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『タックスヘイブンに流れる日本の「税金」を取り戻せ(1-5)』  

2013年10月15日 14時51分24秒 | Weblog

伊吹太歩,Business Media 誠  

2013年07月18日 08時00分 更新

伊吹太歩の世界の歩き方:

タックスヘイブンに流れる日本の「税金」を取り戻せ (1/5)

自国で納めるべき法人税を、税率の安い海外の子会社で支払う。オリンパスの粉飾決算にも関係していたタックスヘイブンが、メディアを騒がすようになった。

 タックスヘイブン(租税回避地)とは、所得税や法人税などが低い、または無税とされる国や地域のことで、そうした場所の銀行などに日本や外国で得た収入や資産を隠し持つことで、脱税やマネーロンダリングの温床になるとして世界中で問題になっている。

 国税庁は2013年6月、カリブ海のケイマン諸島や南太平洋のクック諸島など国や地域に財産をもつ日本人のリストを大量に入手したと発表した。そして発表にいたった理由を、「積極的に公表することで国際的な税逃れに断固として対抗する姿勢を見せるためだ」としている。

 また、財務省も驚くような数字を発表した。日本から英領ケイマン諸島に流入した資金が2011年には15兆3603億円に達したというのだ。証券 投資の形だが、オリンパスの損出隠しなどの舞台になったケイマン諸島には日本からも莫大なカネが流れている実態が明らかになった。

 この2つの発表は大変なニュースだ。もちろん日本にとって大問題であるのは間違いないのだが、それ以上に、ケイマン諸島やクック諸島にとっても死活問題なのだ。

 どういう経緯で国税庁がリストを手に入れ、財務省が現状を把握できたのかは分からない。だが、基本的には顧客の情報を秘密にするということで成り 立っているはずのタックスヘイブンで情報が漏れたことが事実なら、もはや誰もその国や地域で口座を作ってカネを預けなくなる可能性があるからだ。

 

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スイス議会は米国の顧客情報開示要求に屈せず

 ちなみに顧客情報を厳しく守秘するスイスは、米国からここのところ再三にわたって米国人の口座情報を出すように圧力をかけられている。米当局は、脱税している可能性がある米国人を調べて、きっちり米国で納税させたいのだ。

 しかし2013年6月19日、スイス議会は米国人の口座番号を提供する法案を否決した。厳しい圧力にスイス政府は法案を提出したのだが、スイス議会は屈しない。スイス政府は圧力に負けて少し情報を出したといわれるが、こちらもスイスにとっては死活問題だ。

 日本や米国は、本来受け取るべき税収を回収しようとしているだけ。日本も莫大な金額を「失って」いるが、米国もそれは同じ。米CNNは2012 年、「世界の資産家が租税回避地(タックスヘイブン)に隠した金融資産の総額は2010年末の時点で推定21兆~32兆ドル(約1650兆~2500兆 円)に達し、米国と日本の国内総生産(GDP)を合わせた規模以上になるとみられる」と報じている。

 また最近、あの有名企業も、タックスヘイブンがらみで話題になった。米アップルだ。手口は、アイルランド政府と法人税率を2%以下にすると合意し (通常は12・5%)、アップルが同国に設立した子会社に利益を蓄えていた。結果として、米国の法人税を脱税していたと米議会から指摘されたのだ。

 

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タックスヘイブンは単なる脱税ではない

 こうしたタックスヘイブンの現状について、英フィナンシャル・タイムズ紙などで活躍するタックスヘイブンに詳しいジャーナリストのニコラス・シャ クソンに話を聞いた。タックスヘイブンについての彼の著書『TRESURE ISLAND』は、ノーベル経済学賞を受賞者である経済学者ポール・クルーグマンが「興味深く恐ろしい」本だとして、ニューヨークタイムズ紙の自らのコラ ムで題材にしたほどだ。

 シャクソンは、日本の国税庁による発表に「そうなのか! それはすごい発表じゃないか」と驚きを隠さない。そして、「今取材を続けている本で間違 いなく日本についてさらに調べるつもりでいる。ただ取材にはあと2、3年かかってしまいそうだけどね」と笑った。以下、シャクソンへのインタビューだ。

――世界的にどれほどの影響があるのか?

