じいたんばあたん観察記

祖父母の介護を引き受けて気がつけば四年近くになる、30代女性の随筆。
「病も老いも介護も、幸福と両立する」

祖父母とわたしの、かかりつけ医のこと。

2005-09-27 03:15:57 | 介護の周辺
祖父母のかかりつけ医は、
わたしにとってもかかりつけ医である。
主たる介護者の心身についても、親身になって
面倒をみてくださる、そんな先生だ。

この先生がいてくださるから、頑張れる。


笑顔がとても素敵な、女医さんだ。
地域でも信望篤く、在宅医療を支援する往診にも
毎日、診察の合い間に出かけていらっしゃる。

専門は神経内科(脳神経外科の、内科版)なのだが、
今は内科医として開業されている。

午後の患者さんたちは往々にして、
往診に出かけてしまった彼女の帰りを一時間以上待つ。
だが誰も、それに不満げな顔ひとつみせず、
待合室で待っている。

みんな、先生に診てもらいたいのだ。



今日、祖父の通院のついでに、受診してきた。

今までは、軽い睡眠導入剤その他、必要なものを
処方してもらっていたのだが、
休んでもなかなかよくなる気配がないので、


これ以上、あの多忙を極める先生の手を煩わせるのに忍びなくて
(内科の再診料で、きめ濃やかに対処してくださるのだ。
 して頂いていることに見合った報酬を、
 お渡し出来ていないのではないかと思うと、
 辛くなってしまった)

今日は、どこか先生が信頼している精神科医を
紹介してもらおうと、そう思って、先生を訪ねたのだ。


でも、先生は、わたしがその話を切り出す前に、
先に察したのだろう。
さりげなく、こんな風に、話を切り出してくれた。


「たまさん、あのね。
 焦る気持ちは、分かるけれど
 それでも、とにかく休みなさい。
 ココロを鬼にしてでも、休みなさい。

 今、たまさんに必要なのは、
 自分に出来ることには限界があるのだということを
 正しく認識するということなの。

 そして、あなたには、それを自力で成し遂げられる力が、
 私はあると思うのよ。

 何もかも放り出して休んだって、後で取り返せるのよ。
 今は、とにかく眠りなさい。休みなさい。 
 そして、不安なときは、遠慮なしに訪ねていらっしゃい

 あなたに精神科への通院が必要だと思ったら、
 すぐ紹介するからね。
 …でも、大丈夫よ。私の指示を、落ち着いて、守って」


…うれしかった。
先生に、お世話になっていて、いいんだ。
そう思うと。うれしかった。

そして、先生が「大丈夫」って言ってくださると、
大丈夫なような気がするから、不思議だ。


この先生は、女医さんで、お子さんもおいでで、
…頼りがいのあるお姉さんの顔と、母親としての顔が
ときどき、ちらつく。

先生が、真剣にアドバイスしてくださるお気持ちが
ふとした瞬間に伝わってくるとき、

いい医師に巡り合った幸運に、限りなく感謝する。


明日は、祖母の見舞いに行く。

「焦らないで。頑張らないで。」
という言葉をお守りに、祖父と二人、出かけてこようと思う。