とき 9月5日(日)
ところ 評定河原球場
天候 曇り 気温 24度
秋の一日、仙台市医師会(仙医)、歯科医師会(仙歯)、薬剤師会(仙薬)の野球好きが集うこの大会も今年で25回目となる。過去の優勝回数は仙医9回、仙歯9回、仙薬5回となっている。台風18号接近のため、予定時刻を10分繰り上げての開会となった。今回の当番である仙薬・佐々木国雄会長の開会の挨拶に引き続き、昨年優勝の仙医・佐藤(勤)総監督から優勝杯が返還された。
<試合経過>
■第一試合
連覇を狙う仙医であるが、そのプレッシャーであろうか、最初から守備がどこかおかしかった。地に足が着いていない。必勝を期してエース安藤を立てたものの、1回表2失策がもとで仙薬に3点を奪われた。一方仙薬の先発鈴木(智)は試合前、なんと50mの距離で遠投を行っていた。仙医にプレッシャーをかけたつもりであろう。確かに球威は充分だが、何しろノーコンであった。1回裏仙医は無安打ながら、5四死球と1失策で4点を奪いたちまち逆転した。が、それもつかの間、3回表、堅守をもってなる仙医内野陣がまたも乱れ、3失策の挙句長打を浴び、6点を献上し勝敗は決した。失策・四球で走者をためると長打が出るというのは野球の常識だが、逆に仙医は4回までに9四死球を得ながら無安打だったのである。無安打で勝とうというのは虫が良すぎよう。最終回の代打、佐藤(勤)総監督が放ったぼてぼてのショートゴロが強襲安打と判定され、ノーヒットゲームを免れるのがやっとであった。
さて伊藤(幸)は初回四球で出塁するとあっさり2盗を決めた。本日75歳10ヶ月と25日、最高齢盗塁記録を更新した。もはや伊藤の前に記録なく、伊藤の後に記録は出来る。無人の野を行くが如くである。
また2回裏2死2塁、仙薬の2番高野が右翼に強烈なライナーを放った。誰もが1失点を覚悟したが、猛然と前進して来た猪股は地面寸前でこれをがっちりと捕球した。本人は、あれくらいで褒めらっでもなあ、と謙遜するが、この美技は守乱に泣く仙医にあっては、荒野に咲く一輪の山百合ほどの慰めとなった。
■第2試合
仙薬は野沢、仙歯は及川という両エースの対決である。事実上の決勝戦とあって、第1試合とはうって変わって締まった試合になった。初回に点を取り合った後は両投手の好投が続く。仙薬が見事な三塁線へのセーフティーバントを決めれば、仙歯はこの日のために練習したピックオフプレーで2塁走者を刺した。観客を唸らせる試合は、4回を終わって仙薬が3対2とリードしていたが、仙歯は5回の表、宮内の3塁打と千葉のタイムリーで1点を挙げ、ついに同点に追いついた。しかし5回裏、1点取れば優勝の決まる仙薬の闘志は凄まじい。2番高橋が失策で出塁。3番野沢は死球を得た。野沢は痛がるどころか、欣喜雀躍して1塁に駆けた。4番追木の右飛で2塁走者がタッチアップして1死1,3塁。絶体絶命の仙歯は続く5番鈴木を敬遠し満塁策を取った。この状況ではいたしかたないとはいえ、満塁にすると投手の腕は縮む。筆者は草野球で満塁策が成功した場面を知らない。ストライクゾーンのど真ん中を狙った次打者への1球目は、半ば予想された通り、打者の背中のど真ん中を直撃した。あっけない押し出しサヨナラ劇。この瞬間、仙薬は2勝となり、2年ぶりの優勝が決まった。
■第3試合
すでに優勝は決まって、仙医と仙歯の銀メダル争いになった。仙医は松井、仙歯は洞口の先発で始まった。第1試合のふがいなさに激昂した佐藤(徳)監督は、今年はノーサインでやってきたがこの試合からはサインプレーで行く、と宣言した。監督の剣幕に震え上がった、もとい、奮い立った仙医は、初回1死1,3塁から安藤が2塁打でまず1点。次打者佐藤(韶)の安打でさらに1点を追加した。ところがなんと安藤が2塁から3塁に走った際、左下腿に肉離れを起こし無念の交代となってしまった。さらに1死1,3塁で1塁走者佐藤(韶)が2塁へスタート。タイミングは楽々セーフであったので、仙歯の捕手宮内は送球を諦めた。ところがあろうことか、鉄人・佐藤は2塁ベースの5メートル手前で足がもつれ転倒してしまった。しかも起き上がれず、這うようにして2塁に向かっている。これを見た宮内は慌てて2塁に送球。佐藤は2塁寸前で憤死したが、安藤の代走河村がこの間に判断よくホームを陥れた。転倒は3塁走者を生還させるための頭脳的プレーにも見えたが、佐藤も足を負傷したというので頭脳はあまり関係なかったようである。この3点は死守しなければならない負傷の代償だったが、情けない事に仙医は3回裏に5安打を浴び5点、さらに4回裏に2失策と3安打で4点を奪われ万事休した。監督のサインは誰も見ていないようであった。