シャクソン: 国際的に、とてつもなく大きな影響がある。タックスヘイブンの問題は、ただ単に脱税というだけではない。さまざまな法律に違反する。税法、刑法、金融規制法など、こうしたすべてのものに違反する現象だ。自国のルールを無視してカネを持ち去っている。

 タックスヘイブンは世界経済の『副次的なもの』と見られがちだが、取材の早い時期で、この問題は世界経済の中心にあるのだと気付いた。もうひとつ重要なのは、タックスヘイブンはみんなが想像するような小さな島というのに限らないことだ。アジアでは香港がいい例だ。

――タックスヘイブンの国々にとって、ニューヨークやロンドンは「上客」だということだが、日本はどうか?

シャクソン: 日本については、実のところ詳細まで調べていない。でも興味はあり、もっと調べる時間があればと思っている。ほかのアジア諸国もそうだ。

 タックスヘイブンの問題が日本にも重大な影響を及ぼしていることは間違いない。国際的にも注目されたオリンパスのケースがそれを物語っている。あの件にはケイマン諸島が関わっていた。だから、日本にも大きな影響があると考えている。

 

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金融緩和がタックスヘイブンを活性化させる

――タックスヘイブンの問題は世界的にも大きな話題だ

シャクソン: 強調したいのは、タックスヘイブンの存在は金融分野の規制緩和とかなり深く関わっていることだ。私の母国である英国は、規制緩和と同時に税法についてのコンプライアンス(法令順法)の意識が低下する傾向にある。それは競争が激化するからだ。

 つまり規制緩和によって税法を軽視するようになり、脱税などの犯罪も見逃されやすくなるということだ。これはとんでもなく危険だ。だから日本でも 規制緩和が進めば、同時に税法に対する締め付けもセットで進められる可能性がある。これがタックスヘイブンを利用する原動力になる。

――欧州は経済危機にあるが、そういうときにタックスヘイブンは活発になるのか?

シャクソン: 過去何十年もタックスヘイブンは問題になっているが、オンショア(自国内)の経済よりも断然早い スピードで大きくなっている。むしろ昨今の経済危機がそのスピードを減速させていたようなところがあった。それでもタックスヘイブンは成長傾向にあり、経 済危機だからといってその傾向が逆方向に振れることはない。大きくなり続けている。

 

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タックスヘイブンの透明化は世界的な傾向か?

――そもそもタックスヘイブンでは、簡単にペーパーカンパニーを作れるのか?

シャクソン: それはタックスヘイブンとなる国による。例えばケイマン諸島だと、ほとんどのカネはヘッジファンドから来る。だがずいぶん前には、麻薬からのカネが多かった。そういうカネはほかのタックスヘイブンに流れていった。

 現在、スーツケースに現金を詰めてケイマン諸島を訪れても、口座を開くのはかなり難しい。もっと小さなところ、例えばアルバ(南米ベネズエラの北西沖に浮かぶ島)に行けば状況は違う。クック諸島もある。こうした国なら、断然簡単だ。

 1つの会社が別の管轄地域の会社に所有されていて、それがまた別の島の会社に所有され、その会社がスイスに口座を持っていて、という具合に続く。こうなるとカネの動きを追うのはかなり難しくなる。

――米国がスイスに米国人の口座情報を開示するよう迫ったように、そういう傾向がこれから広がるのか?

