TREK&RIDE

山と自転車!

火打山/山スキー

2007-04-10 | 山スキー
2007年4月7日 火打山

雪不足と言われながら、今年の2月3月は山スキーを存分に楽しむことができた。
さて4月。標高の低い山はそろそろ幕引きのようだが、白馬や白山などに通じる道路はまだ冬季閉鎖中。北アのビッグな沢地形コースはこの時期雪崩が怖いし…。
金曜日、仕事を終えて行先を思案するが、なかなか目当ての山が決まらない。
ただ頭の隅に「頚城」が引っ掛かっている…長距離ドライブにためらいはあるものの…行きたい時が食べごろと考えるべし、鉄は熱いうちに打てなのだ。
大急ぎで仕度を整え糸魚川を目指す。今回は北陸道経由。白馬経由より少し遠回りの435キロ。高速利用で5時間半だった。
0時50分。笹倉温泉の雪はすっかり消えていた。橋の手前まで進んだところで駐車。

4時起床。涙目のおにぎりは朝の行。
5時23分。出発。
橋を渡ると林道にはまだ雪が残っていた。スキーを履いて行動開始。
前回に比べて九十九折れの林道は雪も減り、ショートカットは困難な状況。林道に沿って前進する。

6時10分。
九十九折れを登りきり、大きくカーブを曲がったところで焼山から昼闇山の山々と「再会」。


その成り立ちに興味を覚える昼闇山の山容。


7時00分。アマナ平。

7時40分。北面台地末端。
今日も快晴。素晴らしい景色を目の前にして幸せ感が高揚する。ザックを下ろしてゆっくりしたいところだが、今日は行程が長いので写真撮影も控え目に先を急ぐ。


やはりこの景観は実に素晴らしい。


左が火打山山頂。遠いなぁ…

目指す火打山が遥か遠く感じる。前回北面台地に立った時には、僕にはとても登れる山ではないと印象を受けた火打山。本当にあの頂に達することができるのだろうか。

北面台地の雪は固く締まり、板が沈み込むことはない。ラッキーだ。ただ、トレースが全く無いのが僕を不安にさせる。
暫く歩いていると薄~いトレースを発見。更に進むと前日あたりに滑降したと思われる明瞭なトレースを発見。妙高方面から縦走されたのだろうか、滑降ラインのみで登高の跡は見られなかった。トレースが有るだけで妙に安心感を得てしまう。

8時05分。賽の河原。
予想通り深い溝だ。下の方に壁が低い地点が見られるが、引き返すのも億劫なので、滑降トレースを辿って溝に降り立ち、暫く溝の中を進む。程なくしてトレースは比較的低い壁に取り付いていたのでここから登り返す。今日のコース一つ目の「壁」をクリア。二つ目の溝はポイントを誤らなければ殆ど高低差は無く、3つ目の溝も特に問題は無い。溝の横断で注意が必要なのは一つ目だけのようだ。


今焼山が噴火したら泥流でイチコロかも…

二つ目の溝を通過できれば一安心。進路を焼山火打の山体に向けて北面台地をのんびりハイク。ちょうど焼山を正面に見て進むのでとても楽しく時間が過ぎる。
春の陽光の中で小鳥の囀りが台地を渡る。ふと耳を澄ますと大きなダケカンバを鳥がドラミングする音が響いていた。春の山には冬山とは違った明るさがある。


美しいもの。顔も気持ちもユルユルになります。

北面台地の前方ずっと先。雪面に黒い影?先行者がいるようだ。
台地上には登行トレースが無いのに、どこから現れたの???

8時50分。3つ目の溝に下ったところで大休止。ここで標高1,570m。まだまだ全然…だ。
9時00分。行動再開。
火打山へのコースとなる沢を目指して左に大きく回りこむ。
今日一番心配なのがこの沢。先日来の「花冷え」寒波で降雪があったので表層雪崩が心配だ。沢には左手の尾根から小規模な雪崩が多数発生していて小ぶりなデブリが押し寄せていた。デブリの無い雪面は立派なモナカ雪。いずれにしても歩きにくい。


この沢を登り上げてから影火打の沢に乗り換える


小規模でも油断できない

1段目の急登を登り終えたところで先行者の姿。単独のテレマーカーさんだ。
谷には20センチ弱の重い雪が乗っている上に、デブリと前日の滑降ラインで雪面が荒れているのでトレースを付けるのは大変だろう。追いついて手伝えればいいのだが、こちらはいっぱいいっぱい。何せテレマーカーさんの登高ペースが速いので全然追いつかない。途中からはシール登高を諦めテレマーカーさんの拵えたツボ足ステップを使わせていただいた。どうもありがとうございました。


