四季の山を歩き、思い、創造する。
凌 手記
冬の小さな比良を凌ぐ - ある日の遠征シノギング - 【前編】
今回はいつもの高尾から少し(?)離れて、滋賀県は比良山系エリアへ遠征シノギング。
濃緑の車両を横目に(各駅だったので乗れず)、一路最寄りの駅へ。
最寄りの駅からは徒歩でアプローチ。実に長閑なところである。
失敬。。
林道から山へ分け入ると、害獣対策のフェンスが張り巡らされている。林業用の道のようなものはついているが、枯れ枝等で非常に歩きづらく、近く、人が入った形跡は見受けられない。
するとフェンスを通り抜けるための扉へ行きつく。ロックを解除し、扉を動かそうも???
び、びくともしない。下に目をやると、土や枯れ枝が邪魔をしているようだ。そこで秘密兵器の登場。
この秘密兵器の有用性に興奮気味でブレブレだが、こうして自然界と人間界のハイブリッドな難所を凌ぐ事が出来た。いざ入凌。
暫く進むと堰堤が姿を現す。反対側へ行くのに堰堤の上を渡ろうと思ったが、遠回りして良かった。。
小さな沢を渡ると、急登の尾根に取り付く。早速シノギングらしくなってきた。自らを鼓舞しながら黙々と登る。
ある程度登り、なだらかな尾根に出ると、ちらほらと雪が目立ち始める。車窓から見た感じではあまり雪は期待出来そうにないが...果たして如何に。
目星をつけていた広いエリアにでる。みるみる雪が増えてきた。このエリア、非常に特徴が少なく、地形と方角を確認しながら進む。ノートレースの雪道と相まって非常に難儀した。
主尾根に出るため、手前の小さな峠を目指すも、”ここがその峠だよ”詐欺が頻発。現在地を見失う。来た道を振り返りながら、確実な情報とコンパスを頼りに進む。
ようやく主尾根へと延びる谷に行きつき、地形図上に回帰する。結局目指した峠の詳細は分からなかったが、峠、谷、尾根、頂、登り、下り、人工物等、そこに存在する情報と地形図とコンパスを照らし合わせる事で道を導き出す事が出来る。現在地を見失っても、その場を仮定し、微かでも確かな情報を元に、経験と知識を以て、現在地を導き出す事もできる。コンパスと地図読みの基本、大切さを再確認する。
そんな事を思い更けっていたの絵。
主尾根への道がわかり、気持ちは軽やかになるも、みるみる雪は増えてき、足取りは重やか...ズコ
尾根に合流する。これでしばらく尾根をタドルのみだが、ここまでで思いのほか時間をロスしてしまった。なおかつ雪の多さに足を取られ、更に遅れをとる。
開けた鉄塔(450m)付近で一休み。この時点で当初の心配とは裏腹に、場所によっては膝上あたりまでのツボ足。恐るべし比良山系。
実は先ほどのルートロスの際に、この鉄塔送電線がとても良い目印となった。しっかり地形図にも載っている。わかりやすく確実な情報の一つだ。
予定では尾根をタドリ、比良の主稜線に出て更に先を目指すはずであったが、予定を変更し、この尾根上の平らな場所に目星を付け、そこで夜を越す事に。そうと決まればひたすらシノラッセルあるのみ!
ノートレースの道はとても清々しく、気持ちが良いのだが...
それ即ちシノラッセル地獄への誘いでもある。
我々はワカンという利器を持ち合わせてはいたが、時折痩せた箇所もあり、何より倒木が目立ち、荒れ放題であったため、シノラッセルに身を投じる。靭帯を傷めつけながらひた進む。
目星を付けたエリアに到着。暫く辺りを探し回り、適当な場所を見つけ出す。よしっ、今宵はここで凌ぐとしよう。
すかさずヨヒヤミ、メグルキセツニを身に纏い、汗冷え防寒に備える。
まずは辺りを整地しつつ、土間や雪の棚を作り間取りを決めていく。ウキグモの沈みを考慮し、その下もある程度掘り下げ、ちょっとした雪の壁を作った上で、ウキグモ、タープを張っていく。。そうして憩いの寝床が完成。
張り巡らせた細引きや枝を駆使し、整理整頓、干せるものを干す。
流れで雪上の焚火を果たすため、薪集めまで済ます。
更にアグラスカート、ウンカイを纏えば準備万端。試しに横になる。静寂が辺りを包む。
晩飯までまだ時間はあるが、やる事もなし、雪上の炎へのはやる気持ちを抑えきれず、ウッドストーブに火を灯す。
使えそうな乾いた枯れ枝木を厳選し、延いては小道具を駆使し、着火に成功。温かい。。
こちらも成功。薪を乾かしつつ、お湯割り用のお湯を量産中。
以後、この炎を切らさぬ様、せっせと薪をくべながら時間を過ごす。薪が爆ぜる音や、遠く町から聞こえてくるアナウンスに、耳を傾けながら。
頃合いを見て、晩飯作りを始める。お互い良い薪を集められていた様で、幸い火種に困る事はなく、飯作りにも余裕が生まれる。
晩飯が整う頃には、辺りが闇に包まれる。すかさず凌提灯を灯す。ほっとした所で、”いただきます”
食事を終えると、後片付けをしつつ、そのまま晩酌時間へ突入。お湯割りが身に染みる。
見渡すと100ドルくらいの夜景がちらほら。私はこれくらいの方が生活感あって好きだ。※実際はもう少し夜景感有
ポツリポツリと話をしながら、贅沢な時間を過ごす。
焚火も落ち着いてきた頃に、今日の疲れが一気に押し寄せる。心地よい倦怠感。
試しにウキグモとウンカイに身を委ねると、うとうとと意識が遠のき、やがて深い眠りへつく。
さて、明日はどんな凌ぎと相成るか...
後編へ続く。
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