久しぶりに本屋をうろついていたら、辺見庸さんの「水の透視画法」単行本があった、何年か前私の住んでいる地方新聞に週一くらいで連載されていたシリーズで、当時もその視点に感心しながら読んでいたものだ。
町の図書館には多分入らないだろうし、この手の本は借りて読むものではないと思うので、買った。
今年ハードカバーの本を買うのは先にブログに書いた「色彩を持たない・・・」に続いて2冊目だ、先の本は期待外れ(私的に・・・)だったのだが、これは新聞で読んでいるので外れることは無い、 さっそく家に帰って本を広げると、読んでいないものも結構ありそうで嬉しい。
ジャーナリストの習性なのか、辺見さんのエッセイでの視点はとてつもなく鋭い、論点となる日常の一瞬を見事に切りだすのだが、感心するのはそのシーンにごく自然な悲しさ、別の言葉でいえば情感を醸し出すことができるところだ。
ここは辺見さんの小説家としての一面を垣間見るところだし、「もの食う人々」に通じる社会に対する皮肉感、底辺感に圧倒される。
人生の折り返し点をとうに過ぎて、おっさんか、じーさんしか呼ばれることが無い初老の男の独り言として、私はこの本をこれから何回も読み返すのだろう、「世の中、そんなにいいことばかりではない」と自戒をこめてつぶやきながら。