一日一訓(30日 誤りを犯さないことを)
「誤りを犯さないことを誇りとするよりも
誤りを直ちに改めることを誇りとしよう」
鎌倉時代のこと。
刀工日本一を決定しようと、
十八人を選抜し、おのおの、一刀を造らせた。
かの有名な岡崎正宗や郷義弘の
名刀工も、その中にいた。
厳しい審査の結果、正宗の刀が
最良と判定されたのである。
「これにはなにか、ワケがあるにちがいない。
正宗のやつ、ワイロを使ったのかもしれぬ」
当代一の名刀鍛冶を自負していた
越中の国・松倉の義弘は、
とても釈然とはできなかった。
自分をだしぬく者を容認できない自信過剰の義弘。
「このうえは決闘を申しこみ、決着をつけよう」
と、鎌倉の正宗を訪ねた。
ちょうど、刀を鍛えている真っ最中か。
さかんにトンテンカン、トンテンカンと
すんだ音が聞こえてくる。
こっそり鍛冶場をのぞきこんだ義弘は驚いた。
清められた仕事場に、袴をつけ、
端然として槌を打っている、
こうごうしいほどの正宗の姿にであった。
なにも知らない正宗は、
はるばる遠方から訪ねてくれた義弘を、
心から歓待した。
「いままで私は、あなたを疑い、恨み、
決闘まで覚悟してきましたが、
大きな誤りでした。
あなたの鍛練ぶりを拝見させていただき、
いかにも威儀正しく、
精魂こめて刀を造っていられる。
それにくらべて私は、暑ければ肌をぬぎ、
ノドがかわけば飲むといったありさまで、
とてもあなたとは比較になりません。
技術や腕力だけでは、とうてい、
名刀はできないことを知らされました」
一部始終をうちあけた義弘は、
ぜひ弟子にしてもらいたいとたのんだ。
正宗は謙遜して断ったが、
どうしてもと義弘がたのむので、
ついに許したという。
「誤りを犯さないことを誇りとするよりも
誤りを直ちに改めることを誇りとしよう」
鎌倉時代のこと。
刀工日本一を決定しようと、
十八人を選抜し、おのおの、一刀を造らせた。
かの有名な岡崎正宗や郷義弘の
名刀工も、その中にいた。
厳しい審査の結果、正宗の刀が
最良と判定されたのである。
「これにはなにか、ワケがあるにちがいない。
正宗のやつ、ワイロを使ったのかもしれぬ」
当代一の名刀鍛冶を自負していた
越中の国・松倉の義弘は、
とても釈然とはできなかった。
自分をだしぬく者を容認できない自信過剰の義弘。
「このうえは決闘を申しこみ、決着をつけよう」
と、鎌倉の正宗を訪ねた。
ちょうど、刀を鍛えている真っ最中か。
さかんにトンテンカン、トンテンカンと
すんだ音が聞こえてくる。
こっそり鍛冶場をのぞきこんだ義弘は驚いた。
清められた仕事場に、袴をつけ、
端然として槌を打っている、
こうごうしいほどの正宗の姿にであった。
なにも知らない正宗は、
はるばる遠方から訪ねてくれた義弘を、
心から歓待した。
「いままで私は、あなたを疑い、恨み、
決闘まで覚悟してきましたが、
大きな誤りでした。
あなたの鍛練ぶりを拝見させていただき、
いかにも威儀正しく、
精魂こめて刀を造っていられる。
それにくらべて私は、暑ければ肌をぬぎ、
ノドがかわけば飲むといったありさまで、
とてもあなたとは比較になりません。
技術や腕力だけでは、とうてい、
名刀はできないことを知らされました」
一部始終をうちあけた義弘は、
ぜひ弟子にしてもらいたいとたのんだ。
正宗は謙遜して断ったが、
どうしてもと義弘がたのむので、
ついに許したという。