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《読書》許光俊・鈴木淳史・梅田浩一(編著)『クラシック反入門』青弓社

2009-12-13 05:08:29 | 読書
●〔72〕許光俊・鈴木淳史・梅田浩一(編著)『クラシック反入門』青弓社 2009(2009.08.04読了)〈2009042〉

○内容紹介
クラシックは艱難辛苦の果てにしか理解できないのだ!甘口の入門書では神髄は理解できない!時空を超えた価値があるクラシックを本当に自分のものとしてわかるためには最低限の知識を身につけろ!最良の入門書は「反入門」としてしか書けないのだ!教科書を踏み越えた先、道なき道の先に待つキモを気鋭たちが教える。

 厠上の書。
 コンセプトは以下の通り。中身は、いつもの許光俊・鈴木淳史でした。

○「暗死苦」
 このところ、「クラシックはこんなに簡単ですよ!」というお手頃な入門書が増えている。
 いいかげんなことを言うな!(ヨハン・セバスティアン)バッハや(ルートヴィヒ・ヴァン・)ベートーヴェンみたいな天才が一生かけて築き上げた芸術が、数日、数時間でわかってためるものか! そもそも、お手軽で無責任な入門書を書いているあんたは、数時間でクラシックがわかっちゃったほどの天才なのか?!
 いや、実はそうした本を書いている人たちも、本当はよーく知っているのに違いないのだ。クラシックがそんなに簡単にわかるようになる代物でないことを。(中略)
 では、なぜ、「クラシックはこんなに簡単なんだよ!」と親切ぶる入門書が山積するようになったのか。
 あの漫画のせいである。日本中で予想外の大人気となったあのクラシック漫画のせいである。あの漫画からあらゆる人の予想を超えて売れ続けたため、クラシック業界に関係している人たちはこう考えたのだ。「しめた! これを利用してクラシックを盛り上げよう、クラシック好きな人間を増やそう! CDを売ろう、チケットを売ろう!」
 愚か者めが! なんと卑しい根性だろう。このような言い方は最近あまりよしとされないだろうが、あえて言おう。乞食根性っていうんだよ、そういうのを! みんな、お金が欲しいのだ。クラシック音楽界はお金が欲しいのだ。演奏かも、評論かも、会社も、劇場も。(中略)
 考えてみるがいい。いったい、世の中に『あなたも必ず登れるエヴェレスト』『三日で大丈夫! アイガー北壁入門』、そんな本がありますか? 『一週間で倒せるヒクソン・グレシー』(もう古い)、『誰でも百メートル十秒を切れる本』、そんなのを見たことありますか? あるわけがない。至上の喜びを味わうには、しばしば艱難辛苦がつきまとうものなのである。その艱難辛苦も喜びのうちなのである。しかも、艱難辛苦の末に、目標に到達できないことだって多いのだ。そこがまた面白いし、やりがいなわけなのだけれど。(中略)
 知識を得たからといって、わかるようになるとは限らない。が、知識が理解を助ける可能性は少なからず、ある。ならば、最低限、知識をつけたまえ。学びたまえ。それがまともな筋道というものである。謙虚に勉強しようという気持ちはあったほうがいい。そして、豊臣秀吉に倣って、「自分は日本一のクラシック初心者になる!」と思えばいい。思いがけず、上に進む道が開けるかもしれない。
 そんな気概をもつあなたのための本が、これなのだ。(許光俊「最初に クラシックは「暗死苦」だ!」pp.9~10)
 ひょっとしたら、落語についても通じるかも。