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長電話

~自費出版のススメ~

王貞治とイチロー

2009-09-11 | スポーツ
イチローの9年連続200本安打という大リーグ新記録の更新がまもなくです。大リーグでの2000本の安打のうち、内野安打が4分の1とか、単打が多いとか、大記録を揶揄する人も多いのですが、野球に内野安打というルールがある以上それは美意識の違いに過ぎず、だからといってイチローの記録が色褪せることはありません。

また、昔の日本の130試合で200本を打ち続けるのは難しいとか、試合数に対する記録の意義を問う人もいます(イチロー自身も言ってました)。しかしアメリカには時差があり、移動も長距離となり、その体調管理の難しさは日本の比ではない以上、試合数の多さはむしろ負担です。

同様に王貞治氏の本塁打の世界記録もまた、「日本の小さな球場だから」と大リーグとの比較を避けられます。王さんほどのホームランバッターは、ただやみくもに遠くに飛ばすことを考えているとか、ホームランはヒットの延長に過ぎないという認識の打者とは違います。狭い球場ならそれはそれで、広い球場ならそれもそれで順応・工夫し、求められる結果と自らの能力と照らし合わせながら、ここまでやればこの球場ではホームランが打てるという見切りをもってホームランを打っていたのではないでしょうか。

アメリカに渡ってホームランを諦めた松井秀喜が、謙虚に自分を限定し諦めることによって、有能ながら平均的なプレイヤーにモデルチェンジしてしまったように、「俺はホームランでいくんだ」という強い気持ちと意志がなければ、球場が狭かろうが広かろうが、記録は生まれません。ホームランは狙って打つものなのです。

イチローは「記録」を常に意識し、さらにそれを実現するというとんでもないアスリートです。トップレベルを維持し続けるという難しさを知っているという意味でも、13年連続ホームラン王の記録をもつ長距離砲の王さんに並ぶ実存をもった選手です。

負けることによる収穫もない

2009-09-10 | スポーツ
後半、はっきり試合をやめたガーナに勝ってうれしそうな岡田監督は、日本が負けている試合を見て文句をいうのが好きな私にとって不愉快そのものでした。岡田氏は不細工な上、声ももごもごしている典型的ないじめられキャラなので、誰もがサディズムをくすぐられます。それに森喜朗か総理についた時のような経緯で監督についた暫定感がいまだに拭えず、せっかく出場できるW杯を協会がなおざりにしているようで続投は残念、解任への世論も盛り上がりません。

移動を含む中二日の相手に大量失点し、動きの止まった相手にロートルの活躍で逆転と、カウンター対策も流れを読まないやみくもな攻撃への反省もないままのチームをどう評価すりゃいいんでしょうか。長友の成長以外収穫がない上、今後この間違った勝利が代表強化へ影を落とすことは、岡田監督の表情から見て間違いなさそうです。

「スーダン戦後、移動もあってチームは疲れていたが、それは言い訳にならない。日本はとてもいい戦いを見せた」とガーナの監督が余裕のコメントをしていました。日本は必死になって今のベストを尽くしましたが、ガーナにとってこれはエキシビションマッチなのです。

それにしてもガラガラの会場、日本のスポンサーばかりの広告と、試合以外の要素ばかりに目がいってしまいました。代表にとっても、見る側にとってもそれくらいお寒い内容だったのでしょう。

サッカーと外交

2009-09-09 | スポーツ
日本にとっての外交とはアメリカが対象であり、次に東アジア、3、4がなくてロシアと続くのですが、先進国の関心事は常に中東にあります。インド洋の給油問題など政争の具程度に考える余裕(?)のある国会を戴くということもあり、日本にとって中東は石油を依存しているにも関わらず関与への優先順位としては低く、ヨーロッパ諸国が北朝鮮に関心を払わないように、日本も実感をもって論点にあげることはありません。

これはサッカーにも言えて、日本国内で優雅で感傷的な試合をし続けていられるのは、トップレベルの実感としての情報が欠如しているが故で、そういう意味でいえば、地の利であらかじめ(圧倒的に)不利ということになります。

日本サッカーがダメなのは、サッカーに向いていない国民性であると言い切る人も多いのですが、Jリーグバブルの頃、ジーコを始めポンコツながらセンスを持つ選手を数多く獲得することによって飛躍的にレベルアップすることができました。一流選手と触れること、海外経験豊富な監督、コーチからもたらされる技術とセンスをもった指導、そして強力なライバルの存在がなければ選手は育ちません。つまり今は情報が足りないのです。

