かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞 2の249

2020-03-12 18:22:19 | 短歌の鑑賞
  渡辺松男研究2の32(2020年2月実施)
     Ⅳ〈夕日〉『泡宇宙の蛙』(1999年)P160~
     参加者:泉真帆、岡東和子、A・K、菅原あつ子(紙上参加)、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:泉真帆    司会と記録:鹿取未放


249 あらわれたるひとつの雲を追いながらしんみりと牛も草もわれも浮く

            (レポート)
 青青とした牧場に牛を放ってある。雲を目で追っていると、遠近法や現実に生きている感覚が曖昧になり、ふわっと浮いたような気持ちになる。とてもわかる一首だった。(泉)


              (紙上参加)
 「秋の気持ちの良い丘の上で、雲に誰かの面影をかさねながら、牛とともにふわりとした時間を過ごしているよ」という気持ちのいい歌、この一首だけであれば。けれど、連作としてみると、雲にマザー・テレサをかさねているように思える。尊い人を失ってしまった悲しみとその尊い人が天に召されただろうという救われるような気持ちがうたわれているように思う。(菅原)


             (当日意見)
★泉さんの感じに近い。菅原さんは少し読みすぎかなあと。キリスト教的なものは
 渡辺さんは遠くて、東洋的なものに近い人だと思うのですが。(A・K)
★私も松男さんは感覚的、思想的には東洋的なものに近い人だとは思います。この
 歌では雲を見ていたらふーと自分も空に浮き上がる感じ、牛も草も一緒に浮き上
 がる感じもよく分かります。たとえばシャガールの絵には花嫁や山羊が浮いてい
 るのがたくさんありますけど、ああいう民族的な濃い情念のこもったものではな
 くて、もっともっと淡泊な、柔らかでナチュラルな感じ。だから天国とか限定し
 ない方がいいように思います。(鹿取)
★牧歌的で谷内六郎の絵みたいですね。(A・K)



コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 渡辺松男の一首鑑賞 2の248 | トップ | 渡辺松男の一首鑑賞 2の250 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

短歌の鑑賞」カテゴリの最新記事