親は偉い。
父親は不肖の息子を持ち、人生の理不尽に、黙って耐え忍んであの世に旅立った。
母親は不肖の息子を持ち、人生の理不尽に、文句も言わずに耐え忍んで生きている。
あ~。
さすが戦中派。国民学校の教育を受けてきた世代だ。
明治生まれの親に育てられた世代だ。
その生き方には何か一本筋の通った美しさがある。
父親や母親が口をそろえて、俺ら兄妹に語ってきたことだ。
昨日まで一緒に遊んでいた友達が、爆弾投下や艦砲射撃、そして機銃掃射でいなくなってしまう。
そしてやっと戦争が終わったと思ったら、今度は昨日まで遊んでいた友達が飢え死にでいなくなってしまう。
そんな時代をくぐり抜けてきたからこそ、俺らは人に優しくしたいし、一つものをみんなで分けたいんだと。
やっと私も還暦近くなって、遅まきながらそんな親の生き方の美しさがわかり、彼らを尊敬できるようになったのだ。
ある宗教の勧誘員がこんなことを言っていた。
「いけもとさん、てつこう君は、今、生意気にこんなことを言っているが、子供は逆立ちしたって親にはかなわないんだからね。」と。
その宗教に入信することはなかったが、彼女の語ったことは本当だったと痛感する次第である。
以上、いけもと。