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《読書》唐沢俊一『博覧強記の仕事術』アスペクト(その2)

2010-01-03 20:09:48 | 読書
●〔81〕唐沢俊一『博覧強記の仕事術-効率的なインプット&魅力的なアウトプット指南-』アスペクト 2009(2009.08.25読了)〈2009089〉

(承前)

○溜め込むときよりも始末するとき
 ぴりりと皮肉の利いたエッセイ『茶話』を残した詩人の薄田泣菫によると、
「本は買えばその人を賢くする。しかし、本を売るということはもつとその人を賢くする」
 ということである。つまり、情報というものは、溜め込むときよりも始末するときの方が頭を使う、ということなのである。(pp.102~103)
 なるほど。


○巨大なゴミ置き場
 先に、国会図書館や大宅文庫における“整理”の話をした。大事な話なのでもう一度、繰り返そう。それらは日本有数の知の殿堂と言えるが、単に蔵書数が多いから素晴らしいのではない。あれだけの情報が整理されすぐに取り出せるところが素晴らしいのだ。そうでなくてはただの巨大なゴミ置き場でしかない。これをお読みの方にも、そんな書庫をお持ちの方がいらっしゃるのではないだろうか。(p.110)
 ドキッ(笑)。


○日記の効用
 私に言わせれば、その日記をつけているおかげで、一日前の仕事の状況が整理でき、それによって今日一日の予定を立てることが出来るのだ(私は朝に日記をつけるので)。
 私たち作家にとって、何が商品かというと、つまりは「発想」である。発想であり、視点であり、もっと言えば感想にすぎないものであっても、すべてを記銀しておく。それが日常コラムとか気軽な読み物を注文されたときに生きてくるのだ。すごい深い考察や分析をしてもニーズに合わない。だから、私のWeb日記はとにかくすべてを記録しておこうと思っている。(中略)
 詳細な日記をつけていた人として、イラストレーターの真鍋博さんや映画監督の実相寺昭雄さんらがおられるが、彼らの日記を読ませていただくと、本当に「記録魔」ともいうべき、詳細なメモがなされている。真鍋氏の日記にはインスタントラーメンを食べ始めた時刻と食べ終えた時刻が記載されていたし、実相寺監督は庭に猫が何時何分に入ってきて、何時何分に出て行ったかまでが記されていた。
 友人の岡田斗司夫は「自分の周りに祐筆を置きたい。今思いついたことで一瞬後には忘れてしまうことをすべて記録させておきたい」と言ったことがあったが、彼にせよ実相寺さんや真鍋さんにせよ、自分自身の発想が商売の人間にとって、泡のように浮かんでは消えていく発想自体をどうすくいあげるか。また、それをどう変形させて商品にするか。そのため、日記をつけることによって発想を蓄積し、発酵させていったのではないかと思う。本人がそれを意図してやっていたのかどうかはともかくとして、結果的にはそうなっていたことは間違いない。
 どんな天才であっても、生まれたまま何も学ばず、何の経験もしないままそこにただいるだけでは、発想というものは生まれない。そのためには、日記というのは大変役に立つ 「ツール」であり、「ノウハウ」でもあると言えよう。(pp.119~120)
 ここでも日記の魔力が。


○竜馬
 例えば、司馬遼太郎が『竜馬がゆく』で坂本竜馬を日本の代表的青春像として描くまでは、坂本竜馬は幕末史の中で地味な存在であった。そもそも、維新の風雲の途中で竜馬は暗殺され、その後も続く闘争の中で、その記憶は薄れていった。明治時代になって、竜馬の弟子であった外務大臣・陸奥宗光が竜馬の復権運動を行い、何とか維新史にその名が残った人物でしかなかった。
 司馬遼太郎は、竜馬に関する資料の少ないところに目をつけ、彼のキャラクター造形を自由に行い、幕末回転のフィクサーとしての役割を彼に与えた。実際は西郷や勝海舟などといった大物の使い走り程度の身分だった竜馬を、維新史のシナリオを裏で書いた人物、として再構築したわけだ。(pp.158~159)
 今年の大河ドラマは「龍馬伝」ですが……。


○[付録]唐沢俊一が薦める、常備したい本三〇冊
『知的生活の方法』 (渡部昇一 講談社現代新書)
ベストセラーになったがゆえに刊行当時はいろいろ悪口も書かれたが、今読み返してみると、本を読んで知識を蓄えることを中心にするにはどういう生活スタイルをとったらいいのか、を具体的に描いた、極めて実用的な本。今読んでも古びていないのがさすが。(p.192)
 禿同。


*画像は国立国会図書館