かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞  272

2021-07-27 18:12:13 | 短歌の鑑賞
 渡辺松男研究33(15年12月実施)
   【全力蛇行】『寒気氾濫』(1997年)112頁~
    参加者:泉真帆、M・S、曽我亮子、藤本満須子、鹿取未放
     レポーター:泉 真帆 司会と記録:鹿取 未放


272 われらふぐりが膨らんでゆき綿雲のああふんわりと浮くあきの空

       (レポート)
【解釈】僕らのふぐりは膨らんでゆきふんわりする、まるで秋空に浮かんでいる綿雲の心地だ。
【もう一つの解釈】作者の心はいま「ふぐり」と同化しているのだろう。綿雲がふんわりふんわり浮く秋空。みているとその綿雲もふぐりのように見えてくる。(真帆)


       (当日意見)
★「われらふぐりが膨らんでゆき」で切れる2句切れだと思います。それから評者が 
 悩まれた初句は「われら」=「ふぐり」ではなく、われら「の」ふぐりという所有
 格の「の」が省略された形だと思います。われのふぐりが、と単数だったら分かり
 やすいんだけど、複数になっているからどういう場面を想像したらいいのか、難し
 いですね。少年期の男の子の歌って読めばまあ分かるけど、たぶんそういう解釈で
 はないと思うし。(鹿取)
★ふぐりから秋の空に繋げるところが詩的で面白いですね。そんな難しく考える歌ではな
 いと思います。(曽我)
★すると、われらのふぐりが膨らんでいく身体感覚と、空にはふぐりに似た雲がふわふわ
 と浮いているなあという感慨。それだけ?(鹿取)



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