できたというのが最大の理由だろう。曲がりくねった道路より、直線的な道路の方がロスが少なく、交通路として望ましいことはいうまでもない。障害物がなければ、直線道路を建設するのは当然のことといえる。
北海道の開拓に、屯田兵や各地からの入植者たちが果たした役割の大きかったことはよく知られているが、つい忘れられがちなのが囚人たちの存在である。北海道各地の集治監に収容された囚人たちは、貴重な労働力となって活躍した。活躍したというより、過酷な労働を強いられたのである。想像を絶するような非人道的な強制労働のため、多くの囚人が命を落とした。滝川―美唄間の直線道路の建設にも、多数の囚人が駆り出され、わずか三か月あまりで完成させたという。囚人の犠牲なくしては、日本一長い直線道路も誕生していなかったのかもしれない。
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