●〔33〕柳家小満ん『わが師、桂文楽』平凡社 1996 (2005.05.13読了)
桂文楽の細々とした私生活が描かれており、興味深く読むことができました。特に食事については微に入り細をうがって記述してありました。あと、文楽は毎朝、浣腸をしていたそうです。
柳家小満んの落語は聞いたことがありませんが(あるいは聞いたことはあるが憶えていませんが)、一度は聞いてみたいものです。
(小満んが文楽のハンカチを湯殿で洗った後に)
ところが、そのすぐあとに湯殿へ入った師匠に呼ばれ、
「お前だね、今日のハンカチは……」
「お前さんの料簡が出てますよ」
と云われたのだが、それは張り方の上手下手ではなく、
「このくらいなら、まあいいだろう」
と思った自分の心を見抜かれたように感じて、すっかり震えあがってしまったのである。
それから内弟子生活では、つねにこの時の言葉が耳から離れず、何事にも情けないこと一通りではなかった。
「お前さんの料簡が出てますよ」
今でも、突然聞こえてくる師匠の言葉である。(pp.48-49)
後年、師匠から小言の極意を伺ったことがある。
「小言ってものはね、いちいち云ってたんではダメ。小言の種をためというてから、一番小さなことで、短く、大きく叱るんです。するとね、この人にはこんなとこまで見抜かれていたのかと思ってね……。これもみんな五代目の師匠の教えですよ」
(中略)
ここで「五代目の師匠」というのは、師匠・文楽が“人生の師”と仰いでいた柳亭左楽師匠で(後略)(p.49)