焼山山腹越しに見えるのは昼闇山。


焼山東面はなかなかの高度感だ。

標高2,020mの影火打への沢へ乗り換える地点が近づくといよいよ斜度がきつくなる。おまけに上部のトラバース地点から発生した表層雪崩が斜面を荒らして雪の状態は非常に悪い。
あと少しで沢乗り換え地点という所まで達し、トレースに沿ってツボ足で歩いている時だった。
突然右足が雪の中で宙に浮いた。ヤバイ。クラックを踏み抜いた。右足を引き抜こうと左足を踏ん張ったら今度は左足がズボッ。これはヤバイ。一瞬血の気が引いた。ソロリソロリと体を動かし脱出できたが、運の悪い事にトレースがクラックに並行して付いているため前方に進んでも「口」が隠れているかもしれない。かといって後退もできない。雪面に四つん這いになり、なるべく体重を分散させて這うようにして数メートル移動。漸く安全地帯(?)に達した。新雪に覆われているため「口」が隠れていて全く分からないようだ。この後、もう一度隠れたクラックに足を奪われた。

10時23分。標高2,020m。
恐怖に怯えながら沢の乗り換え地点に達した。一気に疲れが出る。下山時にまたここを通過しなければならないと思うと不安でならない。
11時10分。標高2,270m。
クタクタになりながら影火打北の台地に達する。もう火打山はすぐそこなのに、体が動いてくれない。10分程大休止すれば回復するだろう。ザックを下ろしスキーを脱いで座り込む。


火打山頂はすぐそこなのに

11時18分。行動再開。
休憩のおかげで体が軽くなった。少し進んで影火打とのコルから南面に出ると妙高から高妻、後立山の展望獲得!やったぜ!
疲れた体にはこれが一番効くようだ。Winゼリー1個よりもごたての展望。


影火打から焼山へのライン

11時55分。フラッフラになりながら火打山頂上。
ずっと先行していただいたテレマーカーさんとご挨拶。お互い「疲れました」「疲れました」。

テレマーカーさんは飛騨山岳会の所属。遠くから背中を追っていた時は僕より若いお兄ちゃんに見えたのに僕よりずっと年配の方だったので驚いた。いろいろ山の情報を交換しながら山頂からの展望を楽しんだ。


眼下に見る北面台地。


お久しぶりです妙高さん。


金山と天狗原山(かな?)。背後にごたて。

12時28分。さぁて下山だ。
下山はテレマーカーさんと一緒に下山していただいた。僕は先ほどの沢での「恐怖」から下山に不安を感じていたので大助かりだ。テレマーカーさんは火打山頂からの滑降を楽しみにされていたでしょうから、ペースを乱しご迷惑だったかもしれません。


日暈

この日の火打山の雪質は最悪。山頂から影火打まではシュカブラとアイスバーン、沢の乗り換え地点までは重雪でコケまくり。そして問題の沢へ。

先日滑降された方がトラバースしたラインにはクッキリと破断面あり。そこから雪崩の発生跡が見て取れる。ただ、弱層は思ったより安定していた。
まずテレマーカーさんがさらに奥までトラバース、そして滑降。重雪と格闘しながらターンを重ねるのを見ながら僕は待機。そして次は僕の番。兎に角転倒しないように心がける。この際不恰好なターンになっても気にしない。

高度を下げるにつれて雪崩の危険性も感じなくなれば、滑りを楽しむ余裕が出てきたが、何せ餅のような粘りのある重雪なのでターンは全然決まらない。


沢をゆくテレマーカーさん

北面台地に戻ってくると緊張も解け、スケールの大きな焼山の景色に改めて感動。
写真を撮ったり会話を交わしたりしながら下ってゆく。


焼山を仰ぎ


火打山を振り返る

午後の時間帯で雪が緩く、表面は溶け出しているため、板は滑らずストックで漕ぎ漕ぎ進む。ほんの僅かな登り返しでも僕の板は止まってしまう。ここでテレマーカーさんパワー炸裂。僕が板をばたつかせて難儀している横をキュッキュッと軽快に歩いていく。
アマナ平まで、登り返しの度に遅い僕を待っていただいた。とにかくテレマーカーさんは速いのだ。
最後の林道歩きでも板の滑りが悪いため、歩くスキー状態で汗だくになる。時々「長いね」「疲れますね」と口にしながら黙々と下った。

14時45分。橋に無事到着。
テレマーカーさんとガッチリ握手を交わし火打山アタックの長い行程を終えた。体力的、精神的にとても疲れた山だったが、それだけ充実感も十分な山行だったと思う。

今回は2日間山スキーを楽しむ予定で出掛けてきたが火打山一日でもう十分満足。翌日は家でゆっくり休もうかと思ったが、天気予報をチェックすると晴れマークが…
マイッタ。このまま帰るわけにはいかない。
とりあえず焼山温泉でゆっくり湯に浸かりながら翌日の行先を考えることにした。