かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『寒気氾濫』の一首鑑賞 305

2024-08-23 08:33:02 | 短歌の鑑賞
  2024年度版 渡辺松男研究37(2016年4月実施)
    【垂直の金】『寒気氾濫』(1997年)124頁~
     参加者:S・I、泉真帆、M・S、鈴木良明、
         曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:泉 真帆 司会と記録:鹿取 未放

305 髄膜炎四十一度でわが見しは重油うずまくごとくなりけり

     (レポート)
(解釈)髄膜炎で四十一度の高熱を出している作者は、どろどろと重く、窒息してしまいそうな重油のうずまく中にいる。
(鑑賞)「重油うずまく」は、戦艦大和の護衛艦「矢矧」が、撃沈され、兵が沖縄の海に投げ出され、重油まみれに沈んでゆく場面を思った。(真帆)


      (当日発言)
★これはこのまま実感と思いました。私も腎盂腎炎で四十一度の熱出したことあります
 けど、こんな感じだったから。京大病院に入院していたんですが、病棟から遠く離れ
 た道路を夜中に車が通る音が轟音に聞こえました。重油が渦を巻いているような、押
 し被さってきそうな圧迫感。(鹿取)
★これは分かりやすい歌です。重油が渦巻くような朦朧とした感じがうまく表現されて
 いる。真帆さんみたいにそこから社会詠のようにとるのもありかなと思います。
   (S・I)
★水に重油が渦巻いていろんな色に見える、あの気持ち悪いような感覚。(鈴木)


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