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2007年04月22日 | 保険
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4月22日(日)

最近の生保雑感

● 先日「日本興亜損保」の株価がM&A絡みで上昇した。一気に1000円台となったのだが、今後はこういう動きが損保銘柄では出てくるのは避けられないだろう。損保業界は此までの10年で日本における合従連衡はひとまず落ち着いた。これからの10年は外からの「M&A」対策が不可欠の10年間だ。

● 今更説明するまでもないが、損保株主の外国人保有割合は総じて増加傾向だ。中には国内損保首脳が「友好的関係であくまでも投資目的と聞いている」と、とてもお気軽な発言をしていたが、果たしてそうか。とかく利益率が高いとされる日本の損保をいつまでも外資系保険会社が指をくわえて見ているとは考えにくい。

● そもそも株式上場をしたら「誰にでも株主になる権利」が生じるわけで、その保有が高まれば高まるほどいろいろな制約が企業側には出てくることになる。もちろん株式を購入するたびに「経営には一切関係しません」と言うような念書でも書くならともかく、そんなことはあり得ない以上、今後手のひらを返すようにいろいろな仕掛けが起きる可能性はゼロではないのだ。否、極めて高いとも言い切れる。

● ところで、損保は株式上場しているだけにこの手の話は生臭くなるが、目を転じて「生保業界」となると、混沌としてくる。「19年度版・日本の生保業界の真実」の91ページを見ると分かるように「グループ毎総資産一覧」は既に(図表④ーB)のようになっている。
 つまり「かんぽ生命」が民営化されたら「日本生命の50兆円」の上に「114兆円」と予測される「かんぽ生命」がランクされることになる。当然のことながら「総資産一覧」が流布されるたびに「総資産評価」は高まることになる。

● 当然のことだが、金利上昇局面では「規模の優位性」がはっきりとなる。それが如実になるのが「国内生保では『配当金』」だ。「19年度版・日本の生保業界の真実」でも取り上げたが、マスコミ的には「増配」を吹聴した記事が出たが、実際は生保間格差は明らかに拡大している。
 つまり、同じ保険に契約しても、A社は3万円、B社は0円という状態なのだ。しかももっとも良いはずの生保ですら「配当準備金」が比較的良かった平成5年に比べると、「日本:59%・第一:52%・明治安田:56%」にすぎない。
 3社より経営体力が落ちる「住友:19%・三井:22%・朝日3%」と言うのが実態だ。(「19年度版・日本の生保業界の真実」24ページ「図表⑫」)

● 俗な言い方をすると「持つものが勝つ」のである。となると、改めて91ページの(図表④ーB)を見ていただきたい。5位の●、7位の●、8位の●それに個社としては業績も今は悪くないがこれからの荒波に翻弄させそうな9位の●などは「M&A」の対象になりやすい保険会社だ。
 もちろん、日本の生保の場合は上場しているところが1社のため、友好的M&Aとなる可能性が高いが、経営体力が上位生保に追いつかないところは申し入れを受け入れないわけにはいかない経営環境になる可能性は高い。

● 一方、買い手となると、やはり1番手は「総資産6位のAIG」となるが、かなり株価も安定したことからすると、10年後の某保険会社の超大買収を考えるとここらでもうひとつ日本市場での存在感を強くしておきたいところだ。

 もう一つは「11位のアクサグループ」だ。以前は本国の不振もあり日本市場からの撤退も囃されたが、今は一転して買収側候補の1,2番手だ。もちろんここに至るまでにはいろいろな営業手法に対する批判もあったが、本国の他保険会社買収
さらには日本では「SBIホールディングス」との提携を考えると、じわじわと日本の保険市場(生保だけに限らない)への浸食を始めたと言って間違いない。

● ちなみに「ソニー生命」は「エイゴン」とヨリを戻した格好で「変額年金生保」を、また「アリアンツ」は「三井住友海上メットライフ」の協力で同じく「変額年金生保」を立ち上げる。さらには「ミレア」は、「JPモルガン」と提携して「変額年金再保険会社」を設立する。

● おわかりだろうか。各保険会社のシナリオには、フェース・トゥ・フェースの営業特に生保営業に対しては、やや諦め気味なのがはっきりしてきているのだ。
なぜか?


