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この平穏退屈な日々にもそれなりに感動って在るもの。

骸骨ビルの庭

2015-07-04 22:52:20 | 私の読書日記
ちょっと久しぶりに宮本輝を読む。以前だいぶ凝って、かなりの宮本輝は読んだつもりだったけど、今回の「骸骨ビルの庭」は、大阪の十三に建つ戦前の建物、通称骸骨ビルを舞台に、戦災孤児たちを何人もそこで育てた男二人と、40代になったそこで育った子供たちの話。

さすがは、宮本輝、やっぱり深いいい話だった。加えて、小説に出てくる湊食堂のご飯がどれも美味しそうで、たとえば十五時間?かけて作るサバ味噌だったり、前日から作るポトフに主人公がよく注文する牡蠣のしぐれ煮。サバ味噌の日は、普段数ある定食が、その日だけメニューがサバ味噌オンリーになったり、ポトフの日があったり、その都度常連客が列をなすのだけど、読んでいて私もその最後尾に並びたくなってしまう。

めったに小説からノートに書き写すなんてこともないんだけど、なんだか強く心惹かれたのでノートに控えた。

以下、抜粋。

「人間は変われない生き物なのだ。自分の人生を決める覚悟は一度や二度の決意では定まり切れるものではない。何度も何度もこれでもかこれでもかと教えられ、叱咤され、励まされ、荒々しい力で原点にひきずり戻され、そのたびに決意を新たにしつづけて、やっと人間は自分の根底を変えていくことができるのだと思う。」

これまで、何度も自分のことを変えたいと思ってきたけど、やっぱりそんな簡単には変われるわけはなかったんだと教えてくれた一文でした。

宮本輝はやっぱり凄い本物の小説家だったんだったとあらためて。

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