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箱根姥子温泉 秀明館 

2010年05月16日 18時21分44秒 | 神奈川のこと
箱根には、夏目漱石の『吾輩は猫である』にも登場する姥子温泉があります。

姥子駅に展示さている初代ゴンドラ 2007年に架け替えられた現代のものに比べると、ずい分小さく定員12人と思えないくらい小さいゴンドラです。しかもロ-プは1本、この日の少しの風にも揺れていましたので、現役運行時代は相当に揺れたことと思われます。この姥子駅から、歩いて数分のところに姥子温泉があります。

 
県道沿いの案内板 姥子温泉は800年以上の歴史をもつ古湯です。その昔、坂田公時(金太郎)が枯れ枝で傷めてしまった時、乳母が箱根権現のお告げに従ってこの湯で洗い、完治させたという古事からこの名がつきました。案内板の脇の道を少し登ると秀明館があります。


姥子温泉『秀明館』入り口 秀明館は現在は天山に経営が移行しています。古き良き伝統に現代の資本が投入され、リノベーションされて味わい深い日帰り入浴宿になっています。


緑の中庭 画像右の長く続く棟は日帰り入浴用の個室があり、その突き当たりに岩風呂があります。屋根の上に更に細長い小さな屋根がありますが、これはお風呂の湯気を外に出すための換気口です。中庭は緑豊かでベンチも置かれていますので、きれいな山の空気の中でゆったりと涼むことができます。 

         
名物の岩風呂 紫色がかった岩肌から温泉が湧き出て来る様は素晴らしい眺めです。温泉も地球のめぐみであることを実感させてくれます。脱衣スペースの段を降りると湯船、これが昔ながらの湯治場の構造なのでしょう。自炊用の「かまど」や釜もそのまま保存されていて、館全体が温泉博物館の様です。館内は撮影禁止なので宿のパンフレットの画像を掲載いたします。この画像の岩風呂は、現在の「天山」経営に移る前(リノベーション前)のものです。


中庭から見上げると、宿の屋根のはるか上にロープウエイがゆったりと運行しているのが見えます。


   
   僕が昔、姥子の温泉に行って、一人のじじいと相宿になった事がある。なんでも
   東京の呉服屋の隠居か何かだったがね。まあ、相宿だから呉服屋だろうが古着屋
   だろうが構う事はないが、ただ困った事が一つできてしまった。というのは僕は
   姥子へ着いてから三日目に煙草を切らしてしまったのさ。諸君も知ってるだろうが、
   あの姥子というのは山の中の一軒屋で、ただ温泉に入って飯を食うよりほかに
   どうもこうもしようのない不便の所さ。そこで煙草を切らしたのだから御難だね。
  
                          『吾輩は猫である』 第十一章(最終章)より

小説の中では、苦沙弥先生の家に迷亭・独仙・観月・東風が集まり、ヴァイオリンの話をしている時、迷亭が突然姥子温泉の話を始めます。漱石が秀明館を訪れていたのか否かは定かではありませんが、“姥子というのは山の中の一軒屋で…”という雰囲気は今でも秀明館で味わえます。

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