かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

清見糺の歌一首鑑賞 197

2022-09-09 12:46:52 | 短歌の鑑賞
     ブログ版 清見糺の短歌鑑賞  おいたるダビデ  
                  鎌倉なぎさの会  鹿取 未放


197 くもりよのそらばたばたとたたきつつヘリコプターはねぐらにかえる
           「かりん」2002年10月号

 「くもりよの」は、「たどきも知らず(方法が分からない、すべがない)」「迷ふ」などにかかる枕詞であるが、この歌では枕詞としての機能は果たしておらず、「曇った、暗いこの世界、現代」くらいの意味だろうか。「くもりよ」に対して何か悪意や恨みの滲む歌である。「ばたばた」という擬態語にも悪意が潜む。ヘリコプターのねぐらとは、警察か自衛隊か米軍基地か報道機関か、何を想定するにせよ、そういうものに作者は不信を感じているのであろう。
 さて、この年「くもりよの」を使った歌が掲出歌を含め三首「かりん」に載っている。他の二首は以下の通り。

 くもりよのたどきもしらずシジフォスのあさをむかえてめくらむわれは(5月号)
くもりよのゆくえもしらずうまれたるあこのこにいうひとななかせそ(9月号)

 シジフォスの歌は後で鑑賞する。二首目は「あこのこ」すなわち孫に、こんな暗い世に生まれてきた孫よ、せめて人を泣かすなよと言っている歌。二首も「くもりよ」はいちおう枕詞としての機能は果たしつつ「暗い現世」という意味に比重のかかった、実感の濃い使い方をしている。

 ★「くもりよ」の指定が恐さを出している。「た」の音の多用も固さを出してい
  る。(藤本満須子)

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