パリ在住のAkaeda Mikikoさんから、音楽学校に通う9歳の息子さんLuca君の様子を知らせるメールが届きました。
Akaedaさんからは、9月のマニャーノのクラヴィコード・シンポジウムの前に初めてメールをいただきました。Luca君がクラヴィコードをIlton Wjuniskiに習っていて、Wjuniski先生がマニャーノで発表すると知ってシンポジウムに参加してみたいとネットを検索、このブログを見つけたといういきさつ。結局、おたがいに今回は参加することができませんでしたが、その後も折にふれて近況を知らせていただいています。
Luca君は、日本の小学校4年生にあたるCM1という学年。フランスではCM1になると並行して音楽学校に通うDouble cursus(ダブル・カリキュラム)という制度があって、この9月からクラヴサンのコースに通い始めたそうです。
せっかくの楽しく貴重なレポート
なので、Akaedaさんの了解を得て紹介させていただきます
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お元気ですか。
Lucaの初めてのフランスの学校が始まりました。
ちょっとどんな学校なのか紹介してみたいと思います。
9月から始まったLucaの移動教室(本当の名前は、Double cursus,2重カリキュラムで、朝が小学校でお昼にバスで小学校の先生も一緒に音楽学校へ行く、移動教室です)、一ヶ月が経ちました。先週は、給食後に子供たちをのせて音楽学校に行くスクールバスが時間になってもあらわれず、先生が電話したら、今すぐ行きます、5分後に来ます!という返事だったのに、到着したのは2時間後、しかも理由が事故、とかではなく、ただ単に、バスの運転手が忘れてました、だそう。小学校から音楽学校まで市営のバスで20分なのに。。。
受け入れ先のコンセルヴァトアール(音楽学校)では、計画性が全然ないため、未だに子供たちの授業のプログラミングに難航しています。ソルフェージュと合唱は移動教室の子供たちだけを集めた合同授業なのですが、そこに、各個人の楽器の授業が重なってしまい、調整に3週間。 さらに部屋数がたりないので、楽器の子供たちは練習室の確保ができません。移動教室には、音楽、ダンス、演劇、とかいろいろあって、コンセプトは、「学業と芸術の両立、あくまでも学校の方が主体」で、音楽授業の無い時間は、音楽学校内の大部屋で小学校の先生が各自に合わせて勉強のサポート。練習室が確保できない状況であれば、子供たちは学校の勉強をするので、音楽の先生はあまり多くの練習を与えすぎない等、配慮しないといけないのですが、コンセルヴァトアールの先生方には、学業優先のコンセプトはあまり理解されていないようです。子供は学業と練習の板挟みで大変かと思いきや、そうでもありません。所詮まだ小学生なので、練習できてない、とか宿題終わってない、とか、慣れっこです。
Lucaにとっては初めてのフランスの小学校で、最初のうちは、万年筆書きにも慣れておらず、ちょっとでも字が汚いと、先生が、はいっ!やり直し!といってページをべりっと破ってしまうのがかなり怖かったようです。しかも、みんなの字があまりにも汚いと、先生のご機嫌は急降下、「なんですか、これは豚の字ですか!!」「はえの足で書いたような筆跡!!」とか、ヒステリー気味に。でも、そこに学校用務員の方が入って来て、「このクラスの生徒たちは朝みんなきちんと挨拶ができています、すばらしいですね。」とか言い残していくと、先生のご機嫌は急上昇、「あなたたちは先生の誇りです!」と、有頂天になるそうです。
給食はLucaの最も嫌な時間です。チーズが大嫌いなのですが、フランスの学校ですから何にでもチーズがかかってます。ひどい日には、前菜/サラダのチーズソースがけ、メイン/チーズグラタン、食後のチーズ盛り合わせ、デザートはチーズケーキ、でした。好きな物がとれるバイキング式なんだけど、これではお皿に入れる物が無かったようです。しかも、Lucaはぐずぐずしているので、別の日には、給食担当の先生がいらっときて、「もう、さっさとできないんだったらやってあげる!」といってLucaのお皿を手にとり、ドバーッと大嫌いなグリーンピースを。。。で、好きな鶏肉のところはとばされたものの、やっと好きなコロッケををいれてもらえそうになってラッキーと思ったら、大嫌いなグリーンピースの中にボンッと入れられる始末。
とはいえ、最近はクラスの中に友達ができて、結構楽しそうです。特に仲良くなったのは、アドリエル君という、トロンボーンで入学した子です。Lucaの話のなかに出てくる子は、男の子ばかりで、しかも、トランペットとかサクソフォンとかみんな吹奏楽器専攻。まぁ、Lucaも、チェンバロで入学したものの、本人が一番好きでやっているのは2年前に始めたオルガンで、オルガンも管に空気を送って鳴らす楽器だから、管楽器と言ってもいいし。管楽器の子供の練習室はガラス張りになっていて、移動教室の他の子供が勉強している大部屋のすぐ横で、スターウォーズとか、ピンクパンサーのテーマ曲を練習しているのが聞こえるそうです。
さて、Lucaは残念なことに、学校の終わるまでの時間内にチェンバロのある練習室を確保することができません。チェンバロの先生がいらっしゃらない日も、他の古楽器の先生の授業が、チェンバロのある部屋であるからです。ではピアノの部屋を、となると、ただでさえ練習室の足りない状況なので、ピアノ専攻の子供たちの練習時間が減ってしまいます。そこで、Lucaは、以前から習っているオルガンの先生が週に2回、お昼休みに1時間、教会の大オルガンを練習に確保してくださいました(実は週末も、ペダルに足が届きかねるLuca用に低いベンチを用意したということもあり、教会のパイプオルガンで贅沢に練習させてもらってます)。そして、チェンバロは学校が終わってから練習してね、だそうです。
それでは、またときどき学校の様子、報告します。お元気で。
Akaeda Kimiko