四日間の滞在に
何度足を運んだだろう
義母がいる老人福祉施設
最後の日には
ここ数日の間に義母を撮った写真を
コンビニで焼いて
手渡しを兼ねて、今回の帰省を最後にと
立ち寄ったとき
これから、ボランティアさんたちが
慰問のステージを繰り広げようとする時間の
少し前だった。
集まる老人達の中に
義母を見つけ駆け寄った
写真を見せて
『もう出来んしゃったと?』驚く義母に
『もう、なんでん、すぐに出来っとよ』と
ウインクしながら手渡した。
『これから、踊りさー見ていきんしゃい』と言う義母に
『あー、ごめんね、もう帰らんばいかん時間とよ、空港にいかんばねー』って答えると
そこは、動けなくても母の顔になる
『じゃったら、こげんとこ来さされんと、はよーいかんばー、ほれほれ』って
可愛いことを言う
『良かよー、お母さんにこれを渡したかったとよ、また、来るけんね』
義母が
『ほんに、またすぐに、早よー時期に来てくれんとやろか』(ほんとに、またすぐに早い時期にきてくれないか?)
私は答えに困ってしまった。
『うんうん、出来るだけ、はよー来るようにすっとばい』
義母はうんうんとうなづきながら
『あんたも、元気にして風邪ばひかんでね』
『私は大丈夫よー。お母さんが一番元気でおらんと。洋服買いに行ったり、美味しいものを食べにいかれんごとなるから、気をつけて、元気でいてくれんと』
泣きそうになりながら、、、、。
最近の帰省の時の義母との会話は
いつも、義母の手を握りながら話している。
しかし、もう時間が来たようで
あたりは、慰問の人達でざわめき始めた。
『じゃねー、お母さん、また来るけんねー』
握っていた手をポンポンと二回
合図のようにして、手を離した。
小さく小さくなってゆく義母
ドアのところまで来て
振り返ると、また小さく小さくなる姿
何故、もっと早く
何故、もっとたくさん、お世話をしてやれなかったのだろう
物理的距離も
物理的時間も
無かったのは仕方がないこととは言え
やっと、この数年
私の気性が分かって
義母が体を委ねてくれるようになったのは
嬉しいことではあるけれど。
もっと喜ばしてあげたかった。
義母の娘達は
義母がこしらえた和服は一切要らないと言い放ったらしい。
義母がとても悲しい思いをしたのがよく分かった。
だから、今度は私にタンスから好きなものを取っていけと義母は言った。
私は、最後に義母に
『あの、可愛らしか着物を何枚か、私がもらっていくけんねー、良かねー』って伝えたとき
義母が細い目で笑った
『そーねー、良かよか、そーねー、良かったばい』
義母が大切にしていた和服は
私がもらう
そして、その中の一枚は、
義母に洋服に仕立て直してあげよう
武雄神社 大楠の御神木