クーデンホーフ光子伝

2006-01-14 | history
                リヒャルト・クーデンホーフ・カレルギー伯爵

(木村毅著,鹿島出版会,1976年)を読む。疑いなく「パン・ヨーロッパの母」クーデンホーフ光子に関する基本文献のひとつ。光子とリヒャルト・クーデンホーフ・カレルギー伯爵のことをわが国に広めるのに力のあった鹿島守之助や鳩山一郎,池田大作等との関係も,これによりよくわかる。

すべての章が面白かったが,私にはとくにリヒャルトと妻イダ・ローランとのロマンスを扱った第13章「プラトンのたとえ話のごとく」が興味深かった。プラトンの対話編「饗宴」にあるたとえ話:人間はもともと4足4手をもって円筒形をしていた。ある日神がそれを2つに割って男と女としたため,別れ別れになってそれ以来互いに割られた半分を捜し求め,うまく見出したものがいわゆる幸福なのである。「多謝す,神よ。わが運命は,幾千万の女性の中から,その失われた半分に,とうとうめぐり合うことができたのだ」と,リヒャルトは自伝に書いている。そのめぐり合いがこの章のなかで紹介されている。女優としてのイダ・ローランについて,リヒャルトは「女優としては彼女に並ぶ者はなかった。主役を演じる彼女を見た人々のすべてにとっては,彼女は忘れることのできない存在であった。彼女はドイツ語を話す一番立派な舞台,すなわち,ウィーンのブルク劇場で世界文学の中の最も立派な役を演じる幸運に恵まれていた・・」と書いている。また,詩人リルケがイダの演技を見ていて,「彼女の素質の瑞々しさ,身振り,着想,演技の盛り上げ方は,絶えず新しく生まれ出でて,澄みきって,泉のように清らかな水を湧かし出しているようだった」と遺稿に書いている,という話も興味深かった。

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