振付:スタントン・ウェルチ、ジュリー・ケント
『クリア』
『蝶々夫人』より
『シルヴィア』より
『魂の音』より
『ヴェロシティ』
本人が、
「一つの型にはまらない、間口の広い振付家であることを心がけています。あらゆる役を演じきる女優のメリル・ストリープのように・・・」
と述べるとおり、前回公演「白鳥の湖」のようなクラシカルな作品だけでなく、この日のような種々のコンテンポラリー作品も自由自在につくることができる。
・ジャンプのとき、両手を後方に、両足を前方に伸ばす
・回転ジャンプの後、床に倒れ込んで転がる
というコリオが頻出するのだが、これは彼の好みなのだろう。
総じて音楽と調和しつつもアクロバティックで高難度・高速度のコリオという印象で、メリル・ストリープもびっくりしていることだろう。
当然、ダンサーには高度の身体能力が求められるわけだが、これに関しては地の利があると思う。
というのは、ヒューストンのエスニシティは非常に多様で、こうした人材のリクルートがしやすいのではないかと思われるからである。
例えば、大柄なアフリカン・アメリカンの男性ダンサーが揃っているところや、ベネズエラ出身のカリーナ・ゴンザレスが長年プリンシパルを務めているところなどは、このバレエ団の特色と思われる。
個人的にも、スタントン・ウェルチのコンテンポラリー作品は観ていてエキサイティングだし、全く退屈しない。
なので、誰かこの人のテーストだけでも継承して欲しいと思う。
この点、元ABTのジュリー・ケントが共同芸術監督に就任しており、ウェルチの後任となるのだろうが、”武蔵野”風に言えば「才能多面体」の路線を継承するのは、相当難しいのではないかと思う。
メリル・ストリープは、なかなか真似できない存在だからである。