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4月21日(土)

● 「医療保険広告 不安あおるな」(朝日新聞)

 この見出しで今日の「朝日新聞」一面に囲み記事が出ている。早速「朝日新聞のHP」へ飛んだが、この記事が見あたらない。またよくよく記事を見ると最後に「くらしとマネー取材班」と記載がある。つまり、記事内容が広告などのスポンサーに気兼ねするケースでは、とかくマスコミでは使われる手だ。営業面からのクレーム対策と考えるとわかりやすい。

● 中身は、「厚労省は2月下旬に掲載されたある外資系生命保険会社のがん保険の新聞広告について、一定額以上の医療費を支払った場合に払い戻しを受けられる『高額療養費制度』の説明が一切なかったとして経緯をただした。」と言うものだ。「広告では、がんの平均入院日数と1日当たりの診療費の一覧表を載せ、医療費が計100万円前後掛かるかかることを示唆。その下に『実際は3割程度の自己負担になる』と注釈をつけているため、30万円ほどの負担をまかなうのに保険が必要との印象を与えていた」と、続く。

● この「高額療養費制度」については、以前の「読売ウィークリー」の医療保険特集のコメントでも「(かなり大変な病気でも)毎月の医療費負担は10万円程度で済む」と、書いたことがあったが、今やこの「高額療養費制度」を知らないで、保険プロとかコンサルティングセールスを自称する営業員や代理店はいまい。実際記事にあるように、1ヶ月100万円の医療費でも患者負担は10万円以内で納まるのである。

● しかも、最近の医療機関事情でだらだらと長期入院はさせてくれない。さらに言えば、今年の4月から「高額療養費の支払制度」が変わった。これまではとりあえず医療費負担の3割相当額を窓口で支払い、後で高額療養費との差額を患者サイドが申請すると言う少々面倒な手続きを要した。
 そのために、平成15年度・政府管掌健康保険の「高額療養費制度該当数は約179万件」だったが、還付を受けた人は約110万人で約69万人は還付申請がなかったという。
 ところが、事前に申請は必要も、4月からは3割負担から高額療養費分を差し引いた実費を医療機関窓口で支払えば済むようになったのだ。これで、100万円の医療費でも1ヶ月10万円足らずで医療費負担は済むことになる。 

● この「高額療養費制度」については、保険営業関係者は必ず知っておくべき「常識」と考えて「19年度版・日本の生保業界の真実!」の中でも4ページにわたって(39P~42P)解説した。
 
● 「19年度版・日本の生保業界の真実!」については、発行以来いろいろなメール等を頂戴しているが、何人かの方が見抜かれたように要は「医療保険分析誌」なのである。実は、かなりシビアな「医療保険関係」のものは別途まとめているので今回は表題をややソフトにしたが、指摘されたように一読すると「医療保険解説本」なのである。
 
● 例えば、生命保険の営業現場では今や「医療保険」の話題は必須条件だ。ところが膨大な保険契約がある「定期付き終身保険の80歳までの特約保険料の仕組み」すら知らないでは、話にならない。少なくとも契約者としては安心して任せられるわけがない。アバウトで下手したら100万円単位で損失が出かねない特約の仕組みすら熟知しないのは勉強不足である。
 ところがこれまで「定期付き終身保険の特約の多くが『更新型』だったこともまた80歳までの一括支払いのカラクリ」も丁寧にひもといた出版物は無かった。

● おそらくこの内容では一般書籍として店頭に並べても一般契約者には理解は難しいと思われるが、保険関係者には向こう数年は役に立つ1冊だと自負している。今回はどうにかいろいろな方の協力を得て最低部数発行までこぎ着けたが、完売したら部数的に重版はどうか実に悩ましい。
 と、悲観的になる一方、発行以来注文頂く先が少々変わってきている。税理士事務所と大型代理店からの10部単位の注文だ。もちろん何十カ所からと言うものではないが、全国ばらばらのところから、5部、10部15部というような注文が何カ所かから舞い込んでいる。
 読者対象を保険関係者としているため、税理士事務所の方からのまとまった注文にはやや驚きだが、時代の趨勢なのか。節税保険商品で振り回された税理士さんも少なくないということで、このような硬派の書籍を希望されたのかも知れない。
 
■ ちなみに指摘された広告を掲載した外資系保険会社名は、わたしのHPの「かわら版読者専用室」にその掲載日とともに書いておきました。
 
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4月20日(金)

