湖のほとりから。

花と空と心模様を写真と詩と文に託して。

遠い日の記憶

2018-01-31 12:04:09 | 日記
その島が瀬戸内海だっていえるのかどうか
地図の隅のほうにあって
こじんまりと歩いて一周できるほどの島だった。

みんなで一緒に行こうと言い出したのは
友達の結婚式で知り合った者同士のたわいのない冗談からだった。

夏だから、海?
これと言って名物もないからとバーベキュー?
お決まりのように大きな荷物を分け合って
さて乗り込んだ小さな連絡船は
日に何度かの運航のみ
帰りの船に間に合わなければ運悪く野宿かもしれないと思うほど
野性味溢れた島とその周辺


海に入ってはワイワイガヤガヤと
若者特有のご近所迷惑も省みず
大きな声で騒いでいたかもしれないが、
きっと、それほど皆が日頃の鬱積を持ち寄ってきていたことは間違いない事実だっただろう。

バーベキューも終わり、話したい人とも話し、どこかのお見合い番組のような成り行きに、嫉妬したり、ほくそ笑んでみたり。

お目当ての人を目で追うことしかできない私は遠くで眺めているだけだった。

みんなには内緒で付き合っているということになっている彼と私
事実は数回の食事と電話で話しただけで
果たして相手の気持ちはどうなんだろうと
こうして遠くで眺めてはクエスチョンマークの形が頭の中を駆け巡る。

ガッリチとした体格に
似合わず気を回せるあたりを考えてみたら
沢山の人が彼を見ているのかとさえ思ったり。

もとより、勝算のない相手には
最初から近づくことは辞めておきたいタイプの私。
眺めているだけでいいんだと言い聞かせては、心の何処かで少しの期待をしては打ち消して、心の中は火の見やぐらのようだった。


付き合い始めても、彼のシャイな性格は、
こんな私にはこの上なく難しい。


そんな私のため息が暗い積乱雲を呼び込んだのか
今にも大粒の雨が降り出しそうに
空の色がどんよりしてきた。

早く連絡船にのらなくちゃ。
満杯になってしまってはこの先どうなるかわかったもんじゃない。
案の定、連絡船の船着場には大勢の乗船客が押し寄せていた。
乗れるか乗れないか!!


歩くスピードは徐々に小走りから疾走へと変わっていく。
みんなの顔つきが段々と険しくなってきた。

どうやら、海も荒れ出したようで
白波もチラホラ見え始めた。ヤバくない?

この島をよく知る人は早々と支度をしたのか、悠々と船に乗り込んで行く。
私たちはやっとギリギリの所で間に合ったことを喜んだが
外のむき出しのデッキ以外、居場所はなかった。


船が出発したそのあと10分程のところで
とうとう大粒の雨が降り出した。
船の下段に続く入り口あたりに
少し軒の出っ張ったところが数箇所
そこを見つけて雨宿りする格好になった
身を細くして雨にあたらないようにするのが精一杯。

それでも雨は勢い増し、もう濡れてもいいやと思った時だった。


『ゴメン〜、ちょっとここ、いいかな?』と、私のいる正面にくるりと身をかわし
軒を両手でつかんだ彼。
顔を私の方にむけて微笑んだ
大粒の雨を自分の背中に受けている
ん?
何をする?
私を雨から守っている?

だって〜、あなたが濡れてしまうじゃない!!

言いたい言葉を飲み込んでしまった。
こちらを向いている彼を見れないまま
下を向くことしかできないでいた。

やっぱり私のこと〜!!
体の中からジンワリと温かな湧き水が湧き出すようだった。

雨は一向に降り止まず
彼の背中から滴る雫が私の足元だけを濡らす。

私はこんな時、どんな顔をして
何を言ったらいいのですか?

これがあなたの答えですか〜?

ポーカーフェイス決め込んで
何食わぬ顔で背中で雨に打たれている彼。

これから先、私をこうしていろんな事から守ってくれるということですか?


