クラヴィコード徒然草ーLife with Clavichord

チェンバロ、クラヴィコード製作家 高橋靖志のブログ
製作にまつわるあれこれや猫との暮らし、趣味のオーディオについて

ベルギーで

2013-09-30 12:20:29 | インポート
イタリアでのクラヴィコードシンポジウムに参加した後、ベルギーのクラヴィコード製作家ジャン・トゥルネイさんを訪ねて、数日滞在させていただきました。2009年のクラヴィコードシンポジウムでお会いした時に工房を訪ねるようにとのお誘いがあって、結局4年目にしてようやく念願がかないました。
5日間の滞在でしたが、トゥルネイさんには根気よく私の拙い英語に付合っていただき、また奥様にはいろいろと手助けをしていただいて、ほんとうに感謝しています。この場を借りてあらためてお礼を申し上げます。



トゥルネイさんのお宅には暖炉があって、もう薪を焚いていました。わが家でも薪を焚いているのでそのことを話して火の番を買って出ました。「ゆっくり燃やすことが大切なんだ」と、焚き始めも急に炎を大きくせず、温度が安定してからは太い薪を1、2本を1時間近くかけて燃やしていたことが印象的でした。

短い期間でしたが、多くのことを学ばせていただきました。具体的にすぐにクラヴィコードの製作に活かせることもありますが、時間をかけてじっくり発酵するように活きてくることがたくさんありそうです。持参した楽器を見てもらっていた時のこと、トゥルネイさんは、一つひとつのキーをそっと押してその響きを確かめていました。私がせっかちにそれも強めにキーを連打したら、「演奏する時にはそんなふうには弾かないだろう?」とたしなめられてしまいました。これは、日頃クラヴィコードの音をどのように聞いているかがバレてしまったようで、冷や汗をかきました。
トゥルネイさんはチェンバロを100台ほども製作した後に、自分にはチェンバロの強い響きは合わないとクラヴィコードに専念、これまでに50台のクラヴィコードを製作したということでした。より繊細な響きを持つ楽器に関わるからには、自分自身の音への感受性をより繊細に研ぎすましていかなければならないのは自明ではありますが、それをなおざりにしていた自分が見えてきた数日間でした。「君の職業はなんだい?」「君はなんのために楽器を作っているのかね?」という問いにたじたじでしたが、今回の滞在を通じてトゥルネイさんから出された宿題は、クラヴィコードの響きのどこにクラヴィコードの本質を聴き取るのかという根源的な問いかけだったように思います。なんとか自分なりの答えを見つけてまた訪ねたい。帰国後2週間が過ぎて思うことです。

Spinetto Celesta

2013-09-27 11:28:33 | Monk's clavichord
「修道士のクラヴィコード」のオリジナルの鍵盤蓋の裏側には"Spinetto celesta"と書かれています。天上のスピネットとでも訳せるでしょうか?このネーミングはこの楽器が革を巻いたタンジェントを備えていることと関係ありそうです。
そこで実験。中央のcとその1オクターブ上のcの2つのキーのタンジェントに、0.8mmほどの厚みの柔らかい革を巻いてみました。


予想通り高い倍音が消えて柔らかい音になります。ただc2の方は減衰がより速くなって物足りない気もします。全部のタンジェントに巻いてみないと楽器としての評価はできませんね^^; いずれ試してみたいと思います。




Magnanoのアルバム

2013-09-27 08:53:05 | Magnano
村の食堂兼ホテルに全員集合して夕食


村長さんのお宅でウェルカム・パーティー


シンポジウムの会場は村の中の教会


Lothar Bemmannのジルバーマンについてのレクチャー

「パンタロン」のアクション


オリジナルの「パンタロン」attributed to Georg Nicolas Deckert, Breitenbach, second half of the eighteenth century


左がパンタロンを持ち込んで演奏したMichael Günther

マニャーノ全景


メインストリート


路上チューナー


日本クラヴィア協会代表の宮本とも子さんのレクチャー


Menno van DelftがCPEバッハのDamensonatenの紹介と演奏

筒井一貴さんがデモンストレーションのための練習中


José Estradaのキーの減り具合からタッチを推定したレクチャー

主催者が用意したクラヴィコードの一つ


シンポジウムのコンサート

2013-09-24 17:15:40 | Magnano
最終日の9月7日に、Roman Chladaさんが「修道士のクラヴィコード」でオーストリアの作曲家Wolfgang Ebner (1612-1665)の長大なヴァリエーションを演奏しました。45キーの小さな鍵盤上を駆けめぐる速いパッセージの中にたびたび浮かび上がるテーマと、緩徐部分の消え入るようなピアニッシモが印象的でした。


会場のChiesa Romanica di San Secondoは、13世紀に建てられたという美しい教会です。



シンポジウムで

2013-09-16 14:39:35 | Magnano
シンポジウム後に立ち寄ったベルギーから昨夜ミラノにもどり、今日2週間ぶりに帰国です。
1日目以降の記事のアップもなく??と思っていた皆さま、お待たせいたしました。
と言っても最終日に飛んでしまいますが^^;
急遽日本から持って行った楽器についてプレゼンをすることになり、前日午後の遠足は行かずに部屋にこもって準備をしました。重いのではじめは持って行かないつもりだったMacbookを持って行ったおかげで、スライドを準備することもできて、約15分ほどのプレゼンをすることができました。宮本とも子さんの日本クラヴィア協会設立の報告のあと、筒井一貴さんが演奏。古い教会がクラヴィコードの静かな響きに満たされる様を想像していただけると思います。舞台衣裳とクラヴィコードの上のiPadにも注目です!