ただ、今や不況まっただ中の日本に、かつてのような往年の一流選手(今だったら例えば、ベッカム、トッティ、デルピエロなど)を呼ぶ余裕はありません。そうすると出口としては思い出されるのがオシムの言葉、「日本人の日本化」です。しかし岡田監督のチーム作りは「日本人の韓国化、欧州化」です。ベストを尽くせば敗戦の責は問わない日本人におもねる、という意味では、日本人らしい戦略かもしれませんが、このままだと展望はみえず、30年くらいたった後に、「日本代表の一番強かったのは中田のいた頃だな」ということになりかねません。

日本外交の一番良かった頃は、経済が一番良かった頃だとすれば、日本人は常にお金次第という烙印をおされても仕方ありませんね。戦略はフィットすること、戦術は二の次だと、いつになったら気付き、実践できるのでしょうか。

クライマックスシリーズの浸透

2009-09-08 | スポーツ
(黒江コーチと大久保コーチのいない)西武が楽天に抜かれ、さらに差を広げられていますし、セリーグでは阪神・広島がヤクルトを猛追しており、セパ共に3位争いが熾烈です。セリーグはちっとも負けてくれない巨人に、いくらがんばっても追いつけず、力尽きたかに見える中日と好調の阪神、ヤクルトと広島と、今節も見逃せない試合が組まれています。

これらが消化試合とならないのは、ご存知の通りクライマックスシリーズのおかげです。

以前パ・リーグで採用されていた、優勝しても「1位通過」扱いで、5割以下でもプレーオフで勝ち抜けば優勝、ではなく、1位にはちゃんと日本シリーズに出場できなくても「優勝」という冠をつけ、シリーズでは相当なアドバンテージの元で戦う今の制度は正しいのですが、一昨年は中日が2位から勝ちあがり、巨人の優勝の印象が薄くなり、渡辺読売新聞主筆のムカついた様子が報じられ、溜飲を下げつつも、気持ちは分かるなあ、と思ったことがありました。

これは選挙制度と同じで、どの制度も一長一短があります。選手層の厚いチームには有利な以前の優勝=日本シリーズ出場という単純な制度がいいし、後半に勢いがついてしまった今が旬のチーム、短期決戦に強い有能な監督のいるチームには今の制度がよいでしょう。

制度が定着し各チームも順応してきていますし、ファンにも優勝は優勝であるという意識が浸透してきているように思います。今年はどうみても巨人がペナントでも日本シリーズでも優勝する資格のあるチームです。中日はそれを目指しているがゆえに、去年も感じたシリーズでのダンディな遠慮が気になるところです。

オランダvs日本 親善試合

2009-09-06 | スポーツ
いくら日本がモチベーションが上がらない状態でもインドは日本に勝てないように、日本が調子の悪そうなオランダに勝てなくても不思議ではありません。

敵はオランダ、ベスト4常連チームですから、目標と合致するマッチメークとして理想的でした。ただオランダは本来の姿にほど遠いものだったにも関わらず、実況もマスコミもオランダの不調はスルー、あくまで強豪と「当たって砕けた」という論調で、リトマス試験紙としてのチームという扱い。本当は前半の健闘も大した事はないということなのを協会は気付いているのでしょうか。

ベストを尽くして疲れて負けたのですから、この戦いを奇禍とし、中心選手を換え戦術を練り直すか、あるいはW杯までの残り9ヵ月で、日韓W杯でベスト4の結果を残した韓国のような90分戦えるスタミナをつけるかが、この試合から導き出される教訓への回答ですが、岡田監督の試合後のコメントから聞く限り方針は後者のようで、今までやってきた保守的な布陣で愚を繰り返すつもりのようです。

日本は本田という新たなピースの登場により混乱していることを差し引いても、日本は弱いことがはっきり証明されたことは意義深いものではあります。ただ、オランダのゴールシーンをスローで見る度、彼等は実際にこのスローモーションのようにフィールドを眺めていたと思われます。

そうであったとしても、攻守の連動があった前半段階での本田、コウロキのプレーをもっと見たかったという試合ではありました。

戦い済んで、日が暮れて

2009-08-30 | スポーツ
野球は伝統の「巨人vs阪神」、首位攻防の「ソフトバンクvs日ハム」、Aクラス入りへに厳しい戦いの続く「西武vsオリックス」が台風にも選挙にもメゲず試合が実施されております。中日への戦い疲れか、間抜けな阪神ナインの顔に気合いが入らないのか、このところ好調の阪神、再び巨人に勝ち越す勢いで、現在奮闘(ハイビジョンでやってるし)しております。

