先日の12月15日、サヌール近くのPadanggalakビーチで
昨年に続いて2回目の「ベノア湾埋め立て反対」のアートイベントが「Nawa Sanga」というタイトルで開催されました。
「Nawa Sanga」とは、ざっくり言うとバリ・ヒンドゥーの世界を司る(九つの)神々と、その武器を意味する言葉です。
私は行けなかったのですが、FBへの投稿などから引用して皆さんにご紹介します。
まず画像から。
これは「
Seni di Hari Libur 」というアート・コミュニティーが
FB でアップしたものです。
今回のイベントのシンボルはこれ。鉄筋を組んで作った、埋め立て(破壊)を象徴するパワーショベルのアームを
大きな手が握りつぶしている巨大なオブジェです。13メートルの高さですって。
その下で始まったのは「Kini Berseri」という劇団の演劇パフォーマンス。
「Bali Extreme Drummer」というパーカッション・グループ。
「ROLLFAST」はバリのプログレ・バンド。昨年も出ていました。
おお!「BINTANG BAND」です!JUN君、かっこいい!
「 Jangar 」はヘヴィー・ロック・バンド。
女の子たちのルジャン。
みんな、ゴミはゴミ箱にね。こういうところもしっかりフォローしています。
こちらはサーファーがなにやらワラワラと集まってきました。・・・いったい何が始まるのでしょう?
ん?勢揃いしています。
夕暮れの海へ入っていった、と思ったら・・・
波の上でこんなフラッグを!!すごい!
「Bondres rarekual」というパフォーマンス集団によるトペン劇。
さあ、日も暮れてきました。みんな左手の拳を揚げて反対の表明です。
「Make Lawar Not War(戦争するよりワラール作ろ!)」のTシャツがめちゃめちゃイケてますねえ。
埋め立て反対テーマソングでもお馴染みの「Nosstress」
インドネシアの先鋭的環境保護団体バリ支局長、同時に埋め立て反対市民フォーラムForBALIの代表、Wayan Gendo氏。
この人のスピーチはもはや神懸かり的です。
「埋め立てハンターーーイ!!!」
バリ文学界のカリスマ、詩人の「Cok Sawitri」
Superman Is Dead のボビーが趣味で組んでるスカ・バンド「The Crotochip」。Yeah!!
レゲエ集団「Joni Agung and Double T Base Camp」
おチビちゃんのために、ちゃんとスペースを空けてあげています。この優しさ!
さてそろそろクライマックス。
わがバトゥブラン、Br.Tegal Tamuの青年団によるバロンのパフォーマンス!!!
夜空に浮かび上がるバベルの塔に、よじ上っていく人が・・・
パワーショベルのアームに火がついた!
燃え上がるシンボルに向かって吠える(?)バロン!!!
・・・というふうに、今年も大いに盛り上がったのでした。
そして・・・ちょっと長くなりますが、このイベントを見たマレーシア人の記者が、
早々にネット・ニュースでこの時の感想を書いていて、それがとてもよかったので、訳してここに載せます。
ソースは「
Malay Mail Online 」。タイトルは「Seni sebagai senjata(武器としてのアート)」
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♬Bangun Bali subsidi petani, kita semua makan nasi,
bukannya butuh reklamasi.
立ち上がれ、バリ
農家に助成金を
俺たちはみんな、毎日コメを食べてるんだ
必要なのは埋め立てなんかじゃない
Keputusan bau konspirasi, penguasa pengusaha bagi
komisi, konservasi dikhianati.
陰謀の匂いがプンプンする決議
財力のある企業リーダーたちはコミッションをバラまき
自然保護区域は犯される
Bangun Bali, tolak reklamasi. Sayang Bali tolak reklamasi.
Bangun Bali tolak dibohongi, rusak bumi dan anak negeri.
埋め立てに反対して、バリを築こう
埋め立てに反対して、バリを守ろう
ウソで騙されるのはもうたくさん
大地と国民が痛めつけられるのは、もうたくさん ♬
この「Bali Tolak Reklamasi 」の歌は、すでにバリの市民のテーマソングのようになっている。
多くの人々、特に若者たちは皆、この歌詞をすっかり覚えてしまった。
筆者は、サヌールから近いパダンガラッで行われた“Bali Tolak Reklamasi Art Event 2015”に参加して、
いま戻ったばかりでこれを書いている。
まだ知らない人のために説明すると、3年前ほど前から、バリの市民ー学生、非営利団体、アーティスト、若者たち、
ミュージシャン、研究者などが集まって結成された市民団体【 Forum Rakyat Bali Tolak Reklamasi (ForBALI) 】は、
ベノア湾の埋め立てに反対してきた。
反対する理由は、埋め立てプロジェクトがバリの破壊につながると考えているからだ。
ユドヨノ前大統領は、自然保護区域だったベノア湾を、理由もなく開発保護区域に変更したのではない。
この埋め立て計画は、インドネシアそしてバリの政府関係者と投資家の陰謀である。
バリの市民はこれが許せないのだ。
今回のアートイベントは、数千人(主催者側の発表では述べ5万人)の動員をした昨年に続いて2回目の開催である。
イベントの主旨は同じく「ベノア湾の埋め立て反対」。音楽、アート、演劇、写真など、さまざまな表現方法で反対を表明した。
