人間の実相を語る歴史人(赤穂浪士⑫大石内蔵助の十三年間)
かの大石内蔵助が、
播州(兵庫県)赤穂藩の
家老をつとめていたころである。
城下の町人の中に、
赤穂で塩を造ったら、
おおいに藩の財政を
潤すだろうと
考えた者がいた。
そこで同志を帯同して、
家老大石に面会し、
「赤穂藩のためにぜひ、
ご許可を」
と懇願した。
こまかい彼らの申請を、
つぶさに聞いていた大石は、
やがてこう答えている。
「なるほど、その方らの
考えは大変おもしろい。
よく検討したうえ、
沙汰しよう」
おそくとも三ヵ月か
半年中には、
認可されるだろうと、
町人らは鶴首して
待っていた。
が、一年たっても
二年たっても、
なんの音さたもない。
光陰矢のごとし、
はや五年の歳月が流れた。
「大石さまも、
わかったような顔を
していても、
なにもわからないものだ」
一同あきらめて、
忘れかけていた十三年目、
ようやく呼び出しがかかった。
「十三年前、その方らが、
製塩の許可を願い出た
ことを覚えているか。
あの話を聞いたときから、
よい発想とは思ったが、
よくよく考慮したところ、
問題があったのだ。
まず、塩を煮るには薪がいる。
薪をたくには木を
切らねばならぬ。
多くの樹木を切ると
山がはだかになる。
はだかの山に
大雨が降ってみよ。
たちまち洪水だ。
大洪水になれば田畑は
メチャメチャ。
農業の荒廃は一藩の荒廃じゃ。
そう気がついたので、
あれから十三年、
植林に尽力してきた。
もうそろそろ木を
切り出しても、
山がはだかになる
心配はなくなった。
よって、その方らの
製塩事業を許可する。
おおいに城下が潤うよう、
つとめてもらいたい」
後日、四十六士を結集し、
いくたの困難を乗り越えて、
みごと、主君の恨みを晴らす、
大石内蔵助の智慮の
周到さを、ここでも、
かいま見ることが
できるようだ。
かの大石内蔵助が、
播州(兵庫県)赤穂藩の
家老をつとめていたころである。
城下の町人の中に、
赤穂で塩を造ったら、
おおいに藩の財政を
潤すだろうと
考えた者がいた。
そこで同志を帯同して、
家老大石に面会し、
「赤穂藩のためにぜひ、
ご許可を」
と懇願した。
こまかい彼らの申請を、
つぶさに聞いていた大石は、
やがてこう答えている。
「なるほど、その方らの
考えは大変おもしろい。
よく検討したうえ、
沙汰しよう」
おそくとも三ヵ月か
半年中には、
認可されるだろうと、
町人らは鶴首して
待っていた。
が、一年たっても
二年たっても、
なんの音さたもない。
光陰矢のごとし、
はや五年の歳月が流れた。
「大石さまも、
わかったような顔を
していても、
なにもわからないものだ」
一同あきらめて、
忘れかけていた十三年目、
ようやく呼び出しがかかった。
「十三年前、その方らが、
製塩の許可を願い出た
ことを覚えているか。
あの話を聞いたときから、
よい発想とは思ったが、
よくよく考慮したところ、
問題があったのだ。
まず、塩を煮るには薪がいる。
薪をたくには木を
切らねばならぬ。
多くの樹木を切ると
山がはだかになる。
はだかの山に
大雨が降ってみよ。
たちまち洪水だ。
大洪水になれば田畑は
メチャメチャ。
農業の荒廃は一藩の荒廃じゃ。
そう気がついたので、
あれから十三年、
植林に尽力してきた。
もうそろそろ木を
切り出しても、
山がはだかになる
心配はなくなった。
よって、その方らの
製塩事業を許可する。
おおいに城下が潤うよう、
つとめてもらいたい」
後日、四十六士を結集し、
いくたの困難を乗り越えて、
みごと、主君の恨みを晴らす、
大石内蔵助の智慮の
周到さを、ここでも、
かいま見ることが
できるようだ。