中日が優勝する年は政界に異変が起こると言われていますが、先に政変が起こってしまったので、これで中日の優勝もしくは日本シリーズ進出がもう決まったようなものです(優勝と言い切れないのは、やはり理由はどうあれ今年の巨人は強いのです)。巨人は阪神の美形、能見を打てず、原はいつまでも落合コンプレックスが消えない今、かつて長嶋が「自民が負けて共産主義になると野球ができなくなる」といったように、自民と一蓮托生の阿呆ばかりの野球保守集団とみられていました。原監督の采配は相変わらずなものの、バランスのとれた人材配置により、強いチームを作ってしまったのは認めざるをえません。

選手時代から「阿呆扱い」の原だってコンプレックスによって、フロントに反逆しつつここまで盛りかえしてきたのですから、自民だってできないことはありません。安倍や漫画さんはじめ右翼的おかしな人ばかり残って、偏った政党になるのもよし、原に習って、親米右翼の真髄を示すもよし、捲土重来を目指してほしいものです。

一・三塁の衰退と、二遊間の隆盛

2009-08-28 | スポーツ
チューリップの「甲子園」という曲の主人公のセリフとして「ライトで8番だけど、レギュラー選手だった」という歌詞があります。長嶋・王が全盛で活躍していたその頃は、少年達にとって野球の花形ポジションは、彼等の守るサードとファースト。セカンドはちっちゃい子が、ライトはレギュラーの中では1番地味で下手な子が選ばれたものでした。

しかし最近の甲子園を見ていると、まさか中日の荒木・井端を意識してるのでもないでしょうが、二遊間にしっかりと鍛えられた選手が多く、今大会もセンターラインの優れたチームが強かったように思います。またイチローのおかげで暗い印象を払拭したライトにも人気があり、レーザービームもどきの捕殺も何度か見られました。高校野球は顔と名前が一致しないので、どうしても守備に眼がいってしまうのです。

言わずもがなですが、ショートは守備範囲が広く肩が強くなければ務まらず、野球の中で最も美しい動きをみせるダブルプレーを成立させるなど、連携も忙しく、それ故守備の負担が打撃に影響するとして強打者はプロになるとファーストやサードに移り、守備の専門家がつくケースが多いし、加齢とともにサードにコンバートされたりもします。

セ・パ共にAクラスの成績を残している各球団のショートはというと、井端をはじめ、坂本(巨人)、川島(ヤクルト)、小谷野(日ハム)、ムネリン(ソフトバンク)、中島(西武)、渡辺(楽天)と打撃成績も残している選手ばかりで粒ぞろいです。

指導者も世代交代しサード花形時代は既に終わり、二遊間時代が既に高校生にも浸透しているほど日本の野球は進化していることを再認識した夏の大会でした。

さわやかな高校球児の無気味な笑顔

2009-08-25 | スポーツ
花巻東の戦い振りや、決勝戦での日本文理の最終回での健闘など、見所満載、漫画のような試合展開が随所で見られ、高校野球ファンでなくても十分面白い大会となった今回の夏の甲子園。ただ気になったのは、選手の異様な笑顔です。

花巻東と2回戦で対戦した横浜隼人のとにかく何をやっても笑顔というのも無気味でしたが、明豊戦(だったかな?)で花巻東の菊池が二塁打で暴走してしまい、三塁で憤死・アウトになったのに、やはり笑顔でベンチに戻り、まるでホームランを打った後のようなベンチの盛り上がりも奇異な風景でした。

もちろん菊池選手の場合は、志気を低くしない前向きな態度と捉えることもできますし、チーム自体、元気そのものというカラーでしたから、のべつまくなしに笑っているような学校とは違います。ただ、あの失礼なガッツポーズとともに「笑顔」「前向き」という姿勢・態度が、よいもの、選手の力を高める効果として催眠術のように使われ、蔓延しているのは選手のマインドを侵してるんではないかと少々心配ではあります。

これはチーム毎に傾向が違うので(日本文理や岐阜商は渋かった)、セルフコントロールの専門家が笑顔過剰なチームにはついていて推奨、指導しているのではないかなどと疑ってしまいます。そうでないとしても、口惜しいときは口惜しい態度をとる自由を奪っているとしたら問題ですね。

祝 楽天イーグルス3位浮上

2009-08-21 | スポーツ
この時期に楽天が順位表で3位にいることにまだ目が慣れません。ドラフトが採用されている現在、そこそこの戦力均衡が計られ、連覇するチームも少なくなり、どのチームが浮上沈下しても不思議ではなかったのですが、出自の複雑さもあって楽天はいわゆる、今では珍しい「お荷物球団」で、常にBクラスが約束されたチームだったからです。

