クラヴィコード徒然草ーLife with Clavichord

チェンバロ、クラヴィコード製作家 高橋靖志のブログ
製作にまつわるあれこれや猫との暮らし、趣味のオーディオについて

ドイツ・ハルモニア・ムンディ設立50周年記念限定BOX

2009-12-30 12:29:26 | Music
昨年出たときに買いそびれたCD50枚セットが再入荷との知らせ。ハルモニア・ムンディといえば、言わずと知れた古楽の名門レーベル。今回は機を逃すことなくgetできた
ドイツ・ハルモニア・ムンディ設立50周年記念限定BOX
まず一流の演奏家によるCDが1枚あたり100円ちょっとという破格の値段が魅力だが、こういう機会でもなければ自分で買って聴くことはなさそうな曲の比重がけっこう高いのもうれしい。古楽を知りつくした技術陣による録音も見事。



Anonymous c.1600 ボディーが完成

2009-12-23 21:17:53 | Monk's clavichord
一応ボディーが完成。

実際に形にしてみると、確かに小さい。長さが1mちょっと、幅は飛び出した鍵盤の部分を入れると36cmだが、それを除くと26cmほど。片手で軽々と抱えられる大きさ。
弦が29対で、張力の合計はざっと計算したところ約87kg。張力によるボディーの変形を抑えるための補強は、オリジナルにはない。普通は鍵盤の部分でボディーの上部を切り欠くところが、この楽器では下部を切り欠いて上部はつながっている。

Anonymous c.1600 図面

2009-12-02 22:10:52 | Monk's clavichord
仕上がり目前まで描いたところで気になるところが出てきて、消してまた書き直す作業の繰り返し。その中で、 図面に起こしたJean Tournayの目を通して400年前の作者の意図を推し量る。それは彼らとの対話でもある。そして自分なりに解釈してそれを製図用紙の上に再現するための方法を探る。
弦長以外のところは、現代の感覚では弾きにくくなりそうなところを少し直したり…自分のメソッドというかクセというか、今までのやり方で書き始めてしまい、後になって辻褄が合わないところが出てきて、どうにも寸法があわなくなったり…
完璧なコピーというか復元が目的ではない。難しいのは変えるべきところと変えるべきではないところの線引き。今まではown designにこだわってやってきたので、今回のような迷いが生じたことはなかった。ヨーロッパでは多くの製作家は必ずといっていいほど下敷になる楽器を元に製作している。コピー楽器という言い方もあるが、実際のところはかなりのアレンジをしている。彼らも変えるべきとところとそうでないところとの境界線で、先人たちと対話しているのではないかという気がしてきた。
Jean Tournayがクラヴィコードにまつわるエッセーを出版したという知らせが届いた。長い時間をかけて先人たちと対話を交わしてきたに違いない彼が、どんな境地にたどりつき、どんな想いで楽器を作っているのかぜひ知りたいと思う。それにはフランス語が読めないと…

とりあえずの結論は、アレンジは最小限にとどめて、400年前の楽器に込められた精神を感じとることのできる楽器にするということ。そもそも演奏という行為はその音楽の作者との対話の上に成り立っているが、バックボーンである楽器の作者とも意識、無意識を問わず常に対話を交わしているとも言える。楽器の持つ制約もそこに歴史的な必然性があるとすれば、それを受け入れることも演奏の重要な一部分であるのかもしれない。

一応図面ができたので、製作を開始。