● 「富国生命の二重契約奨励」問題を剥ぐ!=②=

● 昨日に続き「富国生命の二重契約奨励」の紐解きをしよう。昨日の最後のところにまとめてたが、各紙の記者を含めおそらく一般の読者もあれだけでは意味不明だろう。もう少しかみ砕いて説明しよう。

● 生命保険の営業員・代理店の取扱手数料は、現在加入している自社の生命保険を解約して新たに同じ保険契約をしても手数料は貰えない決まりだ。これを良しとすると取扱者は安易な取り扱いで手数料を稼ぐことが可能になる。もちろん何も知らない契約者にはメリットはない。

● ところで、加入している契約を「解約」して新たに同じ保険に加入し直すのと同じように、「定期延長保険」や「払済」あるいは「自動振替貸付」などに現在加入している生命保険を変更して、同じ保険商品に新たに加入し直した場合も、「解約」と同じように、手数料を支払わない規定にしてある生保がほとんどだ。もっとも規定はあるが、それを実施しているかどうかは各生保により異なる。

● 今回の「富国生命」のケースでは「保有契約高のかさ上げが目的」と言うことからすると「定期延長保険」に加入している保険契約を変更し、それと同じ金額の保険契約をすると、保険契約高はこれまでの金額と新規契約分で、契約者は新規分の保険料しか支払っていないにもかかわらず、契約高は二重に計上することができるのである。

● 「定期延長保険」をここで説明しておく必要があるが、これは、蓄積している解約返戻金を使い、それまでと同じ保険金額の定期保険を一時払いにして変更する保全契約の一つだ。こうすることにより、保険料を払わずに保障だけを確保することが可能だ。
 しかし、問題はこれまで付加されていた「特約」が消滅することと、蓄積している解約返戻金の金額により、その保障金額が満期まで持たないこともあり得ることだ。

● しかし、「富国生命」のケースでは、一時的に「保有契約高のかさ上げが目的」と言うことから、「定期延長保険」が”短期”でも良いことになる。もちろん新規契約にできるだけ多くの保険料を使うためにもこれまでの保険から解約返戻金などを移し替える必要があるため、「契約者貸付」を使い、その残りを「定期延長保険に変更」したものと考えられる。
 こうすることにより、保有契約高は同じ保険料でほぼ倍の保険契約高を計上できるのである。もちろん契約者のデメリットは少なくない。

○ 既契約の継続性を絶たれたデメリットーーー配当金、解約返戻金などの継続することによる得られる契約者メリットが消滅。

○ 新規加入によるデメリットーーー加入年齢による保険料損失(高い保険料に加入)、低い予定利率契約に乗り換え。

● もっとも、新聞紙上ではデメリットだけのように思われるが、唯一メリットもある。それは二重契約中に死亡(高度障害)した場合だ。そのままだと1件の保険からしか保険金は支払われないはずだったが、こうすることにより「延長定期保険の効力がある期間内」の死亡であれば、ダブルで保険金を受け取ることができるのである。もちろん、これは当てつけ的解釈だが。

● 一般的に、既契約を「延長定期保険にして同じ保障額の保険に新規加入させる」ようなことをすると、契約者の損失もさることながら取扱者のモラルも低下する。ただ、保険会社としてはどうかとなると、既契約の加入時によっては大きな損失とはならない。このやり方を毎年やられたのでは、契約の掛かる費用はマイナスとなる。しかし、それでも自然体でも「解約や定期延長保険などへの変更」はあり得るわけでその範疇内と捉えると、単純に「保険契約高のかさ上げ」をしたかったものと思われる。
 もちろん、このようなやり方で契約を計上しても取扱者には手数料が支払われない仕組みの生保がほとんどだが、今回の場合はこのようなことをしても「手数料を支払う」としたところに大きな問題がある。

● やはり問題は「取扱者の家族などに限る推奨」を行った点だ。これでは、「富国生命」の取扱者を家族に持ったら、まさに手数料は、”たこの足状態”となり、延々と保険料を支払い続け、唯一の契約者メリットは早く死ぬことになりかねない。まさか、「共栄火災しんらい生命」を買収したが、このような手で銀行窓販をやられたら契約者はたまらないから注意が必要だ。

● もちろん「富国生命」の問題は、これらの事実を隠蔽したことだ。特に支社長宛に指示ししかもその紙はコピーができないもので後でばれないようにしたかなり悪質な手法だ。ただ気になるのはこのような「手数料引き戻し規定の変更」については、組合との協議事項になっているはずで、果たして「富国生命の組合」は、当時どのような対応をしたのかが気になるところだ。
 単純に取扱者の手数料が増えるなら賛成、としたのであればあまりにもお粗末な決断と糾弾されるべき代物だ。

 これで、金融庁の処分が甘いようなら「契約者を騙してでも保険を取った方が勝ち」というのが生保業界のビジネスモデルになりかねないが、果たして処分はどうなるか!