気合いの入らない西武、オリックス、ロッテのいるパリーグにあっての3位ではありますが、昨日5割に戻したこのチームの戦力と野村監督の手腕が反映されたものであることは間違いありません。

この結果は、去年の巨人の大逆転優勝の例を待つまでももなく、4月から6月にかけての序盤の戦い方がシーズンを通したチームレベルと判断することが、いかに迂闊なことかということを思いしらしてくれます。

優勝は難しいにしても、岩隈、田中がいて福盛が安定してきた今、クライマックスシリーズという短期決戦での野村采配を再び見ることができるのは野球ファンにとっては幸せなことです。

本田を使えない代表監督

2009-08-18 | スポーツ
浦和のトゥーリオがワールドカップでの目標に関するインタビューに応えていたそうです。
そのやりとりは

「協会の目標であるベスト4、どうでしょう?」
「無理ですね」
「でしたら目標は?」
「そりゃ優勝でしょう」

というようなものだったとか。

中途半端にベスト4とか言うから馬鹿にされるのであって、一気に優勝を目指すと言ってしまえば、そりゃそうだな、ということで爽快です。日本の戦力からいって1試合をがむしゃらに取りにいくしかないのに、バランスを見ながら政治家の当落責任ラインみたいに計算高く「ベスト4」を宣言するから不遜にも、保身にもみえてしまいます。

オシムと違い、身の程知らずな王道攻撃路線を工夫なく繰り返す岡田さんの可能性を感じさせないサッカーを、メンタルの異なったトゥーリオや本田がアグレッシブに、インサイドではなくインステップキックで切り裂いてほしいものです。

8対5の投手戦

2009-08-17 | スポーツ
夏の甲子園1回戦で、因縁の長崎代表と戦った花巻東の試合、なかなかの名勝負といえるものでした。やっと追い付いたと思ったら、すぐに勝ち越されるという苦しい展開でしたが、菊池を降ろさず最後まで投げさせた美形の監督と集中力を切らさなかったチームの見事な勝利と言えます。

5点も取られたのですから、(中日以外の)プロなら降板・交代が当然ですが、3本のホームランで5点というのは、ランナーがいるときといないときのピッチングを変えている証明で、決して悪いピッチングではなかったということでしょう。

逆にいいピッチングをしており、さらに勝っていたのに交代を選んだ長崎日大監督の采配が対照的で、この試合は1回戦ではなく事実上の決勝戦なんだという意識の違いが明暗を分けた、という気がします。高校野球だと、肩もつくらず野手が投手にスイッチっていうことも多いのですが、これはとてもリスキーな選択で、教育的配慮もあろうかとは思いますが、花巻東相手にとる戦術ではないでしょう。

長崎代表の試合で3本ものホームランを浴びたのは、菊池投手の評価を下げましたが、今日の第4試合で強打の神奈川代表相手に好投しました。これは長崎日大がいかによいチームで、1回戦で敗退するチームではなかったことを物語っております。敗者復活戦が甲子園でも採用されれば、決勝に進んでもおかしくなかったでしょう。

営業右翼とWBC

2009-07-29 | スポーツ
三島由紀夫は、時の政権(統治権力)が愛国心(ナショナリズム)を強制・奨励することは、政権が変わることによって愛国心のあり方が左右され、健全な郷土愛(パトリオティズム)が阻害される恐れがあるので、決してやってはいけないことだ、というような意味のことを言っておりました。戦前の一時期にファナティックな国家運営をし、敗戦とともに大きく舵を切った日本という国にいれば、よりよく分かるお話です。

安倍政権の環境に関する「美しい星」構想は三島の作品のタイトルからとったものです。親米右翼などというわけのわからない立場をとりながら保守を自認する人達も大好きな三島ですなのですから、このあたりの見識を見習い、勉強して欲しいものです。子供達だって普通にWBCやワールドカップの応援に熱を入れるのは、多くの知り合いがおり、知っている場所が沢山あるからこそ日本にこだわっているのであって、何も強制されたわけではありません。

某保守系メディアに「WBCへの参加を拒否した中日の好調とそれによって失った何か」てな内容の記事が掲載されているのを読みました。内容は、今の中日の強さをすべて「WBCに参加しなかったこと」に求め、WBCへの中日の選手供出拒否ともとれる姿勢を「日本人が失った何か」によるものと指摘して悦にいっている気持ちの悪い文章で、ほとんど野球を見ていないんじゃないかと思われる状況認識の甘さに、情報の錯誤もあり、まともに反論する気にはなれないお粗末なシロモノでした。おそらく記事を書いた記者にとってはWCもWBCもオリンピックもすべて国威発揚の場なのでしょう。

