幾たびも
これが最後だと言いながら
それは
まだ、その時はその時でなかったから言えたこと
菖蒲園の入り口に差し掛かる
小さな和菓子屋さんの横にあるカフェ
古い桜が
大きな幹を抱えながら
頑張って咲いているのを
ガラス越しに
コーヒー片手に見るのが
ここ10年ぐらいの
亡くなった両親と私とのお花見
また来年も見れるかね?
いや、今年が最後かもよ
そうした会話には
まだ余裕があったんだね
見せてあげたくても
見せてあげられない状況は
正直、桜の季節と言うだけ恨めしかった
桜の見られない季節を一巡して
次の年には
見せてあげたくとも
もう、2人とも居なくなってしまった
どちか片方がいてくれていたら
どちか片方の話ができるのに
一度に2人がいなくなるものだから
私は誰と思い出を語ればいいの?
あの時の桜が
その時は
最後の桜だとは
到底予想もつかないまま
そうして人は生きていくのでしょう
だけど
できることなら
大好きな桜をもう一度
見せてあげたかった
もう一度
もう一度
もう一回
もう一回
『ああ、綺麗やなぁ
ほんま、綺麗やゎ』
母の声を思い出す
『おかげさんで、今年も見れたゎ』
その声をもう一度聞きたかった
そこかしこ
あちらこちらに
母の言葉は転がっている
ときおり
私を幸せにもしてくれるけど
ときおり
こうして塩っぱい物も連れてくる
桜の花を見て思い出す
その、ひとコマ、ひとコマを
大事に抱えながら
歩いて行かなきゃね
まるでハーバリウムの中を
覗きこんでいるようだ
これが最後だと言いながら
それは
まだ、その時はその時でなかったから言えたこと
菖蒲園の入り口に差し掛かる
小さな和菓子屋さんの横にあるカフェ
古い桜が
大きな幹を抱えながら
頑張って咲いているのを
ガラス越しに
コーヒー片手に見るのが
ここ10年ぐらいの
亡くなった両親と私とのお花見
また来年も見れるかね?
いや、今年が最後かもよ
そうした会話には
まだ余裕があったんだね
見せてあげたくても
見せてあげられない状況は
正直、桜の季節と言うだけ恨めしかった
桜の見られない季節を一巡して
次の年には
見せてあげたくとも
もう、2人とも居なくなってしまった
どちか片方がいてくれていたら
どちか片方の話ができるのに
一度に2人がいなくなるものだから
私は誰と思い出を語ればいいの?
あの時の桜が
その時は
最後の桜だとは
到底予想もつかないまま
そうして人は生きていくのでしょう
だけど
できることなら
大好きな桜をもう一度
見せてあげたかった
もう一度
もう一度
もう一回
もう一回
『ああ、綺麗やなぁ
ほんま、綺麗やゎ』
母の声を思い出す
『おかげさんで、今年も見れたゎ』
その声をもう一度聞きたかった
そこかしこ
あちらこちらに
母の言葉は転がっている
ときおり
私を幸せにもしてくれるけど
ときおり
こうして塩っぱい物も連れてくる
桜の花を見て思い出す
その、ひとコマ、ひとコマを
大事に抱えながら
歩いて行かなきゃね
まるでハーバリウムの中を
覗きこんでいるようだ