台風接近で心配された天候であったが、選手の熱気が雨雲を吹き飛ばし、第3試合の途中には青空さえ見えてきた。暑くなく寒くなく、風もない。絶好の野球日和となったのである。こういう日に優勝した仙薬ばどんなに気分が良いことであろうか。
表彰式、懇親会は仙台国際ホテルで行われた。今回を入れて、優勝回数は仙薬6回、仙医9回、仙歯9回と拮抗してきた。組織的な練習を積み、阿部(精)に「実力の仙歯」と煽てられて久しい歯科医師会は5年間優勝から遠ざかっている。若手が増え、「潜在力の仙薬」と評された薬剤師会は着実に力をつけて、ここ5年間で3回目の優勝となった。優勝回数で並ぶのも時間の問題であろう。
25回の節目ということで、この大会の発展に寄与してこられた仙医・佐藤(徳)、仙歯・岡部恭、仙薬・狭川春芳の三氏に感謝状が贈呈された。医師会、歯科医師会、薬剤師会の連携・協力がうまく行っている点では仙台市は全国でも稀有の例である。この野球大会がその一助になっているとすれば嬉しい限りである。
2連敗した仙医はカラオケ大会で雪辱を図ったが、これも仙薬の芸達者達の前に玉砕した。今日の仙医にはよいところがなかった。唯一輝いたのは優勝杯返還のシーンのみであった。負け試合の講評を書くのは実に筆(キー)が重い。
さて球界注目の板垣は、本日も2打数無安打、3死四球、3盗塁、5失策と活躍し、「年間無安打の盗塁王」という怪記録への道を驀進中である。盗塁の1つは牽制球に釣り出されたと見せてのディレードスチールであった。今年は残り3試合。記録の達成される歴史的瞬間に是非立ち会いたいものである。
大ファウル 打って見上げる いわし雲
(文責 宮地辰雄)
ところ 評定河原球場
天候 曇り 気温 24度
秋の一日、仙台市医師会(仙医)、歯科医師会(仙歯)、薬剤師会(仙薬)の野球好きが集うこの大会も今年で25回目となる。過去の優勝回数は仙医9回、仙歯9回、仙薬5回となっている。台風18号接近のため、予定時刻を10分繰り上げての開会となった。今回の当番である仙薬・佐々木国雄会長の開会の挨拶に引き続き、昨年優勝の仙医・佐藤(勤)総監督から優勝杯が返還された。
<試合経過>
■第一試合
連覇を狙う仙医であるが、そのプレッシャーであろうか、最初から守備がどこかおかしかった。地に足が着いていない。必勝を期してエース安藤を立てたものの、1回表2失策がもとで仙薬に3点を奪われた。一方仙薬の先発鈴木(智)は試合前、なんと50mの距離で遠投を行っていた。仙医にプレッシャーをかけたつもりであろう。確かに球威は充分だが、何しろノーコンであった。1回裏仙医は無安打ながら、5四死球と1失策で4点を奪いたちまち逆転した。が、それもつかの間、3回表、堅守をもってなる仙医内野陣がまたも乱れ、3失策の挙句長打を浴び、6点を献上し勝敗は決した。失策・四球で走者をためると長打が出るというのは野球の常識だが、逆に仙医は4回までに9四死球を得ながら無安打だったのである。無安打で勝とうというのは虫が良すぎよう。最終回の代打、佐藤(勤)総監督が放ったぼてぼてのショートゴロが強襲安打と判定され、ノーヒットゲームを免れるのがやっとであった。
さて伊藤(幸)は初回四球で出塁するとあっさり2盗を決めた。本日75歳10ヶ月と25日、最高齢盗塁記録を更新した。もはや伊藤の前に記録なく、伊藤の後に記録は出来る。無人の野を行くが如くである。
また2回裏2死2塁、仙薬の2番高野が右翼に強烈なライナーを放った。誰もが1失点を覚悟したが、猛然と前進して来た猪股は地面寸前でこれをがっちりと捕球した。本人は、あれくらいで褒めらっでもなあ、と謙遜するが、この美技は守乱に泣く仙医にあっては、荒野に咲く一輪の山百合ほどの慰めとなった。
■第2試合