日頃本を読まない人達が買うことによってベストセラーが生まれ、日頃野球を見ない人達がテレビを見ることによって高視聴率が生まれるように、WBCの盛り上がりはそういった野球にも愛国心にも興味のない飽きっぽく一時的な「ネタ」を楽しむ人達によってもたらされたものであり、選手達も含め、ベストは尽くせど決してこの記者の期待する「何か」などをもってして、習合されたものではありません。

昨日の中日vs巨人の好ゲームが汚されたようで、少し憤ってしまいました。とりあえずこの「保守系メディア」に関する文物は購入しないことにします。政権与党同様大手メディアの我田引水的ミスリードにも気をつけなければなりませんね。

白鵬 相撲の完成形

2009-07-27 | スポーツ
憂いを帯びた琴欧州の瞳に光が差すことは最後までありませんでした。白鵬のパワー、スピード、テクニックという3拍子揃った強さは対戦相手によって柔軟に変容し、千秋楽に気合いを入れベストを尽くした朝青龍に対してはスピードを駆使し、見た目以上に余裕をもって退け、改めて白鵬時代の到来を印象付けました。

白鵬はモンゴル相撲と日本の相撲との融合の完成形を魅せながら、中日、かつてでいえば阪急ブレーブス、清原が居た頃の西武ライオンズを彷佛とさせるプロフェッショナルを強く自覚した大人の相撲を展開して優勝し、朝青龍のがむしゃらでガチャガチャしたスタイルとは違い、安定感のある磐石な怪物力士に成長しました。

グローバリズムの象徴でもある朝青龍という世紀の悪役の強さを失った土俵は、本来の姿を取り戻しはしましたが、WBCで活躍する以前のイチローの求道的態度に人気がでなかったように、中日や阪急同様、人気面が不安です。今場所を見る限り、横綱を追う琴欧州や稀勢の里、日馬富士も成績以上に差があり、横綱昇進の条件である二場所連続優勝が難しい状況です。柔らかく怪我もしにくい体を持つ事実上の一人横綱がどれだけ記録を伸ばすかが今後の見所となりそうで、それはそれで残念で悲観的な見通しではあります。

ルナティックな大相撲名古屋場所

2009-07-23 | スポーツ
これだけ番狂わせのある一日も珍しい。互助会と揶揄された古参大関陣が全勝力士、横綱を次々と倒し、これから上位で星の潰し合いをするというのに、(われらが)安美錦が2敗を守るという展開。日蝕は実感できませんでしたが、上空で繰り広げられる天体の異変は、地上にも狂った土俵として反映されました。

これで、言い訳のように肘をさすってばかりいる朝青龍や日馬富士にも逆転の目がでてきたと、集中力を取り戻して復活し、どういう取組みを編成するかによっては上位との対戦のないまま安美錦の平幕優勝なんてこともありえますので、協会も頭が痛いことでしょう。

安美錦は優勝したところで相撲界の発展には全く寄与しないし、次場所への期待も膨らまないというユルい力士なんですが、今年の朝青龍、白鵬、日馬富士と続いた優勝力士に安美錦が名前を連ねるのもコントのようで一興です。しかし皆が一斉にひいてしまうのは明らかなので、身分をわきまえた彼は決してそのようなことはしないと思いますが、記憶に残る力士として一回位優勝してほしいと思うのは私だけでしょうか・・・。私だけですね。

大相撲戦国時代

2009-07-18 | スポーツ
日馬富士が早くも2敗目、それも平幕に負けたということで、今場所終了後の横綱昇進は無くなりました。まだ25歳、深田恭子より若く、こないだまで「安い馬」だったのですから気にすることはありません。こうしてちゃんと壁にぶつかる方がむしろ正しいのです。

そもそも日馬富士のようなソップ型の力士は、テクニカルでスピードが持ち味のときどき金星をあげる8勝7敗の関脇止まり、というのが常識で、安馬時代も彼の細い体に場所を盛り上げ役を担わせるのは残酷だと思っていたものです。日を追って体重が増えるでもなく、相変わらず内臓の悪そうな顔をした横綱の誕生は、若手の励みにもなるし、人気も上がるでしょうけど、どこか座りが悪く、小さな体に負荷をかけ過ぎているようで、気の毒です。

安美錦、稀勢の里が勝ち星を重ねていますし、先場所も活躍した琴欧洲も優勝争いに絡んできそうで、朝青龍もまだまだ元気ですし、大相撲はいよいよ戦国時代に入ってきました。