読む日々

テーマばらばらの読書日記

ミシシッピがくれたもの

2011-09-06 | 絵本
「ミシシッピがくれたもの」リチャード・ペック作/斎藤倫子 訳
原題The River Between US

 1916年、第一次大戦前夜、ミズーリ州セントルイスに住む15歳の「私」は、医師である父親と、5歳になる双子の弟達と4人で
イリノイ州グランドタワーの父の実家まで旅をした。父の実家には両親と大叔父、大叔母夫婦が暮らしている。

辿りついた実家で「私」は、祖母のティリーから、南北戦争の時代の、長い長い話を聞く。
祖母と大叔父のノアは双子。大叔母となるデルフィーンは、ニューオーリンズから川を上ってやってきた。

イリノイ州はリンカーンの出身地。だけど南部派が多かったらしい。地域的に。
ある日やってきた、裕福なデルフィーンは、バリバリの南部の娘。戦争のひどさを交えながら
その生い立ちがだんだんと明らかになっていく。

以下、ネタバレ。

・デルフィーンは、黒人の血を引く女性。見た目はほとんど白人だが、一緒に来た姉のカリンダは、誰が見ても黒人。それで皆、カリンダデルフィーンの奴隷だと思っていたが、実は姉で、未来を予知する不思議な能力を備えている。
・ティリーの妹キャスは、人には見えない物が見える少女。カリンダと意気投合する。
・デルフィーンは、「クワドルーン」として、白人男性とは結婚しない決まりを守り、ノアとは結婚しなかった。がティリーは周囲に結婚したと告げていた。


最後に明らかになる衝撃の事実。
「私」の父は、ティリーとその夫であるハッチングス医師の息子ではなかった。実の両親はノアとデルフィーン。デルフィーンは息子の将来を案じ、そのため父はティリーとハッチングス医師の子どもとして育った。父には親が4人いるようなもの、との冒頭付近のセリフは伏線だった。

アメリカの重大な歴史を、ある意味わかり易く子どもたちに教える為の小説?
すごく、色々な事を考えさせられました。「今」という時は、歴史の上に乗っかっているんだなあ、と。
ただ原作を読むアメリカの子どもたちはどうだかわからないけど、日本語版は中学生でも難しそうだけどなあ。

「親」の愛に、最後は号泣でした。

あとあと、個人的にはティリーとハッチング医師の、「おそらく将来、一緒に生きるんだろうな」という事を表す部分がツボでした。負傷したノアを故郷に連れ帰るため、軍医のハッチング医師と駅で別れる場面。

「別れの握手をしたとき、わたしは、いつもよりほんの少しだけ長くハッチング医師の手を握っていた。それで充分だった。そのときにわかったんだよ、ここがわたしの手を委ねるところなんだ、ってね。(中略)そのうちに、わたしは、自分が時間つぶしをしていることに気づいた。手紙の送り主がわたしのもとに帰ってくるまでの時間をつぶしていることにね。

「運命の人」って、わかるんですかねちょっと、ときめいちゃいましたいいなあ、「これから」の人は。(・・・って、150年前の話しですけどね)

満足度90