Mooの雑記帳

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7月9日(木) サングラスに黒革ジャンの学者

2020-07-09 15:22:20 | 日記

今日の信濃毎日新聞には、異色の研究者である「ダニ先生」こと五箇公一さんが登場、持論を寄稿していらっしゃいました。(新聞記事はこちら
異色というのは、国立環境研究所、生態リスク評価・対策研究室室長という肩書きながら、サングラスに黒の革ジャン、まるでロック・ミュージシャン?と見紛う出で立ち。もちろん外見でどうこういうつもりは全くありませんが、実に興味深い人物であることは間違いない。さすがに天皇皇后の前では普通の格好でしたけどね。
もっとも、ロック・ミュージシャンがサングラスで黒の革ジャンてのは、思い込みなんでしょうか、MNEMOさん。

彼の持論は、すでに今年の4月からエネルギーのポータルサイト「ENECT」で連載されていたし、3月放送のNHK BSスペシャル「ウイルスVS人類」でゲスト出演されていましたから、ご存じの方も多いのではないでしょうか。
実は、私は全く存じ上げておらず、今日の新聞紙上での論考を読んで、にわかに興味を持ったというのが正直なところなのです。

「ENECT」で連載へのリンクは下のとおりです。
【初回】五箇公一|ダニ先生と新型ウイルス 2020年4月22日  
【第2回】五箇公一|ダニ先生と新型ウイルス 2020年4月27日  
【最終回】五箇公一|ダニ先生と新型ウイルス 2020年4月30日  

結構長いインタビュー記事ですが、彼の研究を背景に、現在の人間の立ち位置をはっきり示し、なぜコロナウイルスがこれほどはびこってきたのか、我々がこれから何をなすべきなのかについて、説得力のある発言をしています。

五箇先生のお話をかいつまんで知りたい場合はこちらの動画の方がいいのかもしれませんね。何しろ早口でしゃべりまくるけれど、大変わかりやすい。
2020年4月11日 YouTube 国立環境研究所動画チャンネル
【TVでおなじみ、ダニ博士が語る】新型コロナウイルス発生の裏にある“自然からの警告”

彼がこのお話の中で、今後私たちが何をなすべきかの筆頭にあげていたのは「生物多様性の破壊」をやめろということでした。
日本に引きつけていえば、沖縄大浦湾という生物多様性の宝庫に信じられないほどの土砂を投げ込んで埋め立ててしまおうという辺野古新基地建設は「世紀の大罪」に他ならない。

さて、信濃毎日新聞のタイトルは「エゴに傾けば人間の負け 利他的本質への回帰を」というものでした。
「2足歩行で巨大な頭を持つ、異様な形態の裸の猿としてこの地球上に誕生し」た人間は、運動能力のあらゆる面で他の動物に劣り、生態系の中で最弱動物だった。そんな人類が生き残れたのは「助け合いの精神、つまり利他的行動を進化させたから」だと、五箇さんはいいます。

人類がはじめから「お互い助け合いましょう」などとやってきたわけでないことは明らかで、過酷な環境で生き抜くためにはそうするほかなかったというのが正しい見方でしょう。しかし、その後の文明社会の歴史のなかで「知識、知恵を共有することで、文明と社会を発展させ今の繁栄を築いた。利他性こそが、人間が人間たる本質である」・・・その主張は明快です。

一方で、とさらに続きます。「原始の生物から備わる野性としての利己的本質もわれわれの中には潜んでいる」として、現代社会では「人間が野生生物との闘いから解放され、物質的経済社会にあっては一人でも生きていけるという意識が広がり、かつての利他的ヒューマニティよりも原始的利己性の方が優先される世界が広がりつつある」「さらに寿命が延びたことで『今の自分が一番大事』という人間特有のエゴにまで深化してしまった」

新型コロナウイルスは、「見事に現代人の利己的本質に適応して感染拡大の成功を収めた」。
このあとの論考は、本文で見てもらうのが一番いいでしょうね。
結論は「われわれ人間の利他性のさらなる進化がいま試されている」でした。

この小論では、どのようにしたらそれが可能かを示唆しているわけではありませんし、政治経済上の問題を提起しているわけでもありませんから、環境問題への警鐘に耳を傾けつつ、私たちの進むべき道、取るべき方法を考え抜く必要があるでしょう。
そのためにも、彼の発言は貴重な示唆をたくさん与えてくれています。

       *       *       *

ところで、このお方、富山県出身。高岡高校から京都大学に進学、大学院修了後民間の会社に就職、さらに国立環境研究所に移って現在に至るという経歴の持ち主。
富山で進学校といえば、かつて富山中部、高岡、富山の「御三家」が有名でしたが、今はどうなっているのでしょうか。
彼のようなユニークなキャラを持ったお人は、東大に行かずに京都に行くというのも含めてやっぱり高岡なんだね。富山の東側半分にはいないだろうな。ちなみに今春大学進学した孫も高岡高校でした。

テレビやネットで、環境問題、感染症問題をきっちりと発信してくれているこうした人物の存在は貴重。
富山の高校生諸君、卒業生諸君、ぜひ彼に続いて欲しい。

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