戸越銀座出身の作家、星野博美さんの本「世界は五反田から始まった」を読む。どんな本だろう、五反田から世界が始まるってどういうこと??小学生の頃から、五反田TOC徳の市に通っていた私だけど、実はそれ以外には五反田のこと何にも知らない。むしろ、未だに川を挟んでどっち行けばいいんだか迷ってしまう街。。
この本は、著者の祖父が千葉から丁稚奉公で五反田の町工場にやって来て、やがて自分の工場を構え、ここで生活が始まっていく様子とその背景にある昭和、特に第2次世界大戦下、五反田、戸越銀座、武蔵小山がそこにおいて、どんな歴史を辿ったかについて詳細に触れている本です。真珠湾攻撃の後、日本で初めて爆弾が投下された街、それが品川なのだそうだ。なぜだったのか、それは直接はそこ(兵器や戦闘機など)に繋がるとは思えないような小さな部品を造っていた町工場が無数にあった場所だからだ。話は宮本百合子や、小林多喜二の小説など、それらが書かれた背景にも迫る。武蔵小山商店街の、今ではタワーマンションに囲まれた場所にひっそりとある慰霊碑について、中国残留孤児について(言葉は知っていたが、具体的にあまりよく理解していなかった)これまで知ろうとも思っていなかった、品川区における戦争の爪痕について、目から鱗の話が著者の緻密な調査と街や家族への深い愛情を持って描かれている。
近辺に住む者として、この話には大いに身をつまされ、改めて、戦争が引き起こした悲劇について、今一度自分に問い直してみたいと思った。