秋には更新だな、と思って部屋の中を見回している。
……引っ越したい。
ここへ移った頃は嫌な夢を見た、泣きながら目が覚めたことも。
こないだ、吉祥寺で友達とお茶をした。彼女は東京で出来た初めての友達。芝居にも良く出演してくれた。
彼女のお腹に子供がいたとき最後の舞台の千秋楽を終え、打ち上げを断って帰るという彼女をタクシーの拾える場所まで見送りに行った。
見送らせてと私が頼んだ、きっとこれが最後とわかっていたから。
遠ざかるタクシーに手を振りながら、もう一緒に芝居をすることは無いと思ったら泣けてきた。
とても心細かった。タクシーに乗って彼女は新しい世界へ向かう。
周りに人が居ることはとても幸せで、とても怖い。
そんなのは子供っぽいとわかっていても考えてしまう、いつか相手の気持ちが離れることも、自分の気持ちが離れることも。
で、こないだ吉祥寺で彼女とお茶をした。
お互いに少し現状に疲れていて、ちょっと失望していて、元気だった。「また一緒に芝居をしよう」と言い合った。
それはあの時、タクシーを見ながら諦めたことだ。
本気で思い込んだ私達は、何だか強くて、はっきりしていて、希望を持っていた。東京の街がふさわしく思えた。
家に帰ってじっくり考えたら、いまはまだまだ難しいってすぐにわかったけど、あそこで話し合った1時間は、私を今もちょっと幸せな気持ちにさせてくれる。
絶対無理がいつかきっとに変わって。そう思えることが幸せに思った。
この秋更新のこの部屋で、最近は嫌な夢を見ることも少なくなった。だけどそれがいいことなのかどうか私にはわからない。
今日は天気が良くって、網戸を見たら猫型に日が射していた。ちょっと無理矢理で、だから何って感じだけど。


