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クラヴィコード徒然草ーLife with Clavichord

チェンバロ、クラヴィコード製作家 高橋靖志のブログ
製作にまつわるあれこれや猫との暮らし、趣味のオーディオについて

響板の裏側

2013-01-17 08:19:20 | Instruments

ブリッジを間にはさんでレストプランクと反対側にリブ、さらにリブとレストプランクとをつなぐように3枚の薄いリブが配置されています。クラヴィコードのリブ入れ方は非常に多様で、Hubert (Christian Gottlob, 1714-1793) では現存する楽器のリブの配置や本数がすべて違っているほどです。このSilbermannではブリッジから響板にかかる弦の圧力を分散させる役割を重視した入れ方と考えられます。


ローズの裏側。小さく切った羊皮紙とニカワで接着しました。


ブリッジの高音側の端とライナーとをつなぐように羊皮紙を貼り付けています。これも弦の圧力で陥没しがちなこの部分を補強すると同時に、高い周波数の振動をボディに伝えやすくする役割も期待できます。

ブリッジピンの打ち込み、ローズ

2013-01-10 21:51:22 | Instruments
ブリッジピンの打ち込み終了。ピンの太さは高音部が1mm、中低音部が1.2mm、大型のクラヴィコードの高音部分はピンの間隔が狭いので細いピンを使います。


ローズ
私は、滋賀県長浜市の神照寺収蔵の華籠(けこ)の宝相華唐草文をモチーフに構成したものをオリジナルのローズとしてイタリアンチェンバロに使っていますが、今回は初めてクラヴィコードに使いました。唐草模様は今日では唐草風呂敷にみられるような純和風の意匠ととらえられていますが、そのルーツは西方の古代文明にあり、シルクロードから中国を経て日本に伝来したとされています。渡来文化の象徴としてローズにデザインしました。


ブリッジピンのマーキング(続き)

2013-01-09 00:31:11 | Instruments
先日紹介した方法でブリッジピンの下穴を明けるためのスティックを作ってみました。


穴明け終了。それなりに精度は出たようです。これまでは図面を重ねてマーキングをしていましたが、ブリッジの形状や位置にわずかでも誤差があるとピンの位置がずれるのが難点でした。今回の方法は多少ブリッジの位置が多少変わってもそれに追随した位置を割り出せるのが利点です。ただ、年齢相応に老眼の進んだ目に負担のかかる作業を続けたのでちょっと気持ち悪くなりました^^;


クラヴィコードのブリッジピンの位置のマーキング

2012-12-29 17:31:22 | Instruments
クラヴィコードのブリッジピンのマーキングの方法はいくつか考えられますが、なるほどと思う方法がありましたので、自分自身の覚え書きもかねて紹介します。

from the web page of the Russell Collection of Early Keyboard Instruments

The Pinning of the Bridge
Lance Whitehead in his paper to the First International Clavichord Symposium held in Magnano in 1993* showed that the clavichords of Hass were designed in such a way that a stick with regularly-spaced markings was used to mark the position of the pins on the 8' and 4' bridges. This stick was held in a position perpendicular to the spine of the clavichord and moved along over the area covered by the bridge on the soundboard. It appears that a line was drawn along the top of the bridge, probably while the top of the bridge was still flat and before it was given the typical slope. This line thus had a smooth shape which followed the shape of the bridge itself. The intersections of the markings on the stick with this smoothly-shaped line were nicked on the top of the bridge giving the position of each bridge pin in succession. The bridge pin holes were then drilled at the position of the nicks, the top of the bridge was sloped and the bridge pins inserted into the regularly-spaced holes thus positioned.

*See: Lance Whitehead, 'The laying-out of Hass clavichords', De Clavicordio. Proceedings of the International Clavichord Symposium/Atti del congresso internazionale sul clavicordo. Magnano, 9-11 September 1993, edited by Bernard and Susan Brauchli and Alberto Galazzo, (Istituto per i Beni Musicali in Piemonte, Turin, 1994) 111-21.

低音から高音までそれぞれの弦の間隔で印をつけたスティックをスパインに直角に保持し、ブリッジの上を移動させてブリッジ上面に引いたラインとスティックの印との交点に印を付けて行くとそれがピンの位置になる、ということのようです。棒に三角定規のような板を取り付けておけば、スパインに平行に保持しながら滑らせて行くことができそうです。大型の楽器では弦の間隔は均等ではなく低音は広く高音ほど狭くなっていますが、その位置を正確にスティックに移すことができれば、かなり精度よくピンの位置をマーキングできそうです。

leather covered tangent

2012-12-28 12:27:11 | Instruments
CDに入っているafter anonymous Italy, c. 1600 の音を聴いてみました。低音、中音、高音それぞれのトーンキャラクターは「修道士のクラヴィコード」ととてもよく似ています。若干柔らかく感じられるのは革を被せたタンジェントのせいでしょう。際立ってソフトというよりは柔らかめという感じです。Tournayさんから送ってもらったオリジナルの写真の中から、タンジェント部分を拡大してみました。

確かにタンジェントの先端に革のようなものが被せてあるのがわかります。先端を包むように折り曲げて止めてある部分に白いものが見えるので、糸かなにかを巻いて固定しているようです。
ブックレットには 、オリジナルの蓋には "spinetto celeste"「天上のスピネット」と書かれているとあります。革を被せたタンジェントの楽器をこのように呼んだのでしょうか?それともこの楽器の柔らかい音色を賞賛してこのように表現したのでしょうか?いずれにしても興味の尽きない楽器です。