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4月19日(木)

● 「富国生命の二重契約奨励」問題を剥ぐ!=①=

● 知りうる最初の報道は、18日付けの「読売新聞」で、「富国生命 客に不利な契約を指示」がその見出しだった。同日夕刊で「毎日新聞」が「富国生命、二重契約奨励」と報じ、19日の朝刊で「朝日新聞が顧客に不利な契約変更指示」「日本経済新聞が顧客に不利な保険契約」と見出しを付けて報道した。

● ここまでくると、さすがに「富国生命」からの何らかのメッセージがあるものと同社のHPからニュースリリースを探したが、今朝の段階では一切ない。ということは、03年7月~10月の5,943件に及ぶ「不適切な指示」による内輪の処分と同じく今回も内々にすまそうという魂胆か。

● はっきり言えば、これは今回の「不払い問題」より中身が悪質だ。保険契約の二条契約を会社として推奨したわけで、これはいわゆる「確信犯」である。おそらく記事を読んだ契約者はもちろん、保険業界関係者でも、富国生命が何をどのようにしたのかわかりにくいはずだ。このことは各紙の記事でも明確に説明がなされていない。

● 「読売新聞」によると「加入している契約を解約させそこから生じる解約返戻金を一時払い保険料として解約した保険と同じ保障内容の契約を結ぶ。顧客は一時的に2つの保険に加入することになり、富国生命の契約高はかさ上げされた」とするもの。
 ただ、これは考えにくい。これまでの契約を解約した時点で契約高は消滅するシステムから解約した保険契約高が瞬時たりとも計上されることはない。もしシステムまで解約契約を一時的にせよ計上させることを仕組んだしたらこれは現在の各社の契約業績の信用を失う重大事だ。
 余談だが、せいぜいあるのはどうしても今月の数字が欲しいことから「〆切日のシステムがトラブルを起こし契約の入力作業が物理的にできなくなったことにして締め切り日を1日延長した双方とも有名な国内生保と外資系生保の例」はある。まあ、この手の話は掃いて捨てるほどあるからそう問題ではない。

● 「毎日新聞」の場合は「既存の保険の金額を維持したまま期間を短くすることで契約者の負担を軽くするのと並行して、新しい契約を結ばせていた」とある。しかしこれも意味不明だ。期間を短くすることで保険料負担が大きく軽減されるならともかく、いわゆる契約者は同時に2つの保険契約に加入していただけで、これではそもそも契約の違反とはなりがたい。

● 「朝日新聞」では「既存の契約を『延長保険』として同じ保障内容の短期間の定期保険に変更させる一方で、変更で生じた返戻金などで保障内容を下げた別の保険などを契約させていた」とある。少なくとも単なる「延長保険変更」では、変更で生じた返戻金など生じることはない。

● 「日本経済新聞」は、扱いの分量も他紙より最も少ないが、「同社は保険料を安くしたいという顧客に既存の契約を一定期間残すとともに、同じ保障内容の保険に新たに加入し直すことを勧めていた」とある。

● おそらく各紙の記者は、直接「富国生命の広報」から取材をしてそれをまとめたと思われるが、もっとも肝心なところはどの新聞も掴み切れていない。1紙毎の取材では自ずと「分からないところが分からない」取材になることが多く、よくある記者会見等とは異なり、疑問点が明確になりにくい。

● では一体何が「富国生命」では行われたのか。
 もちろん推測の域は抜けないものの、おそらくこれが本星だろう。少々一般の契約者には分かりづらい話と思われるが、こうだ。

■ これまでに加入していた保険契約がありそこには「解約返戻金と配当積立金」が蓄積している。そのままの継続では「富国生命の保有契約高」はそのままだ。そこで、「解約返戻金から契約者貸付を、配当積立金は引き出し」を行い相当額を契約者は手にする。この解約返戻金等で新規契約の何年か分の保険料に充当し、これまでの保険は「定期延長保険」にする仕掛けだ。

 これを理解するためにはもう少し説明をする必要がある。続く。


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