読む日々

テーマばらばらの読書日記

あした咲く蕾

2011-09-14 | 
朱川湊人「あした咲く蕾」

 東京の昭和を舞台にした、家族がテーマの、朱川さんらしい少し不思議な物語7編。


どれも、素晴らしいどの話もそれぞれ胸に詰まされたり、考えさせられたりして、涙が出なかったお話はなかったです。

・あした咲く蕾・・・自分の命を人や動物に分け与える力を持って生まれた叔母、美知恵。枯れた朝顔に命を与えた事がタイトルになったかと。最後は想像通りの結末でした。

・雨つぶ通信・・・・離婚した両親の復縁を願う少女だったが、母親に恋人ができ、ひねくれてしまう。ある日、雨の音に集中していると、人の心の声を聴く力がある事に気付き。。。ハッピーエンドでよかった。

・カンカン軒怪異譚・・・落ち込んだ人が吸い寄せられる不思議な店「関々軒」。おばちゃんの料理を食べた人はみんな頑張れる。その源は100年使った中華鍋。おばちゃんの祖父が昔、この中華鍋で作った料理を食べ、孫文は革命を成し遂げたらしい。
おばちゃんと、主人公の関係がとてもよい。

・空のひと・・・・小中学校と同級生だったカップルが結婚するまでと、夫が死んでから今までを、妻が回想しながら天国の夫に語りかける話。涙、涙でした。亡くなる時、お腹にいた娘に夫が会いに来た辺りは号泣。

・虹とのら犬・・・両親の離婚と、学校での理不尽な扱いに心を歪ませた少年と、クラスメイトで軽い知的障害がある女の子の関わり。女の子が自分の笑顔が好きだと言ってくれた事で救われた少年。大人になったラストがいい。読後感は最高だった。

・湯呑みの月・・・自宅近くにアパートで暮らす母方の叔母、明恵との日々を回想する少女。少女の母が事故に遭った時、不安で眠れない少女に湯呑みを持たせ、月を映して「甘くなったでしょ」と飲ませた叔母。優しくて大好きな叔母と何故離れなければならなかったのか。。。母親の「好きであの子の姉さんに生まれてきたんじゃない」というセリフに、姉妹の感情の難しさが凝縮。

・花、散ったあと・・・死期が近い友人を病室に訪ね、彼が25年前に体験した不思議な話しを聴く。愛人を作って家でした母親が夢?に現れて手を握ったと。本当に母親か、と尋ねる主人公に「小さい頃、いつもそうだった。手を握ったり、ほっぺを触ったりした後、母ちゃんは必ずおでこをなでる。したから上に。」それと同じ動作を感じた、って事。私も夜中に息子を触ったあと必ず頭をくしゃくしゃなでるので、ちょっとその場面で泣いちゃった。


どれもこれも面白かった。
満足度100