嫁さんの実家の近くに肥薩線のローカルな駅があって、その古い木造の駅舎が私は好きでした。
駅舎と同じくらい古い駅の椅子に座り線路を隔てた山を見ていると、ポーと汽笛を鳴らし黒い鉄の塊のような蒸気機関車がガッシュガッシュとやって来そうな気がしました。
今はその駅舎はなくなり、代りに都会の私鉄沿線にありそうなスマートな雨よけが建っています。
ローカル線の駅に行くと何故か、次にここに止まる列車に乗って終着まで行きたくなります、夜更けに着くその終着駅には薄暗い裸電灯が灯っていて、夜勤の駅員が眠そうに切符を点検し、駅舎を出ると目の前の銀杏の木が最後に残った葉を散らそうとしています、まだ明かりを付けていた駅前の古い旅館に泊めてくれと頼むと、晩飯はもう無いですよと念を押され、案内される6畳の赤茶けた畳の部屋。
そこから私の新しい人生が始まりはしないかと、期待します。
ただ、そこにいるのは20歳代のバックパックを背負った青年ではなく、50を過ぎた中年男なのですが。
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