大阪の人民新聞社から山田洋一編集長が
4月初旬、江西財経大学にやって来て、1週間あまり取材活動を展開したことは
以前のブログ文で述べた(No.881、882など)。
http://blog.goo.ne.jp/bluehearts_10_11/e/6b9eb6e4a32632ae117b13aa35c79bf5
http://blog.goo.ne.jp/bluehearts_10_11/e/ede3f880aac1373ee55e64db243cd4ee
市内に行くバスにもうちょっとで乗れなかったり、
学生たちに得意の料理を振舞ったり、
大学の授業に特別講師として参加し、
因幡晃の「わかってください」を1番から3番まで熱唱したり、と
いろいろの思い出を残して去っていった山田さんだが、
その後、人民新聞にシリーズで江西財経大学日本語学科や、
市内八一公園の日本語コーナーでの取材を記事にしてくれている。
こんな地方都市の大学のことを取り上げてもらって、
学生たちや先生方は大喜びである。
しかし、こんな目立たない省の大学だからこそ、
生(なま)の、そして普通の中国の学生や教師の姿が見えるということもある。
山田さんもそんな風に思って取材してくれたのではなかろうか。
シリーズの記事をこのブログで紹介させていただく。
―――――――引用ここから
人民新聞People's News 1512号(2014年4月15日)
-中国現地取材 江西財経大学生が日中関係について討論-
対立を深める日中両政府。不測の衝突すら危惧される事態について中国の学生が「平和への提言」をテーマに討論会を行うというので、現地取材に飛んだ。
今回取材の最大の収穫は、険悪化する日中関係という学生にとっては課題とも言えるテーマに真正面から向き合い、自分にできることを探そうとする真摯な姿に接することができたことだ。
中国で日本語を学ぶことは、フランス語や英語とは違う特別な意味を帯びる。とりわけ両国関係が緊張すると、過去の侵略の歴史がクローズアップされて、「なぜ、何のために学ぶのか?」を自ら問うことになるからだ。
実際反日デモが起こった2012年には「売国奴」と非難された学生も多い。日本語学科の学生は親や友人から「よりによって、なぜ日本語を学ぶのか?」と問われ、各々答えを探すという経験を語っている。
教師たちにとっても二国関係悪化は悩みの種だ。ここ数年、日本語を学ぶ学生が減り続け、転部希望者は増え続けているという。
江西財経大学は、省内各地方から成績優秀な学生が集まるエリート校だ。全寮制で、貧しい農村部出身の学生も多い。日本語学科の規模は南昌市の日本語学科のある大学で最も少人数だが、省内スピーチコンテストや全国規模の作文コンクール(日本僑報社主催)でも上位入賞を果たしている。外国語学院日本語学科主任の厳新平さんに企画の意図などを聞いた。(文責・山田)
編集部:テーマを「平和への提言」とした理由は?
厳:今、中日関係は平和からどんどん遠ざかっています。政府間の対立に加えて、民間交流も減っています。江西財経大学でも、日本語を学ぶ学生が減少し続け、他大学も同じ傾向にあります。今後、中日関係がどうなっていくのか。日本語を学ぶ学生だけでなく、日本語にかかわる教職員にとっても、未来を大きく左右する課題だけに真剣に考えなければならないと思いました。
テーマ設定に際し、日本語学科担当教官たちが相談会をもちました。その場に日本人の先生が日本の新聞を持参し、回覧しました。そこには「日中対立は戦争に向かっているのか?」と心配する日本人の声が掲載されていたのです。私たちも絶対戦争はしたくないので、考えるきっかけを作るためにテーマを「平和への提言」と決めました。
現在のようなギクシャクした関係を続けて良いことは一つもありません。中日両国が歩まなければならない道は、唯一つ。それは、交流の道であり、平和の道です。
もう一つの目的は、中国で生活する私たちの「平和を望む声」を日本の人々に発信することです。今回、人民新聞社に取材に来ていただきましたが、学生たちの真摯な声を日本の皆さんに伝えてほしいと思います。
スピーチコンテストで学生たちは自らの経験を基礎に、自分なりの見方や提言を示しました。今後、スピーチで主張したことを行動に移してほしいと思います。今回の大会は、中日平和有効に撮って大きな成果がありました。
編集:厳先生が日本語を学ぶきっかけは?
