春だし

三月いっぱいで、今の職場が無くなることになった。

私の職場は関西本社の東京支店、その本社が関東からの撤退を決めたらしい。
従業員全員で同時に就職活動をすることとなり、
「どうするの？」
「困ったねえ」
などと言いながら、こんな事は珍しいと、皆どこか浮かれている。

私がこの話を聞いたのはちょうど脚本を書いている真っ最中で、
「ちょっと今、それどころじゃないから！」
と軽く流してしまった。
最近になりやっと、さてどうするか……と改めて考えている。
どちらにしても、私にとってはあまり大きな問題ではない。
もともと派遣社員、いつか契約が切れることはいつも覚悟が出来ていたのだ。

しかし、東京へ来て一年と少し……
やっと色んな事が話せる様になり、色んな話を聞き、
長時間を一緒に過ごした職場の友達と離れるのは、やはり寂しい。
なぜか呑気で、地に足がついていない人が多かった。
今だって、「無職になるなら、旅行へでもいくかなあ」などと話している。

今までもいろいろな職場に勤めたけれど、長く続くところはいつも、
どこか呑気で、少しゆるくて、いい人たちが多かった。
所属していた、劇団のＭＯＮＯもそうだ。
そして、そりゃ全員ではないけれど、
関わった様々な職場の人々とのコミュニケーションは今も続き、
時々、突然にお互いの様子を確認しあう。
ああ……なんか急に幸せな気分になってきた。
これから無職になるというのに。

しかし、やっぱりこれくらいのことはちょっとした事故に遭うのと同じで、
ちょっとした事故なら無いよりあった方が面白いと思う。
それに、こういうことが取るに足らないことだと感じられるのは、
自分の中心がぶれていないからで、それを確認できて良かったと思っている。

でも、また職探し。
仕事に慣れるより、人に慣れる方が私にとっては重大だ。
どうするかはまだ具体的には考えていないけれど、
せっかくだし、春だし、とりあえず……旅行へでも行くかな？

二年ぶり

四日くらい前に降った、二年ぶりの東京の大雪はまだ解けていない。
写真は雪の降った当日の家の前の道、
この道をまっすぐ行って左へ曲がると荻窪駅がある。

最近の悩みは新しく引っ越してきた二階の住人について。

今度の人はいびきこそかかないけれど、
朝の七時前から掃除機をかけるきれい好き。
そして、部屋にエアロバイク見たいな物があるようで、
それを漕ぐたび、下の階の私の部屋のガラスがテンポ良く揺れる。

家大好きの私は、家にいる時はだいたい静かに書き物をしているので、
上の音がどうしても気になってしまう。
共同生活なのだからお互い譲り合うとしても、
朝七時前の掃除機と、夜中十二時過ぎのエアロバイクはやめて欲しい。

だから今度こそ、もう我慢しないことに決めた。
前の住人の方には、後から入った手前なんとなく言いにくかったけど、
今回は私の方が先に入居しているのだから、前よりは少しは言いやすい。
それに上下に住む住人同士、顔見知りの方がお互いに安心のはずだ。
……今度こそ、頑張ってお願いに行こうと思っている。
明日は言おう、明日は言おうと思いながら、もう一週間以上が過ぎているけれど。

ここ数ヶ月の間、やらせてもらったことがそろそろ一段落した。
失敗もしたし迷惑もかけたけれど、短期間に今までになかったことを、
書いたり、読んだり、見たり、聞いたりすることが出来て、とても勉強になった。
また元に戻る事がイヤで、忘れないうちに今はいろいろ書いてみたい。
書きかけの本や、書き直したい本がたくさんあるから。
厳しい環境に身を置くと、その分成長することが出来ると思う。
でも、厳しい環境を手に入れるのはとても難しいことだ。

残念な…

最近になって、書いた脚本が不採用となった。
テレビでも芝居でもラジオでも、
コンクールの選考には何度も落ちているし、
「残念な結果」には慣れているけれど、気持ちが強かっただけに、
久しぶりに結構落ち込んだ。
普通に考えれば当然の結果だ。

自分の気持ちを伝えたい、わかって欲しいと書いたものが
採用されないのは、失恋した時の気持ちと良く似ている様に思う。

今回はタイミングが合わなかったとか、もっといい人がいたとか、
どんな理由を並べられても、
どんな優しい言い方をされても、
結局は自分を否定されたように感じてしまうし、
ふられればふられるほど思いは強くなるし、
追いかけたくなる。
ふられ続けても好きでいることが一番難しい。

でも、どうやら失恋よりは立ち直りは早い様だし、
ダメだった脚本に傷ついた心を癒すには、新しい脚本と言うことで、
今回はダメだったけど、長い目で見て頑張ろう。