仙薬は野沢、仙歯は及川という両エースの対決である。事実上の決勝戦とあって、第1試合とはうって変わって締まった試合になった。初回に点を取り合った後は両投手の好投が続く。仙薬が見事な三塁線へのセーフティーバントを決めれば、仙歯はこの日のために練習したピックオフプレーで2塁走者を刺した。観客を唸らせる試合は、4回を終わって仙薬が3対2とリードしていたが、仙歯は5回の表、宮内の3塁打と千葉のタイムリーで1点を挙げ、ついに同点に追いついた。しかし5回裏、1点取れば優勝の決まる仙薬の闘志は凄まじい。2番高橋が失策で出塁。3番野沢は死球を得た。野沢は痛がるどころか、欣喜雀躍して1塁に駆けた。4番追木の右飛で2塁走者がタッチアップして1死1,3塁。絶体絶命の仙歯は続く5番鈴木を敬遠し満塁策を取った。この状況ではいたしかたないとはいえ、満塁にすると投手の腕は縮む。筆者は草野球で満塁策が成功した場面を知らない。ストライクゾーンのど真ん中を狙った次打者への1球目は、半ば予想された通り、打者の背中のど真ん中を直撃した。あっけない押し出しサヨナラ劇。この瞬間、仙薬は2勝となり、2年ぶりの優勝が決まった。
■第3試合
すでに優勝は決まって、仙医と仙歯の銀メダル争いになった。仙医は松井、仙歯は洞口の先発で始まった。第1試合のふがいなさに激昂した佐藤(徳)監督は、今年はノーサインでやってきたがこの試合からはサインプレーで行く、と宣言した。監督の剣幕に震え上がった、もとい、奮い立った仙医は、初回1死1,3塁から安藤が2塁打でまず1点。次打者佐藤(韶)の安打でさらに1点を追加した。ところがなんと安藤が2塁から3塁に走った際、左下腿に肉離れを起こし無念の交代となってしまった。さらに1死1,3塁で1塁走者佐藤(韶)が2塁へスタート。タイミングは楽々セーフであったので、仙歯の捕手宮内は送球を諦めた。ところがあろうことか、鉄人・佐藤は2塁ベースの5メートル手前で足がもつれ転倒してしまった。しかも起き上がれず、這うようにして2塁に向かっている。これを見た宮内は慌てて2塁に送球。佐藤は2塁寸前で憤死したが、安藤の代走河村がこの間に判断よくホームを陥れた。転倒は3塁走者を生還させるための頭脳的プレーにも見えたが、佐藤も足を負傷したというので頭脳はあまり関係なかったようである。この3点は死守しなければならない負傷の代償だったが、情けない事に仙医は3回裏に5安打を浴び5点、さらに4回裏に2失策と3安打で4点を奪われ万事休した。監督のサインは誰も見ていないようであった。
台風接近で心配された天候であったが、選手の熱気が雨雲を吹き飛ばし、第3試合の途中には青空さえ見えてきた。暑くなく寒くなく、風もない。絶好の野球日和となったのである。こういう日に優勝した仙薬ばどんなに気分が良いことであろうか。
表彰式、懇親会は仙台国際ホテルで行われた。今回を入れて、優勝回数は仙薬6回、仙医9回、仙歯9回と拮抗してきた。組織的な練習を積み、阿部(精)に「実力の仙歯」と煽てられて久しい歯科医師会は5年間優勝から遠ざかっている。若手が増え、「潜在力の仙薬」と評された薬剤師会は着実に力をつけて、ここ5年間で3回目の優勝となった。優勝回数で並ぶのも時間の問題であろう。
25回の節目ということで、この大会の発展に寄与してこられた仙医・佐藤(徳)、仙歯・岡部恭、仙薬・狭川春芳の三氏に感謝状が贈呈された。医師会、歯科医師会、薬剤師会の連携・協力がうまく行っている点では仙台市は全国でも稀有の例である。この野球大会がその一助になっているとすれば嬉しい限りである。
2連敗した仙医はカラオケ大会で雪辱を図ったが、これも仙薬の芸達者達の前に玉砕した。今日の仙医にはよいところがなかった。唯一輝いたのは優勝杯返還のシーンのみであった。負け試合の講評を書くのは実に筆(キー)が重い。
さて球界注目の板垣は、本日も2打数無安打、3死四球、3盗塁、5失策と活躍し、「年間無安打の盗塁王」という怪記録への道を驀進中である。盗塁の1つは牽制球に釣り出されたと見せてのディレードスチールであった。今年は残り3試合。記録の達成される歴史的瞬間に是非立ち会いたいものである。
大ファウル 打って見上げる いわし雲
(文責 宮地辰雄)