Cok Sawtiri, Joni Agung, Nosstress, Pygmy Marmoset など、バリで有名・著名なアーティストらが勇気を持って反対を叫んだ。
貪欲な金儲け事業からバリを守るためなら、彼らは何も恐れない。
バリと芸術の関係は説明するまでもない。多くのツーリストがバリに訪れるのも、芸術があるからだ。
しかしながらそれを楽しむ人々は、バリのアートはロマンチックでありながらも、美しさ以外の何かが隠されていることも知っている。
バリは今まで、反抗的な市民が多くてクリティカルで実験的な試みを好むジョグジャカルタとよく比較されるくらい、
温厚なイメージがあった。しかし現在、その概念は覆されたようだ。「埋め立て反対イベント」を企画し、
実行した彼らを見ればわかるように、バリは「闘う島」へと変化した。
このアートイベントは、目で楽しむだけのものでもなく、我々が現実を忘れてフワフワ浮かれるように仕向ける道具でもない。
壮大なこの企画はそんなものを超えて迫ってきた。
彼らが生きている土地で観客を集めただけでなく、破壊されようとしているものを懸命に守るために、共に立ち上がったのだ。
このイベントはただの公演ではなく、ベノア湾を破壊しようとしている者たちへの闘いのアクションのひとつだったのである。
参加者たちは貪欲な権力者たちを恐れさせる竜巻のようになり、そして観客が賑やかになればなるほど、その風の渦は強くなる。
したがって、そのパワーはただのアートイベントや賑やかな集まりによるものではないのだ。
この賑やかさは同時に、我々がほんの一握りの人々ではないことを証明している。
昨年と同じように、何千人もの人々がパダンガラッの海岸に溢れた。筆者が駐車場に車を停めたとたん、
イベントの運営をスムーズに運ぶために協力するプチャラン(地域自警団)の人々の「埋め立て反対!」の熱い叫びに迎えられた。
以前のプチャランは、他所からバリに仕事を求めて来たインドネシア人を「敵」とする傾向があったが、今、彼らの本当の「敵」は
貪欲な資本家であることを認識しつつあるらしい。
今までバリの市民は、この島が直接・間接を問わず、貪欲な資本家によって被害を受け続けてきたのにもかかわらず、
ぐっすりと眠ったように大人しかった。
バリはマレーシアに喩えることができる。そのキーワードは「恩恵」と「降伏」である。
強欲な支配者と資本家は、バリ人がいまだに実力主義・競争力・生産力というものを持たずに生きていることをいいことに、
バリを利用し尽くしている。
ゆったり・のんびりと、生活のすべてを地域の習わしに則って生きているバリ人は、いつの日か自分自身が住むこの島で、
次第に隅っこに追いやられていく。バリの伝統に寄り添った開発も失われていく。
外から持ち込まれた“実力主義、競争力、生産性”という名のもとに、貪欲・強欲・金儲けの伝統を信じるように仕向けられている。
「バリは他の島々に負けるのか?それとも開発(金儲け)するのか?」という、お上の脅しのひと言。
その背後には必ず強欲な資本家の影がある。
持続不可能な、伝統文化を見下しているかのような開発に対して、この三年間、バリ人の憤懣・怒りは最高潮に達している。
今回のイベントはアーティストたちが舵を取ったと言ってもいい。
バリだからこそ、インパクトのあるアートを駆使して闘うと言ってもよい。
実際、その通りだった。強力で効果的なアートを利用して、行政に闘いを挑んだのだ。
埋め立て計画は現在のところ、まだ保留になったままだ。
デンパサールで活動中のアーティストのひとり、ギラン君は、学生とアーティストの活動の違いについて尋ねたとき、こう答えた。
「キャンパスの学生運動はいつもいつも同じようなことの繰り返し。常にやり方は同じです。方法を変えていく必要があるのでは。
たとえば学生はデモをすることで知られていますが、いつもやり方は従来通り。新しいデモンストレーションのやり方を模索して
いくべきだと思う。そして人生を価値あるものにするために、またはこのうんざりする世の中を変えていくために、
どうやったら本当に魅力のある見せ方ができるか、試みていくべきです。」
まったくその通りである。筆者は実際に何度か埋め立て反対のデモを見る機会があったが、反対コールや叫び声とともに、
実に楽しそうに音楽の演奏やダンス・パフォーマンスなどを披露していた。
対峙する敵は侮れないが、反対を叫ぶ声は明るく元気よく、しっかりしたトーンだった。
東ジャワのルマジャンで起きたサリム・カンチル氏の悲劇(海岸の採砂に対して反対運動をしていた住民が暴行されて死亡した事件)も、
抗いの火を弱めることにはならなかった。インドネシア大学の哲学研究プログラム代表であるサラス・デウィ氏はこう言った。
「芸術を通して、人間と自然は出会えるのだ」。
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「なかなかブログが更新されないなー」と思っていたみなさん。
私はここ数日、この翻訳につきっきりだったんですよー。
(ちなみに、本筋とあまり関係ない部分を、微妙に省いてあります。)
おっ、このイベントがYouTubeにアップされてました!ちょっと鳥肌立つよ。見て!
NAWA SANGA BALI TOLAK REKLAMASI ART EVENT 2015
VIDEO
もうこれ以上の開発はいらない。
これ以上、バリを壊さないで。
ForBALIはネット署名もしています。→
Change.org 「Revoke the reclamation permit of Benoa gulf, immediately!」
埋め立て計画を取り消すよう、バリ州知事に提出するものです。
よかったらあなたも賛同の署名をして下さいませんか?(入力はとても簡単です)
「思う」「願う」ばかりでは何も変わらない。
そう思って、私も頑張っています。