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《読書》中川淳一郎『ウェブはバカと暇人のもの-現場からのネット敗北宣言-』光文社新書

2010-01-09 11:32:31 | 読書
●〔84〕中川淳一郎『ウェブはバカと暇人のもの-現場からのネット敗北宣言-』光文社新書 2009(2009.09.02読了)〈2009092〉

○内容紹介
著者はニュースサイトの編集者をやっている関係で、ネット漬けの日々を送っているが、とにかくネットが気持ち悪い。そこで他人を「死ね」「ゴミ」「クズ」と罵倒しまくる人も気持ち悪いし、「通報しますた」と揚げ足取りばかりする人も気持ち悪いし、アイドルの他愛もないブログが「絶賛キャーキャーコメント」で埋まるのも気持ち悪いし、ミクシィの「今日のランチはカルボナーラ」みたいなどうでもいい書き込みも気持ち悪い。うんざりだ。本書では、「頭の良い人」ではなく、「普通の人」「バカ」がインターネットをどう利用しているのか?リアルな現実を、現場の視点から描写する。
勝間和代氏、勝谷誠彦氏、禿しく同意!『AERA』『週刊現代』『週刊東洋経済』『SAPIO』『宣伝会議』『日経パソコン』でも話題沸騰!IT関係者、有名ブロガーたちも巻き込んで、ウェブ上で大論争中!
[著者紹介]
中川淳一郎[ナカガワジュンイチロウ]
1973年東京都生まれ。編集者・PRプランナー。一橋大学商学部卒業。博報堂CC局(コーポレートコミュニケーション局)で企業のPR業務を請け負う。2001年に退社し、しばらく無職となったあと雑誌のライターになり、その後「テレビブロス」編集者になる。企業のPR活動、ライター、雑誌編集などをしながら、2006年からインターネット上のニュースサイトの編集者になる。現在は編集・執筆業務の他、ネットでの情報発信に関するコンサルティング業務、プランニング業務も行っている。

 大変面白く読むことができました。
 ネット上ではいろいろ物議をかもしているということですが、私には、「なるほど」と思うところがたくさんありました。


○「集合愚」
 悲しい話だが、ネットに接する人は、ネットユーザーを完全なる 「善」と捉えないほうがいい。集合知のすぼらしさがネットの特徴として語られているが、せっせとネットに書き込みをする人々のなかには凡庸な人も多数含まれる。というか、そちらのほうが多いため、「集合愚」 のほうが私にはしっくりくるし、インターネットというツールを手に入れたことによって、人間の能力が突然変異のごとく向上し、すぼらしいアイディアを生み出すと考えるのはあまりに早計ではないか?(pp.17~18)


○「頭の良い人」「普通の人」「バカ」
 それに対し、私はネットの使い方・発信情報について、「頭の良い人」「普通の人」「バカ」に分けて考えたい。梅田氏の話は「頭の良い人」にまつわる話であり、私は本書で「普通の人」「バカ」にまつわる話をする。(p.19)
*梅田氏…梅田望夫『ウェブ進化論-本当の大変化はこれから始まる-』ちくま新書(2006)等を参照。


○「最強メディアは地上波テレビ」
 最近、「テレビは終わった」と言われる。
 ネットでは、「テレビなんてもう見ていない」「私のまわりでテレビを見ている人はいない」などと書く人も多い。(中略)
 だが、少なくとも日本の場合、結局はこれが真実だ。
 ・最強メディアは地上波テレビ。彼らが最強である時代はしばらく続く視聴率を見れば一目瞭然だ。(p.120)


○大リーグ
 ここ数年、「日本のプロ野球はつまらない。オレは大リーグばかり見ているよ」という意見が出るようになってきたが、それに対し、「本当に大リーグがおもしろいと言えるの? 日本人選手が所属していないミネソタ・ツインズVS.トロント・ブルージェイズの試合を3時間見続けて、『ああ、おもしろかった。いやぁ~本場のプレイはやっぱすげーな』と言えるか? 本当は『日本人選手がどれだけ活躍したか』の結果映像だけを見たいんじゃないの?」 と思う。(pp.152~153)


○年功序列・終身雇用
 私はひねくれた人間であると自分でも認識しているが、それの大きなきっかけとなったのが、1992年、バブル崩壊直後の予備校通学時代に小論文講師から言われたひと言だ。彼は、「日本が年功序列・終身雇用というのはウソだ。日本にはもともと年功序列・終身雇用なんてものはなかった」と言ったのである。彼の真意としては、「日本の会社の特徴とされる年功序列・終身雇用は、あくまでも大企業のためだけのものである。こうやって国立大学へ行こうとしている君たちのお父さんは大企業の人が多く、終身雇用が約束されているだろうし、日本の企業が終身雇用だと報じるマスコミも大企業だ。でも、日本の企業の99.7%は中小企業であり、そこでは年功序列・終身雇用などはもともと存在しない。『日本企業の特徴』について語るときに年功序列・終身雇用は耳通りが良いのでよく使われるだけ」ということであった。
 これに全面的に同意するわけではないが、「通説は必ずしも正しくない」ということだけは、彼のこの発言から汲み取ることができた。(pp.221~222)


○電話
 なんだかんだ言っても、真の「情報革命」の担い手は、アレクサンダー・グラハム・ベルが誕生させた電話(1876年)である。ネットは情報革命の主役ではない。あくまでも電話を頂点とする情報革命の第二段階以後の担い手でしかない。
 「遠くの人としゃべれる」という電話の機能はあまりにも画期的である。電話のない時代は、家族が死んでも伝える手段は電報しかなかった。電報であれば、家にいなくては受け取れず、不確実であり、即時性もない。電報以前は実際に行くしかなかった。「伝える」「答える」「合意する」 ことにかかるコストがあまりにも高かったのである。
 電話はこれを一気に解決したのだ。もはや代替機能はないと言ってもいい。
 一方、ネットで可能なことは、だいたい別のもので代替できる。(pp.236~237)