船は強い風にあおられ揺れ始めたが
私の気持ちは高鳴って
グルングルンととてつもなく高く登って行きそうだった。

それと真逆に下しか向けない私の顔は
どんな顔をしていたのだろう。
やがて連絡船は出発したもとの港へと辿り着いた。


これから、下船だという時
彼から見下ろされた状態の私は
顔を上げるしかなくて
やっとの思いで『ありがとう〜』
ニコッとした彼の口元の歯の白さが
とても素敵だと
あらためて思い知らされた。



もう、あれから何年たつのでしょう
未だに連絡船しかない島がテレビに映った。
薄れていた記憶がこうして蘇ってきて
キュンと心が鳴いた。



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ストーブの前で‥

2018-01-26 09:47:44 | 日記
この底冷えのする寒い季節になると
台所の隅に置いたストーブの前に
しゃがみこみながら
本を読んだり
メールしたり
両手でコーヒーを飲んだりしながら。

さながら陽だまりに集まる小動物の一匹のようで
温かなオアシスに一変する。

時々はストーブの上には
ホワイトオークと桜のチップで
手作りベーコンが燻されていたりして

スモークの香りが漂うのだけれど
それにもまして
サラダのトッピングだったり
ポトフだったり
野菜スープのベースになったり
何をしょうかと
思い巡るのがたのしくなるから
それはそれで楽しみの残り香となるもの。

苦手な季節だけれど
ストーブの前のオアシスだけは
誰にも邪魔されない私の聖域となるから
夜ともなれば
1人で泣いてようが
笑ってようが
構いはしない。
最近は、泣きすぎてたりするけれど。


今までだって
ペタンと体育座りをして
家族を思い
自分のことを考え
友達を心配し
幾たびもの涙をぬぐい
幾たびの夜を一緒に越えて来たもんね。


この小さな小さなストーブは、
足回りから少しづつ
傷みが目立つようになってきた。


まるで自分のことのようねと
覗き込むと中の反射板に
いくつもの自分の顔を見つけ出す。


ふふって笑った顔さえも
それは、本当の自分なのかと
尋ねられているようだ。


今日の私は穏やかだろうか。
前を向いているだろうか。
心の引っかき傷は癒えているだろうか。


とにかく今日も
温かいものを作ろう。



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追伸

2018-01-25 20:40:30 | 日記
『ナデシコの花が咲きました
芙蓉の花は枯れたけど
あなたがとても無口になった秋に』


と、歌った『さだまさし』のグレープ時代の名曲 『追伸』
秋の歌だったんだー。


私は時代の観念があまりなくて
それはいつだったとか
1人のアーティストだったり
グループだっりを好きになると
とにかくさかのぼる、遡る。


そのせいか
その人のいつの時代の歌なのか
さっぱりわからなくなって
自分が好きならいいやとなってしまう。


この曲『追伸』
最後に
私、髪を切りました、、、と結んで終わる。


あなたに失恋したのですよって
女々しいことを書いたり聞いたり
色々したけれど
結局、私、髪を切ったのですよと。



この歌は
いつも、私が美容院に出かけ
髪を切って出て行くとき
いつの間にやら、口づさんでしまう歌で。


美容院は、女性が女性らしくありたいとき
または、気分を変えたいときに
あえて行きたい場所なのだと思うのです。


そして繋がりで
私は、今日、髪を切ってきました。
なんの失恋もしていないけれど
まさに、『私、髪をきりました』


追伸
グレープ解散って76年だったんだー。
それが私にとって不思議と衝撃だったりしました、あらためて。



全国的に寒い中
夕焼けが綺麗で大きくて
私の住む街からでも
富士山が今日は綺麗にみえました。




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夕焼け前の寒空

2018-01-24 17:42:52 | ポエム
夕焼け前の寒空
見上げた先には雪雲かしら


あちらこちらで
冷たい風が吹いているよう


ピンと張り詰めた空気は
夜だけのものではなくて
もう夕方から始まってきてるのね


さぁ、帰ろう
用は済んだし


誰も待ってもいないけど
部屋を暖めてあげたい


誰もいない部屋で
花がたくさん飾られた場所にむかって
ただいまって声をかける


『今日も寒かったよー』って


明日は
またどこかで雪が降るみたい


銀世界を喜んでいたのは
私の幼い頃と
もう一匹
いなくなったシェパードだけだったかもしれないね


今頃どうしてる?


手に繋がってるリードの感触って
まだ、覚えているよ


みんなみんな
お空に帰っちゃって


今は、
私、1人だよ





コメント (2)
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久しぶりの日本酒

2018-01-23 23:47:47 | ポエム
さして強くもないのに
日本酒を飲む

嫌いではないの
むしろ
美味しいとさえ思う

けれど
少ししか飲めない


少ししか飲めないのに
飲みたい夜がある


舐めるように
少しづつ
唇を濡らして
透明な芳醇の水を
確かめるように
絡め取るように


安い女でしょ?って
いつもの冗談言いながら


ほんの少しで
酔えるなんて
早技にもほどがあるでしょ?

けどいいの

今日は早く眠りましょう
指を絡めたくなる前に





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