厳:私が南昌大学日本語学科に入学した1995年は、日系企業が中国にどんどん進出し始めた時期です。国内の大学も先を争うように日本語学科を新設し、日本語を学ぶ学生が増えており、日本語がブームとなった時期です。
夏休みに高校の先輩が自宅に遊びに来て、「日本語を習得すれば就職に有利になる。日系企業に就職できれば、2~3倍の給料も夢ではない」と、教えてくれました。私は貧しい農家出身なので、両親に経済的負担はかけられませんでしたし、(安定した職を得て、親に楽をさせたい)という思いもあって、日本語を専攻しました。
日本語習得は私の人生を大きく変えました。日本に行くチャンスに恵まれたからです。2004年4月から1年間、岡山県庁国際課で「国際交流員」として働くことになりました。江西省政府の訪日団が来日した際、通訳として働きました。当時は農業・教育分野の交流が活発で、雑伎団日本公演の開催にも関わりました。
中日両国民は、まだまだ理解不足で、もめ事が良く起こります。ふれあいがないために相手の考えがわからず、無用な対立が起きています。人は知り合えば友達になれます。民間交流が進めば、対立やもめ事も減るはずです。
編集:日本語を習得して日本のイメージは変わりましたか?
厳:日本語を学ぶ前、日本のイメージと言えば、教科書に書かれている侵略戦争の歴史くらいで、現実の日本についてはほとんど知りませんでした。でも、日本に行ってみると、町は清潔で人は礼儀正しいことに驚きました。印象的だったのは、横断歩道を人が渡ろうとしている時、運転手が車を止めて、歩行者に横断するよう促していたことです。譲り合いの精神を感じました。
また私は自転車通勤をしていたのですが、人とぶつかったことがあります。私はすぐ謝ったのですが、相手も謝るので驚きました。日本人はトラブルを回避する謙譲の精神があります。皆がルールを守る、安心できる社会だと思いました。
編集:尖閣諸島国有化と首相の靖国参拝について。
厳:私は政治に関心がありませんが、中日間に領土問題はあると思います。日本政府は「領土問題は存在しない」と主張していますが、実際に両国間が争っているのですから、日本政府の主張には納得できません。旧日本軍人を奉る靖国神社を参拝するのは、罪を犯した人を尊敬することになるので、おかしいと思います。
編集:中国社会の課題とは?
厳:まず、大気汚染です。早く解決しないと、深刻になる一方です。特に北部はひどいので、政府は段階的でもいいから積極的に取り組んでほしいですね。
もう一つは格差問題です。農村と都市の所得格差を解決しなければなりません。豊かになった中国人も増えているので、彼らに社会貢献を求めるべきです。税金の累進性を高めて、お金持ちから税金をもっと徴収すべきです。
編集:未来の中国について。
厳:きれいな空気と安心・安全な食料が必要です。環境問題は、焦眉の課題です。グローバル化の時代は、1国だけが繁栄を求める時代ではありません。共存共栄こそが重要です。トウ小平氏は「安定こそが一番大事」と言いました。国際交流に関わる者としても、争いのない平和的国際環境を願っています。
――――――引用ここまで
↑4/9スピーチコンテストで挨拶する厳先生
↑5/16日本文化の集いで日本人形とカレンダーを桶蝶レディースから
プレゼントされ、「はい、はい、シャッターチャンスですよ」のレディースの声に
応えて、ずっとポーズを取り続ける真面目な厳先生。
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