「攻撃」の359頁以下は、コンラート・ローレンツによる結論(実際的な行動規範)となる。
1 カタルシス(代償と昇華)
この代表として「スポーツ」(p364)が挙げられる理由はもはや説明を要しないだろう。
やや意外だが、「国家間の競争」は、互いに「個人的に」知り合うことができ、「同じ理念」へ熱中させることで「熱狂」の一体化作用を呼び起こすため、「攻撃性」を抑制する力になるという(p366)。
彼の見解では、おそらくロシアや北朝鮮などにはオリンピックその他のスポーツの国際競技に参加してもらうのがよいということになるだろう。
2 個人的に知り合いになる(相手を知る)こと
これだけでも「攻撃性」を抑制するのに役立つ。
「相手を知らない」ということは、攻撃行動の解発を極めて容易にするからである(p366)。
確かに、山の中に住むクマが、生まれてこのかた見たこともない動物=人間に遭遇するや否や攻撃してしまうという事態は、容易に想像出来るところである。
3 熱狂の反応を賢明にそして批判的に支配していくこと
「熱狂」は戦争などの大量殺戮を生み出すものであり、顕著に行われてきたのは「仮想敵」をでっちあげる方法である(p368~)。
このメカニズムをよく知り、扇動されないことが必要である。
4 芸術と科学
いずれも「党派」を超越するものであり、熱狂を解発するわなに対する防御機能を持つ(p374)。
5 笑い
「熱狂」に似ているが、同じ事柄についての笑いは、兄弟的な共通帰属感情を作り出す(p374~)。
以上に付け加えるとすれば、「強すぎる/不健全な自己愛の抑制」という観点から、「「統合」の促進」を挙げるべきだろう。
すなわち、
① 「よい体験」が「わるい体験」よりも多い乳幼児期
② それなりに「わるい体験」も含まれる思春期・青年期
という、健全な精神の発達を促進する環境が必要だろう。
それでも、運悪く「強すぎる/不健全な自己愛」を持つ人間(典型的にはパワハラやモラハラの加害者)が出現することは避けられない。
そのような場合、差し当たり「逃げる」ことをお勧めする。
私自身も、「ゼロサム族」や「マウンティング族」の気配を感じると、つま先立ちで退散することが多い。
そう、ハイキングでクマに出会った場合を想定すればよいのである。