クラヴィコード徒然草ーLife with Clavichord

チェンバロ、クラヴィコード製作家 高橋靖志のブログ
製作にまつわるあれこれや猫との暮らし、趣味のオーディオについて

クラヴィコードのブリッジピンの位置のマーキング

2012-12-29 17:31:22 | Instruments
クラヴィコードのブリッジピンのマーキングの方法はいくつか考えられますが、なるほどと思う方法がありましたので、自分自身の覚え書きもかねて紹介します。

from the web page of the Russell Collection of Early Keyboard Instruments

The Pinning of the Bridge
Lance Whitehead in his paper to the First International Clavichord Symposium held in Magnano in 1993* showed that the clavichords of Hass were designed in such a way that a stick with regularly-spaced markings was used to mark the position of the pins on the 8' and 4' bridges. This stick was held in a position perpendicular to the spine of the clavichord and moved along over the area covered by the bridge on the soundboard. It appears that a line was drawn along the top of the bridge, probably while the top of the bridge was still flat and before it was given the typical slope. This line thus had a smooth shape which followed the shape of the bridge itself. The intersections of the markings on the stick with this smoothly-shaped line were nicked on the top of the bridge giving the position of each bridge pin in succession. The bridge pin holes were then drilled at the position of the nicks, the top of the bridge was sloped and the bridge pins inserted into the regularly-spaced holes thus positioned.

*See: Lance Whitehead, 'The laying-out of Hass clavichords', De Clavicordio. Proceedings of the International Clavichord Symposium/Atti del congresso internazionale sul clavicordo. Magnano, 9-11 September 1993, edited by Bernard and Susan Brauchli and Alberto Galazzo, (Istituto per i Beni Musicali in Piemonte, Turin, 1994) 111-21.

低音から高音までそれぞれの弦の間隔で印をつけたスティックをスパインに直角に保持し、ブリッジの上を移動させてブリッジ上面に引いたラインとスティックの印との交点に印を付けて行くとそれがピンの位置になる、ということのようです。棒に三角定規のような板を取り付けておけば、スパインに平行に保持しながら滑らせて行くことができそうです。大型の楽器では弦の間隔は均等ではなく低音は広く高音ほど狭くなっていますが、その位置を正確にスティックに移すことができれば、かなり精度よくピンの位置をマーキングできそうです。

中古クラヴィコード

2012-12-28 12:47:21 | Information
商談中です(2013年6月10日)


2008年に製作したFF-f3 61keys fretted のクラヴィコードを販売します。長さは160cmと5オクターブの楽器としては標準的なサイズですが、幅が43cm、楽器本体の重量は22kgと、frettedとしたことで5オクターブの楽器としては軽量、細身になっています。これまで手元においてコンサートやレンタルに使用してきました。イタリア、マニャーノで2009年に開かれた第9回国際クラヴィコードシンポジウムで展示。コンサートやレクチャーで使用されました。
今年の夏に低音弦を巻線に張り替えました。イタリアの帰途に響板が破損したので修理していますが、修理痕はほとんどわかりません。
価格は75万円です。

この楽器のwebページ
http://www2.plala.or.jp/clavier/clavichord/clavichordFF-f3.html
筒井一貴さん演奏のビデオもあります。

イタリアでの様子はこちら
http://pub.ne.jp/clavier/?cat_id=132818

興味のある方はこちらへメールでお問い合わせください 。mail@clavier.m001.jp

leather covered tangent

2012-12-28 12:27:11 | Instruments
CDに入っているafter anonymous Italy, c. 1600 の音を聴いてみました。低音、中音、高音それぞれのトーンキャラクターは「修道士のクラヴィコード」ととてもよく似ています。若干柔らかく感じられるのは革を被せたタンジェントのせいでしょう。際立ってソフトというよりは柔らかめという感じです。Tournayさんから送ってもらったオリジナルの写真の中から、タンジェント部分を拡大してみました。

確かにタンジェントの先端に革のようなものが被せてあるのがわかります。先端を包むように折り曲げて止めてある部分に白いものが見えるので、糸かなにかを巻いて固定しているようです。
ブックレットには 、オリジナルの蓋には "spinetto celeste"「天上のスピネット」と書かれているとあります。革を被せたタンジェントの楽器をこのように呼んだのでしょうか?それともこの楽器の柔らかい音色を賞賛してこのように表現したのでしょうか?いずれにしても興味の尽きない楽器です。

製作中の楽器

2012-12-07 08:45:11 | Instruments
このところ更新が滞っていてスミマセンおわびに現在製作中の楽器の紹介を


Johann Heinrich Silbermann 1775をベースにしています。この楽器の一番の特徴は5オクターブの音域があるにもかかわらず長さが130cm台に納まっていること。5オクターブの楽器は160cm以上のものが多いので、30cmほども小さいことになります。このサイズの違いはおもに低音弦の長さによっていて、最低音FFの弦長がSilbermannは114cmで大型の楽器より20cmほど短くなっています。よりクリアで張りのある低音のためには、とうぜん弦は長い方が有利なわけですが、前回製作した楽器の経験から、巻線の太さの加減や響板の削り方で音量的には問題はないと言えます。
大型の楽器は最低音域のチューニングが小柄の人にはそうとうキツイ作業になるので、小型の楽器はその点では有利です。大型の楽器でも低音弦のチューニングピンを左側に持って来るという工夫も考えられるのですが、そうすると構造的に複雑になり、クラヴィコードの特徴である単純な構造がスポイルされることにもなります。小さいということもクラヴィコードのアドバンテージのひとつですから、可能な限り小さくとか、あるいは支障がないかぎり小さくというのも楽器としては面白いものになります。もちろん、たとえばFriedericiのような、たっぷりの大きさで余裕のある響きを持つ楽器も魅力的ですし、この次はそんな楽器を作りたいとも思っていますが。