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進むドル離れ。サウジアラビア、中国との取り引きに人民元とリヤルを使うことに

2016-10-30 | 国際

米国の『CNBC』が9月23日付で、中国がサウジラビアとの取引に人民元とリヤルが取引通貨になることを報じた。

同様に、中国はアラブ首長国連邦とは人民元とディルハムでの取引になることも伝えている。

この決定は9月26日から実施されることになるという。(参照:『CNBC』)

中国はサウジ原油の最大の輸入国で、日量の15%(110万バレル)が中国向けであるという。

その輸出が今後はドルではなく、人民元とリアルが取引通貨になるということだ。

この決定は、米国にとって手痛い打撃である。

サウジがこのような決定に至ったのも米国への信頼が揺らいだ結果である。

これは米国の「石油ドル本位制」の崩壊の始まりであると言える。

かつてあった米国とサウジの蜜月

米国とサウジの関係の始まりは1945年にF.D.ルーズベルト大統領とアブドゥラアジズ国王の間で前者のヤルタ会談の帰路に船上で両者が会談をもったのが始まりである。

その後、米国はサウジに安全保障を提供し、サウジは米国に原油を必要なだけ輸出する互換関係が確立した。

そして、サウジからの原油の輸出は全てドル通貨で行うという密約も交わされたという。

これがその後の「ドル金本位制」の廃止と共に「石油ドル本位制」の確立へと発展するのである。

世界で原油の需要が伸びれば、ドルの需要も増大するという仕組みである。

米国はイランとも同様に親密な関係をもっていた。

両国の関係は19世紀より確立されていた。

英国とロシアがイランを支配しようと企む中で、当時の米国は中立的な立場を保ち、イラン政府から信頼されていた。

1950年代にはイランは石油国有化を計画し、当時のアングロ・イラニアン石油会社を国有化した。

また、米国と英国が協力して亡命中のモハマンド・シャーを連れ戻すためにクーデターが遂行されて、モハマンド・シャーが王位に復権した。

シャーの政権下で米国は原油を輸入し、武器を積極的に輸出した。

その関係が1979年のイラン革命まで続くのである。

イラン革命の影響で米国はイランとのそれまでの関係を失い、中東での信頼できる大国としてサウジに一本化したのである。

そして、サウジがオバマ政権への信頼を完全に失うまでに以下のような出来事があったのである。

揺らぐサウジの「米国への信頼」

サウジが米国=オバマ政権への信頼を失うに至った過程で、次のような出来事があった。

以下、箇条書きにしてみよう。

●オバマ政権が「アラブの春」でムスリム同胞団が推すムルシー大統領を支持するという挙に出たことにサウジは苛立った。

そして、サウジが支持するシシ大統領が民主的に選ばれていないと米国は批判してシシ政権への支援を色々と理由をつけて遅らせた。

●シリア紛争では米国は武力介入すると当初言っておきながら、その後戸惑いを見せ武力介入なし。

今ではアサド政権がロシアとイランの支援で勢力を取り戻していることをサウジは目のあたりにしてオバマ政権への不信を強めた。

●オバマ大統領の主導によるイランとの核協議の開始したことにサウジは激怒。

そして合意が結ばれて中東におけるイランの勢力が拡大する要因を作った。

それを懸念したサウジはシリア紛争では反政府武装組織への支援を増強し、イエメンではイランが支援しているフーシ派が勢力を伸ばしつつあるのを見て武力介入を開始。

その結果、イエメン紛争は長期化してサウジの財政を揺るがす要因のひとつになっている。

●サウジ在住のサウジの封建的政治体制を批判していたシーア派のニルム師を処刑。

この処刑にイラン市民は抗議してサウジ大使館と領事館を襲撃。

これが要因となってサウジはイランとの国交を断絶した。

●2001年のニューヨーク同時多発テロでサウジ政府が関与しているという疑いが発展して、米国議会はその遺族がサウジ政府に損害賠償を提訴できるようにした。

しかも、オバマ大統領はそれに拒否権を使用して承認を覆そうとしたが、議会は大統領の拒否権をも否認するという事態にまで発展した。

そして、遺族の一人は早速サウジ政府を提訴する手続きをした。

サウジはこの審議が議会で承認されれば、サウジは報復処置を取るとオバマ大統領に伝えた。

●米国ではシェールオイルの開発が進み、サウジから原油を輸入する必要もなくなるだけの量産ができるようになっている。

サウジからの輸入に依存する必要がなくなっているのだ。

これらのことで、築き上げられた米国=サウジの関係は、もはやドル離れに繋がるほどになってしまったと思われる。

ドル離れを決定づけたもう一つの要因

これらの要因に加えて、今回の中国との取引でのドル離れを決定づけたもうひとつ理由がある。

中国はイランの制裁下でも積極的に同国からの原油を輸入していた。

その関係から両国の信頼は厚い。

その関係もあって、サウジが中国に原油取引で有利な条件を提供しなければ、中国はイランからの原油の輸入を増やし、サウジからの輸入を減らす可能性があるからである。

しかも、現在のサウジは原油価格の長期下落で財政難にある。

サウジにとって一番の顧客である中国が原油の輸入をイランに軸を置くようになることは絶対に避けねばらないのである。

サウジのドル離れは湾岸諸国もそれに追随するようになる可能性がある。

米国の中東における影響力は8年のオバマ政権で一挙に大きく後退することになったかもしれない。

HARBOR BUSINESS Online 2016年10月16日

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言われてみれば、色々とそういったこともあったなという感想です。

1971年のニクソンショックによってドルと金の交換が廃止され、ドルはその価値の裏付けを失いましたが、変わって登場したのが「ペトロダラー」でした。

金に代わって原油がドルの価値の裏付けとなっていました。

原油はどの国であろうともドルで決済するというシステムです。

金との交換は停止されてドルが不換紙幣になったように見えても、実はこのドルは原油に裏付けられていたわけです。

経済に原油は必要不可欠な商品ですが、原油の需要が伸びれば伸びるほどドルへの需要が伸びるシステムをつくったわけです。

この強いドルが、アメリカの世界覇権への価値を担保していました。

アメリカの力の源泉のひとつが、原油をドルで決済する「ペトロダラー」の存在だったのです。

現在もまた金利を上げていくことによってドルの需要を増やし、強いドルを取り戻そうとしていますが、ペトロダラーが徐々に崩壊していきますと、アメリカの覇権への力が低下していきます。

アメリカもまたかつての斜陽化していったイギリス大英帝国と同じ道を歩んでいくのでしょうか。

国益と軍事力、この神の体(物質)を「天」においた覇権は、物質の属性の通り、100年ほどで「限界と有限(物質)」を迎え、終焉していくのかもしれません。

 

 

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