シャクソン: そう思うが、限定的だ。スイスに対して米国が何をしたかというと、スイス銀行や銀行関係者たちを国家反逆罪に問い、強制的に言うことをきかせようと圧力を与えた。

 それでスイスが少し折れて、米国は少しだけ情報を得ることができた。米国はスイスの銀行に少しだけ『侵入』できたのだ。これはとても大きな意味があるのだが、結局は2国間のやり取りに過ぎない。これ自体は、他の国に何ら影響を与えない。

 例えば日本。米国が少しスイスから情報を得たからといって、日本も同じことができるという意味ではない。ただ米国は、金融機関同士が情報を共有す るための試みを進めている。これは米国のモデルで、欧州もスイスの透明性を高めることを目指して動いている。ただ香港やシンガポールは今もそうした動きに かなり抵抗している。

 

 

著者プロフィール:伊吹太歩 氏

世界のカルチャーから政治、エンタメまで幅広く取材し、夕刊紙を中心に週刊誌や月刊誌などで活躍するライター。

出版社勤務後、世界のカルチャーから政治、エンタメまで幅広く取材、夕刊紙を中心に週刊誌「週刊現代」「週刊ポスト」「アサヒ芸能」などで活躍するライ ター。翻訳・編集にも携わる。世界を旅して現地人との親睦を深めた経験から、世界的なニュースで生の声を直接拾いながら読者に伝えることを信条としてい る。

以上、

   http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1307/18/news001.html

   http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1307/18/news001_2.html

   http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1307/18/news001_3.html

   http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1307/18/news001_4.html

   http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1307/18/news001_5.html  

                                          より、本文全(抄)引用


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日本はまだまだ甘い! 世界のブラック企業の現実 (1-3)

   http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1309/12/news006.html

   http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1309/12/news006_2.html

   http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1309/12/news006_3.html   


その他、タックスヘイブン関連著書

ニコラス・シャクソン著 『タックスヘイブンの闇』  世界の「守秘法域」を網羅的に調査

以下
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO40422430U2A410C1MZA001/  より引用

 衝撃的な内容である。一読すれば、英米主導の国際金融制度改革に懐疑的にならざるを得ないだろう。秘密性が高いために、システマティックな研究がほぼ不可能なテーマなので、勇気あるジャーナリストによる調査報道がここまで網羅的にできたことは称賛すべきだろう。

 ロンドンの金融街=シティを中心として、何重かの同心円状に、旧植民地が情報公開を拒む「守秘法域」の「蜘蛛(くも)の巣」をつくってい る。ジャージー島、ケイマン諸島から香港に至るタックスヘイブンに、世界のブラックマネーが流れ込み、洗浄されてロンドンに現れる。ここまでは想像のつく 方も多いだろう。

 しかし、シティは、単に自由化が進んだ金融市場ではなかった。通常の国内法が及ばない「国の中の国」であり、かつてはBank of  England(英国中央銀行)が守護者であった。この地区を統治するCity of London Corporationは摩訶(まか)不思議な存在 で、王朝期以来度重なる干渉をはねのけて、ブレア政権期にもその守秘性を高めたという。

 アメリカでも、東部の小さなデラウェア州がビジネス界に歓迎される立法を繰り返し、多くの大手企業の本籍地となっている。連邦制という分権 システムを利用した実質上のオフショア化である。クリントン政権が金融自由化を完成させた時に、規制監督を全国統一しなかったので、デラウェアにとっては 理想的な環境ができあがった。数世紀も前の「山猫銀行」を彷彿(ほうふつ)とさせるような金融機関が現存してきたのである。

 シティとつながる各タックスヘイブンは形式上は英国の支配下にない。米国も連邦制は建国以来の“民主的な”伝統だし、連邦レベルではクリー ンだと十分主張できる。クリーンな面での規制強化を世界的に推し進めながら、裏口への規制強化は骨抜きに終わってしまったのだとすればどうだろう。

 「守秘法域」は金融危機の主因ではないが、危機を助長したし、大多数の企業や人々にマイナスの存在であることは否めないだろう。客観的な確認はできないが、説得的な内容が多い書として評価できよう。

(神戸大学教授 地主敏樹) [日本経済新聞朝刊2012年4月15日付]