Don't Kill the Earth

地球環境を愛する平凡な一市民が、つれづれなるままに環境問題や日常生活のあれやこれやを綴ったブログです

5月のポトラッチ・カウント(6)

2024年05月23日 06時30分00秒 | Weblog
 「井筒屋の子息・伝兵衛は祇園の遊女お俊(しゅん)と深い仲、身請けの話もまとまっていた。ところが、お俊に横恋慕する悪侍・横淵官左衛門(よこぶち・かんざえもん)は、悪仲間と共に伝兵衛から金三百両を奪い取り、両者は四条河原で達引、つまり喧嘩沙汰となる。そして伝兵衛は思わず官左衛門を斬り、お尋ね者になってしまった。
 逃亡犯の伝兵衛と接触しないよう、お俊は祇園の店から堀川の実家に預けられている。そこにはお俊の母と猿廻しで生活を支える兄の与次郎が暮らし、与次郎は決して楽でない日々の中、母に孝養を尽くしていた。
 ある晩のこと、伝兵衛がそっと訪ねてくる。兄の与次郎は驚いた。何しろ相手は人殺しの逃亡犯だ。やぶれかぶれになって妹のお俊を殺しに来たのかも知れない。「で、で、伝兵衛だ!」与次郎の震えは止まらない。しかし、どうにか心を落ち着かせ、伝兵衛が来たら渡す手筈になっていた退状(のきじょう)、妹に書かせた別れの手紙を伝兵衛に差し出す。ところが、それは別れの手紙でなく、母や兄に自害の覚悟を知らせる、お俊の書き置きだった。
 お俊は伝兵衛が来たら一緒に死にたいと思っていた。しかし伝兵衛は、お俊を巻き添えにするつもりはなく、母や兄と暮らして欲しいと頼むと、お俊は「そりゃ聞こえませぬ伝兵衛さん・・・」、あなたが苦しんで死のうとしている時に、それを見捨てる・・・。私がそんなに薄情な女と思っているのですかと訴え、そのお俊の真実の心を知った母と兄は、お俊と伝兵衛が一緒に出て行くことを許す。
 このあと二人が心中することは分かっていた。それを知りながら見送る痛ましい別れ・・・。しかしそれを兄の与次郎は、めでたい猿回しで見送った。」

 Aプロ最後の演目は、「近頃河原の達引」より「堀川猿廻しの段」と「道行涙の編笠」である。
 「市若初陣の段」が最悪のストーリーなだけに、このチョイスにはちょっとほっとする。
 さて、十八世紀後半頃の祇園が舞台で、主人公の伝兵衛は遊女:お俊と恋仲となり、身請けの話も決まっていた。
 ところがそこに役人(”官”)の横淵官左衛門が”横”恋慕してきて、ライバルの伝兵衛を激しく打擲する。
 伝兵衛は我慢出来ずに官左衛門を斬り殺し、自害しようとするが廻し(芸者の送り迎えをする男)の九八(伝兵衛に恩義を感じている)にその場を託し、逃走する。
 この設定で既に身分制への批判(=武士の理不尽な行為へのプロテスト)が浮き彫りになっている点が注目されるが、これは健全な思考と言うべきだろう。
 その後、九八は伝兵衛の身代わり犯となって官左衛門殺害を自供するが、これは虚偽であることがバレ、ポトラッチは未遂に終わる。
 逃亡中の伝兵衛は、事前の約束通りお俊の実家を訪れるが、お俊の母や兄の嘆きを受けて翻意し、
 「・・・思い廻せば廻すほど我こそ死なで叶はぬ身、そなたは科のない身の上、ともに死んではお二人の嘆き、命存へ亡き後の問ひ弔ひを頼むぞ
と自分一人だけで死ぬ決意を告げる。
 これに対するお俊の返答が、(当時は誰もが知っていたという名台詞)
 「そりゃ聞えませぬ伝兵衛さん
である。
 結局お俊の母と兄は二人が逃亡するのを許すのだが、その際に祝いの猿廻しが演じられ、これが人形劇の見ものとなっている。
 今回は上演されないが、ラストは伝兵衛の正当防衛が認められて無罪となり、お俊は伝兵衛の父によって身請けされるというハッピーエンド。
 以上の次第で、「近頃河原の達引」より「堀川猿廻しの段」と「道行涙の編笠」のポトラッチ・ポイントは、久八の身代わり犯も、伝兵衛&お俊の心中も未遂に終わるため、0.5+0.5=1.0:★。
 

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