日盛りの道の上で

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読書メモ「冷血:高村薫」

2013-02-14 15:52:31 | インポート
 「新リア王」で高村薫にはまり、「晴子情歌」、「太陽を曳く馬」のいわゆる福澤彰之3部作の長大で難解で限りなく重苦しい長広舌に感心してしまった私にとって、合田雄一郎が登場しようがしまいがどうでもいいことなのだが・・・

 むしろ本編の主人公は2人の犯人井上克美と戸田吉生なのではなかろうか、下巻においてみしみしと音がするほど書き込まれていく2人の取り調べに絡んだ刑事との問答、生い立ち、経歴をとおして作者は現代の日本社会における少し不幸でついてなかった男たちの存在と破滅を描き出していく、戸田吉生が聞いた「生きよ、生きよ」との声の主はだれなのか、その前になぜこの殺人が起きたのか。

 上下巻合わせて約620ページしかも2段組み、読むのに覚悟も時間も必要だが、2012年発表の日本の小説の中では間違いなく傑出した傑作。

 

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