CRASEED Rehablog ニューロリハビリテーションとリハビリ医療の真髄に迫るDr. Domenのブログ

ニューロリハビリテーションの臨床応用を実践するリハビリ科専門医・道免和久の日記【CRASEED Rehablog】

『対岸の火事』ではない

2006-05-05 08:32:18 | リハビリ
リハビリ打ち切りの『除外疾患』に入ったから、ということで、一時的に安心されている方も多いと思います。また、リハビリ医療とは無関係だから、と対岸の火事と決め込んでおられる関係者も多いかもしれません。

しかし、よく考える必要があります。

最大でも180日という規定がある限り、患者さんが本当に必要としていても、リハビリ医療を拡大する医療機関は限定されるでしょう。それどころか、縮小する病院もあるようです。

そういう流れが、行く行くは除外疾患であってもリハビリ医療を受ける機会を減少させることにつながります。また、総枠で『制限』、個別に『除外』という分断により、『除外規定』に注意を向けさせることで、問題の本質から目をそらせていることに、気づきましょう。

今回の脳卒中が除外される、という疑義解釈にしても、改善の見込みがある場合、という注釈もついていて、最終的には各地域の社会保険事務局が判断するということになります。打ち切り制度と疑義解釈を同時に読むと『脳卒中のリハビリは180日までとする。ただし、脳卒中は除外される。ただし、改善が見込まれる場合のみ。』

リハビリしなければ悪化するが、リハビリによって維持される場合は? 改善が見込まれると確信して期限後も治療を続けたが、結果として改善しなかった場合は?

つまり、最後まで、あいまいにしておいて、疑義解釈の余地ももたせて、現場を不安と混乱に陥れています。経営も圧迫され、疑心暗鬼になった医療機関は、できるだけ安全な方向に逃げることも予想されます。

『打ち切り期限』が存在する限り、厚労省のダブルメッセージ、トリプルメッセージにより、リハビリ医療の機会はどんどん制限されていくことでしょう。

今回の制限がうまくいけば、医療のあらゆる分野で制限をかけてくるでしょう。大きな反発が生まれないように解釈不能な『除外規定』も設けつつ、但し書きでのダブルメッセージ。

もはや、リハビリ打ち切り問題は、リハビリ医療だけの問題ではありません。厚労省の方針を検証すべく、国民的議論を喚起すべき問題です。姑息的な『疑義解釈』や『但し書きスパイラル』で逃げられる問題ではありません。

人心を翻弄する官庁が、心の健康などと言う資格があるのでしょうか? 多田富雄さんが味わった絶望に共感すべきです。WHOではスピリチュアルヘルスまで議論されているというのに、嘆かわしい限りです。